「『気になる子』を気にしすぎる子ども」
「友だちを傷つける子ども」「愛着に課題がある子ども」「険悪な関係の子ども」
「何らかの配慮が必要な子ども」
など・・・どのクラスにもこのような子どもたちはいると思われます。
しかし、この子どもたちに教師がケアをせずにいると
次第にクラスは荒れ、いじめが起きやすくなり、
学級崩壊へとつながるかも知れません。
そのような子どもたちも含め、クラス全員が安心して学べる場をつくる。
これが
「人的環境のユニバーサルデザイン」です。
本書では、子どもたちの心理や置かれた環境から行動の原因をさぐり、
さまざまな事例を踏まえ、具体的な手立てを解説します。
執筆陣は、ユニバーサルデザイン・学級経営・特別支援教育の日本を代表するエキスパート
阿部利彦(星槎大学大学院教育実践研究科教授)
赤坂真二(上越教育大学教職大学院教授)川上康則(東京都立矢口特別支援学校主任教諭)松久眞実(桃山学院教育大学教育学部教授)●著者について
阿部利彦(あべ・としひこ)
星槎大学大学院教育実践研究科教授。
早稲田大学人間科学部卒業、東京国際大学大学院社会学研究科修了。専門は教育相談、学校コンサルテーション。東京障害者職業センター生活支援パートナー(現・ジョブコーチ)、東京都足立区教育研究所教育相談員、埼玉県所沢市教育委員会健やか輝き支援室支援委員などを経て、現職。星槎大学附属発達支援臨床センター長、日本授業UD学会理事、日本授業UD学会湘南支部顧問などを務める。
赤坂真二(あかさか・しんじ)
上越教育大学教職大学院教授。
新潟大学教育学部卒業、上越教育大学大学院修士課程修了。学校心理士。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進める。2008年度から、即戦力となる若手教師の育成、主に小中学校現職教師の再教育にかかわりながら、講演や執筆を行う。
川上康則(かわかみ・やすのり)
東京都立矢口特別支援学校主任教諭。
立教大学卒業、筑波大学大学院修了。公認心理師、臨床発達心理士、特別支援教育士スーパーバイザー。NHK「ストレッチマン・ゴールド」番組委員。障害のある子どもの指導に長年関わる一方で、保育園・幼稚園、小・中・高校などでの講演活動、ちょっと気になる子についての相談などにも携わっている。
松久眞実(まつひさ・まなみ)
桃山学院教育大学教育学部教授。
大阪教育大学大学院修了、教育学修士。公認心理師、特別支援教育士スーパーバイザー、学校心理士、臨床発達心理士。堺市立特別支援学校で教師生活をスタートし、市内小学校で主に通常の学級担任として勤務。堺市教育委員会指導主事、プール学院大学教育学部准教授などを経て現職。
●本書の構成【総 論】人的環境のユニバーサルデザインとは? (阿部利彦)
【第1章】 きっかけをつかむ (阿部利彦)
【第2章】 背景を知る(川上康則)
【第3章】 秩序のあるクラスをつくる(松久眞実)
【第4章】 居心地のよいクラスをつくる(赤坂真二)
【総論】人的環境のユニバーサルデザインとは? 阿部利彦 7
1 教育のユニバーサルデザイン 8
2 教育のユニバーサルデザインにおける三つの構成要素 10
3 安心して学ぶことができる場を 12
4 わからないこと、できないことに正直になれる場を 13
5 間違いから学ぶことのできる場を 15
6 共感のつぶやきを大事に 17
7 援助を求めることのできる場を 19
8 集団肯定感のある場を 21
【第1章】 きっかけをつかむ 阿部利彦 23
1 クラスで気になる子を「気にし過ぎる子」の存在 24
2 気にし過ぎる子は、なぜ気になる子に近づくのか 26
3 気になる子は、なぜ気にし過ぎる子に近づくのか 27
4 気になる子を気にし過ぎる子どもたちの背景 29
5「気にし過ぎる子」たちへのタイプ別対応 32
①問題行動を真似する子(模倣犯タイプ)
②わざと刺激する子(天敵タイプ)
③影でコントロールする子(“影”の司令塔タイプ)
6 気にし過ぎる子たちの共通点とは 44
7 気にし過ぎる子と向き合う人的環境のユニバーサルデザイン化に向けて 46
【第2章】 背景を知る 川上康則 51
1 昨今の学校や子どもたちを取り巻く背景 52
①集中して聞き続けることが難しくなってきている
②社会の変化が招いた「対人関係の希薄さ」
③トラブルから学ばせる」ことに対する親の理解の変化
④いじめや排除につながりやすい心理的な側面
⑤いじめを深刻化させる「四層構造」
⑥いじめや学級の荒れは、簡単には減らせない
⑦職員室内のハラスメントやいじめの撲滅から
2「人的環境のUD」の最優先課題は、「教師のあり方」 71
①よい教師は、子どもと共に笑う
②教師本位のルール・ライン・基準を問い直す
③教室に不用意に吹かせている「風」を自覚する
④教師は「感情労働」という認識に立つ
⑤子どもの心に傷を残す〝毒語〟を使わない
⑥安全基地(Secure Base)としての役割を果たす
⑦言葉かけよりも、フィジカルサインを用いる
⑧相手への敬意(リスペクト)を示す
3 授業の腕を磨く 85
①身銭を切って、学び続ける
②子どもたちを惹きつける要素を授業に取り入れる
③聞き続けることの難しさを前提とした一斉指示・全体説明を心がける
④指導スキルを整理し、関わりの中で学ばせる
⑤ファシリテーションの具体的な方法を活用する ①「ペア活動」
⑥ファシリテーションの具体的な方法を活用する ②「ギャラリーウォーク」
4 子どもたちをつなぎ、学級全体を育てる 99
①目標に向かう行動を価値づけする
②学級目標のさらなる活用を考える 学級経営のための五つのステップ
【第3章】 秩序のあるクラスをつくる 松久眞実 109
1 なぜ、崩れているクラスの担任に? 110
2 気持ちを立て直して 113
3 人的環境とは 114
4 4月からの7つの取り組み 119
取組1 静寂の時間の投入
取組2 視覚支援
取組3 言葉を減らす・しゃべり方の工夫
取組4 トークンシステム
取組5 叱る基準の明確化
取組6 褒め続ける
取組7 アイビリーブ
5 崩れ始める6年生 133
6 覚悟を決める 134
7 さいごに 妬みの感情へのアプローチ 139
【第4章】 居心地のよいクラスをつくる 赤坂真二 143
1 教育のユニバーサルデザインと授業のユニバーサルデザイン 144
2 教育のユニバーサルデザインを成り立たせる条件 148
3 人的環境のユニバーサルデザインのイメージ 150
4 具体例で学ぶ人的環境のユニバーサルデザイン化 154
①入学後の不安定感から混乱が見られたクラス
②人を傷つける言動が多く見られたクラス
③「険悪な関係」の子どもたちがいるクラス
執筆者紹介 174