校則今、なぜ校則が問題なのか?

「校則問題はもう遠い昔の話なのでは? 今の子どもたちはのびのびと過ごしているのでは?実は…

背景を変えながら、理不尽なブラック校則は現代の子どもたちを苦しめ続けている

校則今、なぜ校則が問題なのか?

「校則問題はもう遠い昔の話なのでは? 今の子どもたちはのびのびと過ごしているのでは?実は…

背景を変えながら、理不尽なブラック校則は現代の子どもたちを苦しめ続けている

誰も知らなかった「ブラック校則」の現状

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荻上チキ(おぎうえ・ちき)

評論家

「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」スーパーバイザー。著書に『日本の問題』(ダイヤモンド社)、『ネットいじめ』『いじめを生む教室』(以上、PHP新書)ほか多数。共著に『いじめの直し方』(朝日新聞出版)、『夜の経済学』(扶桑社)ほか多数。TBSラジオ「荻上チキ Session-22」メインパーソナリティ。

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内田 良(うちだ・りょう)

名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授

専門は教育社会学。スポーツ事故、教員の部活動負担や長時間労働などの「学校リスク」について広く情報発信している。ヤフーオーサーアワード2015受賞。著書に『ブラック部活動』(東洋館出版社)、編著に『教師のブラック残業』(学陽書房)ほか多数。

01. 繰り返される「ブラック校則」問題

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2017年、大阪の女子高校生が生まれつきの髪色を黒く染めるよう強要され、不登校になったことから裁判を起こしました。その報道に触れたことが、僕が校則問題に取り組み、「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」に参加したきっかけでした。

そもそも僕自身、学校で多くの理不尽な経験をしてきました。そんな思いをする子を減らしたい、できるだけ安全安心な教室環境をつくりたい。そういう観点から、これまでも教育について幅広く問題提起してきました。

『ブラック校則』という本では、第2章で具体的な理不尽な校則の事例を多く取り上げましたが、プロジェクトに寄せられた多数の例の中でも、2010年以降の新しいものに絞っています。ブラック校則は「昔はあったかもしれないけど」ではなく、現在もれっきとして存在する問題なのです。

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近年、校則に関するアカデミックな議論は多くありません。かつて、80年代頃に管理教育に対する批判が論じられた時期はありましたが、それ以後、教育学で取り上げられることは少ないようです。

そこには、管理教育、とくに校則の問題がいわゆる「マスコミネタ」と見なされ、あまり研究対象として扱われてこなかったという事情があるように感じます。
だから、「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」独自の調査結果や、マイノリティや貧困に校則が及ぼす問題といった、差別や格差の問題に具体的に踏み込めたことは大きな意義があります。

02. 密かに校則の「ソフトな管理主義化」が進展していた

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調査を行う前は、子どもの権利、セクシュアルマイノリティや発達障害、貧困家庭の問題など、子どもたちを取り巻く状況への配慮が進み、「問題のある校則や指導は存在するが、全体としては緩やかに改善している」という仮説を立てていました。

しかし、実際の結果は驚くべきものでした。実は、毛髪や下着の色の指定などの細かな規制による管理が以前より強化されていたのです。私は「ソフトな管理主義化」と呼んでいるのですが、細かな服装や所作まで画一化させるような指導が増加する傾向が見られました。

これには正直、ショックを受けました。もちろん、以前より全面的に悪化しているわけではないのですが、人権意識の高まりの裏でこのような後退があろうとは。

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「ソフトな管理主義化」の強化を示せたのは、この調査の大きな成果です。率直に言って、本来研究者がこういった調査・分析を行い、指摘すべきでした。研究者の1人としては、悔しい面もあります。教育学が校則の現実を捉えられていなかったということですから。

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私自身、漠然と「以前よりも校則はよくなっているだろう」と思っていましたが、同様に多くの方が、その実際や全体像を把握できないまま、印象論や個別の経験だけで議論をしていたように思います

03. 各種調査から見えてきた「ブラック校則」の現実

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大阪の女子高生の裁判を受け、大阪府が調査を行ったところ、府立高校の9割がなんらかの頭髪指導を行っていることがわかりました。

メディアも、朝日新聞が東京都内 、産経新聞が近畿圏の二府四県で指導状況を調査したところ、東京の都立高校(全日制)では6割、近畿圏の7割で「地毛証明書」を求める頭髪指導を行っていたのです。この数字のインパクトは大きく、私もこれをみて掘り下げようと思いました。

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改めて、きっかけは一人の当事者と、そこからつながった調査だったのですね。実際のところ、不審者対策や学校事故の教訓から、学校を安全にしていく動きは確かにありますし、特別支援教育をはじめ、個別の配慮も進んでいます。

その一方で、心身へのダメージを顧みない、あきらかにおかしな校則が多く広がっていた。管理主義が過去のものだったどころか、ある面で悪化していた背景や理由は、この調査にとどまらず、今後明らかにしていく必要があります。

04. 変わらなかった「個性の禁止」

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1980年代の管理主義批判の影響から、文部省(当時)は1991年に「校則見直し状況等の調査結果について」という通知を出しました。その結果、服装を見直した学校が6割、頭髪を見直した学校が3割、と大きな変化がありました。

注目したいのは、その変化の仕方です。当時「男子は丸刈り、女子はおかっぱのみ」の校則はおかしい、という考えは共有され、それ以外の髪型がOKになりました。しかしその変化は、「丸刈りだけ許す」から、「耳にかかるまで、襟足にかかるまでOK」に移行したにすぎませんでした。
つまり緩和したものの、細かな規制のルートは残されたのです。

現在でも、触角(両サイドの髪を顔に沿わせた髪型)やポニーテール、ツーブロック禁止などの校則もあります。
今回の調査の例として、ある学校では編み込み禁止、逆にある学校では「結ぶときは編み込むように」と割れているのです。
その背景を見ると「編みこみは中学生らしくない」「編み込みこそが中学生らしい」と両方の考えがあるんですね。もう、その学校間で勝手に議論して欲しい(笑)。

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1つの形を指定してそれ以外を許さないやり方から、基準をつくって厳しく指導する形に規制の仕方が変わったという視点は重要です。緩和自体はあったと言えますが、子どもたちの個性を抑制することは変わらなかったというわけですね。

05. 学校でのおしゃれは罪なのか?

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例えば、かつて茶髪はツッパリやヤンキーの象徴でしたから、その指導は「非行防止」として一定の合理性があったのかもしれません。しかし90年代以降、茶髪=ヤンキーの図式はもう薄れています。茶髪は「ファッション」になったわけです。

それでも学校での取り締まりは続きます。なので、指導のロジックが「非行防止」から「おしゃれ禁止」に変わります。「おしゃれができない子もいるんだよ」「おしゃれが原因で友だち同士トラブルになるよ」といった、公平原則を口実とした制限です。

でも、それは指導の根拠にはなりません。おしゃれをする、個性を発揮すること自体がトラブルの原因ではないのですから。火種となることはあっても、もしトラブルになりそう/なったときに介入するために教師が存在するわけです。おしゃれは罪ではない。ただ個別対応にリソースを割けないから、子どもの個性の発揮を理不尽に制限する形で「予防」しているのです。

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理不尽に制限することで、学校の日常をやりくりしやすくする。その意味では、指導に合理性がないわけではない。でもそれが、人権の目から見て正しいのか、個を尊重できているのか、という検討が必要です。

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服装でいうと、大学デビューなんかそうですよね。入学後何を着ていいかわからず、私服ダサい問題が起こってしまう。これは笑い事ではなく、私自身こういった自分の個性の発揮の仕方を、もっと早い段階から学んでおきたかったという思いがあるんです。

ブラック校則関連の主な流れ

2017
10月
髪染めを強要され不登校になった大阪府の高校3年生が、大阪府を提訴 
11月
大阪府の高校生の訴えから、大阪府は府立高校にアンケートを実施。地毛登録を行っている学校が6割にのぼることがわかった 
12月
「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」が始まり、数万人の署名と、全国的な大規模調査を実施開始 
2018
2月
銀座にある中央区立の小学校が総額9万になるアルマーニデザインの標準服を導入、批判を集める 
  
千葉県柏市の柏の市立中学校が、トランスジェンダーや防寒・経済面での多様性に配慮した男女それぞれ選べる制服の導入を公表 
3月
「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」が記者会見。6人に1人が中学で「下着の色」を決められていた、以前よりも細かな管理が強まっていた等の衝撃的な調査結果を公表 
  
下着の色を指定するブラック校則の現状が国会で話題になり、林文科相が答弁を行う 
5月
「汗をかくから」という理由で、体操服の下に肌着着用を禁止する小学校の校則が社会問題に 
6月
大阪地震、生徒のスマホを没収する教師が続出 「命より校則」に疑問相次ぐ 

さらなる詳細については、「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」のウェブサイトを参照のこと 

ブラック校則 想定問答

 昔の方が校則は厳しかった。今の学校は昔より自由なはず

「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」が行った調査によると、以前よりも髪型・服装等に関する細かな管理は強化されています。なかには、下着の色の指定など、昔はあまりみられなかった校則の広がりも。

 日本人なら黒髪でしょ? 学校で揃えることが望ましい

同調査によると、生まれながら茶や金髪の子どもも多く、またハーフやクォーター、在日外国人の子どもも学校には多く通っています。本当に「日本人なら黒髪」なのでしょうか。

 校則は学校のルール。嫌なら学校を辞めればいい!

事前に学校のルールとして、生徒達や保護者に伝えられていたのでしょうか。入学後に押しつけられてはいないでしょうか。

 ルールはルール。決まったことには従うべき!

ルールとは不変・絶対のものではありません。文部科学大臣も「校則は生徒が主体となってその都度見直されること」と答弁をしており(2018年3月)、生徒達の声で変えていくことができるものなのです。

 社会に出たら理不尽が待っている。校則が理不尽でも耐えて慣れるべし

社会が理不尽なら、理不尽な状況を変えていく人材を育てていく方が生産的です。「理不尽に耐えろ、慣れろ」ということは、耐えられない人を排除し、理不尽を再生産してしまう不毛なプロセスに荷担することになってしまいます。

 成績上位校はともかく、荒れている学校は厳しく指導しないと改善しない!

同調査の結果では、成績と指導の厳しさに相関関係はなく、「校則で厳しく取り締まれば、その生徒の成績が上がる」という主張に根拠はないと結論づけています。

 学校は勉強をするところ。おしゃれをする場ではない!

授業を阻害したり、他人に危害を加えるような場合に一定の制限を設けることは必要です。ですが、学習に関係のない服装や髪型を取り締まる必要性はなく、一般社会の通念上も他人の服装を制限することは不適切です。文化や服飾を学ぶのも子どもの権利です。

 生徒が華美な服装で痴漢にあうかも。厳しく取り締まったほうが子どものため!

服装が華美だと痴漢に遭うというのは、典型的な誤解です。性犯罪は多くの場合、性欲のみならず支配欲等が要因とされ、「歯向かわなさそうな人」の方がねらわれるケースもあります。本当に痴漢対策を考えるなら、制服をやめるほうがよほど合理的。

その指導に合理的な理由はあるのか?
どのようにブラック校則を変えていけるのか?

その疑問や解決策を探るべく、緊急発売決定!!

不条理な校則という呪縛が、社会の未来の足かせとなる。

ブラック校則 理不尽な苦しみの現実 荻上チキ・内田良

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SYNODOS

どのように「ブラック校則」をなくせるか――ジャーナリズム×アカデミズムの可能性
荻上チキ×内田良
 2018/9/21 

Buzz Feed

「校則一揆」のススメ。くるぶしソックス禁止のルールに高校生が物申す 2018/8/29 

「ブラック校則」が子どもを殺す。学校で悲劇を繰り返さないために 2018/8/28 

東洋経済 ONLINE

下着の色を問う「理不尽校則」が跋扈するワケ  保護者意見の忖度か、合理的な理由はあるか 2018/8/27 

弁護士ドットコム NEWS

下着は白のみ、日焼け止めは禁止…学校で増える「ソフトな管理主義」とリスクを見ない矛盾 2018/8/12 

PRESIDENT Online

「下着は白」セクハラ校則指導の理不尽さ  なぜ"ブラック校則"が存在するのか 2018/8/8 

酷暑でも"屋外学習"を強行する学校の論理 2018/7/21 

はじめに
第1部 調査から見えるブラック校則の現在
第1章
データで見るブラック校則 荻上チキ(評論家・Session-22パーソナリティ) ・岡田有真(東京大学大学院)
第2章
ブラック校則の具体事例 荻上チキ
第2部 子どもたちの理不尽な苦しみ
第3章
子どもの安全と健康が脅かされる 内田良(名古屋大学)
第4章
司法から見る校則 真下麻里子(弁護士)
第5章
校則が及ぼす経済的な負担 渡辺由美子(NPO法人 キッズドア 理事長)
第6章
当事者研究からみた学校の生きづらさ 綾屋紗月(東京大学)
第7章
校則に内在する性規範 増原裕子(LGBTアクティビスト)
第3部 ブラック校則をなくすには
第8章
制服の「あたりまえ」を問いなおす 内田康弘(愛知教育大学)
第9章
命を追いつめる校則 大貫隆志(指導死 親の会 共同代表)
第10章
教師が見る校則の功罪 原田法人(元小・中学校校長)
第11章
保護者から見る校則 大塚玲子(ライター)
第12章
学校だけが悪者なのか? 内田 良
対談
ブラック校則から「ホワイト校則」へ 荻上チキ × 内田 良
ブラック校則 想定問答
おわりに