創造力を高める学びの場 vol.4 山内佑輔

未来に必要な力

「自分の理由」“自由”を、先生と子ども、双方が授業にうむためのステップ。
第1ステップ 先生が「自由」になる。第2ステップ 子どもが「自由」になる。今回はその次の第3ステップ、『誰もが「自由」になれる環境をつくる』をお伝えいただきます。
それは「未来に必要な力」につながっています。山内先生が実現したい学びの世界とは?

図工の時間を通して「未来に必要な力って何だろう」と、受け持った子どもたちと一緒に考えてきました。
授業中ある男子が「俺はアイデアを出すのは好きなんだけど、その先が飽きちゃうんだよねー」と発言。それを聞いた女子が「私は、そのアイデアを膨らませる方が好き。そうやって違いがあるから、誰かと一緒にやることに意味がある! そう先生も言ってたよね! ね?」と伝えてくれました。

「未来に必要な力」について子どもたちと対話する中で、「みんなで創る、協力する」というキーワードがでてきました。それは「機械にはできないこと、人間にしかできないこと」だと。ここに「自由」になるための第3ステップの大きなヒントがありました。

山内先生と子どもたちの授業風景

第3ステップ、誰もが「自由」になれる環境をつくる

自由になれる2つのステップを踏んで、授業をスタートさせても、うまく「自分がやりたい状態」になれない子がいます。

そんな時は、話を聞いたり、そっと隣にいます。それで何かが解消されて「自由」になれる子もいます。

でも、やる気のでない人をやる気にさせるのは、ものすごく難しいものです。子どもたちは様々な生活の中で、僕との授業をむかえます。朝から何か調子が悪い、友達と喧嘩した、寝不足、担任の先生に腹を立てている……
「さぁ授業だよ」と言っても、切り替えができない時だってあるでしょう。
僕は、「やりなさい」と無理にさせるのではなく。「いいよ〜休憩してて。そんな時もあるよね」と、手が動かない子に対しても、それを受け入れるようにしています。

これまで1000人を超える子どもたちと授業をしてきましたが、僕の授業中に全く何もしない子はいませんでした。他の先生の授業には参加できなくても、図工の授業だけ受けに来る子もいました。
でもそれは、僕の力ではなく、授業全体の空気感、子どもたちの力によるところが大きかったのです。
自由に作品に取り組む子どもたち

作品をつくるのは「目的」ではなく、「手段」

図工の時間を、個人制作と捉えている大人が少なからずいるのだと知りました。確かに自分が小学生の頃の記憶も、一人ひとつの作品を作ることがほとんどだったので、個人制作というのも決して間違った解釈ではありません。

図工室は基本的に、4人が向かい合って座ります。その環境で授業は進むので、子どもたちは必然的に、前の人、横の人の制作の様子を見合っているのです(現在はコロナ禍で難しい状況の地域もあると聞いていますが…)。
図画工作科では、表現と同じく鑑賞も大切にしています。「鑑賞」のみ取り出して、制作した作品を発表したり、アーティストの作品を鑑賞したりしますが、子どもたちは自分の作品をつくりながら互いに鑑賞もし合っているのです。

勤務していた公立小学校では、ひと学年3〜4クラスありました。図工専科教員でしたので、同じ授業を3〜4回するのですが、冒頭に同じテーマで同じように伝え、授業をスタートしているのに、クラス毎に表現の雰囲気が変わるのです。もちろん一人一人の表現は全く違います。でも不思議なことに、なんとなく2組らしい感じとか、3組っぽい感じが、たち現れてくるのです。

これは、先に伝えた「子どもが互いに向かい合い、鑑賞し合いながら制作するプロセス」が大きく影響しています。制作途中でも、誰かの発見や、アイデアが、「うわ! それ、いいね! どうやってやったの!?」と他の子に伝播していきます。直接言葉に発していなくても、そのやりとりをそっと聞いていて、自分の表現に組み合わせたり、後でそれが活きたりします。みなさんにもこういう経験がありませんか?

僕は図画工作を個人制作とは思っていません。なので共同制作をよく行いましたが、一人ひとつの作品をつくる授業でも、それを個人制作の時間とは捉えていません。

作品をつくるのは目的ではなく、手段です。制作する過程で、影響し合い、コミュニケーションを取りながら、教え合い、学び合い過ごす時間そのものをつくっているのです。
ですから、この取り組みは家で、1人では決してできないのです。この時間は他者がいてこそ成立します。また、他者を受け入れてこそ、この環境がうまれます。

対話しながら手を使って作品づくりをする子どもたちの写真

自分がそこにいる価値や意味を知って欲しい

卒業生からもらった手紙で、こんな言葉を届けてもらいました。
「山内先生は一人一人を大切にしている。人の考えや意見を尊重し、共感している」
子どもにそうなって欲しいと願うなら、自分がまずそうならなくては、と行動していた自分をまるごと認めてもらった気がして、読んだ直後に涙がでました。今でもずっと大切にしている宝物です。

「正解がない」という図工の特徴と合わせて、僕自身がその姿を示し続けることで、子どもたちも他者を受け入れる姿勢がつくられていくのかもしれません。

また別のある子が言ってくれました。
「正直、何をつくろうか毎度すごく悩む。でも、自分が何も浮かばなくても、友達のアイデアを見たり聞いたりして、手を動かしていれば何かできると分かってるから、悩むけどつらくはない。だから、図工の時間は大変だけど楽しい」

友達同士でアイデアを伝えたり、聞いたりするので、図工の時間は静寂とはほど遠い環境です。いつも賑やかで、雑談が飛び交います。

制作と関係ない、無駄に思えるような会話の中にも、ヒントやアイデアは隠れています。
僕も子どもたちと制作しながら色々な話をします。今朝の出来事、昨日の喧嘩のこと、家族のこと、兄弟のこと。個別に相談を受けたならともかく、こんな会話は、その子と面と向かっていたら、自然にはでてこないと思うのです。
互いにつくっているという行為が、コミュニケーションを取りやすくしてくれるのです。他者と関わることで、表現もどんどん変化します。無駄なことなんてひとつもありません。豊かな時間なのです。ただ、子どもによっては静かにできる場所も必要です。そんな時は、その子のために、図工準備室にそっと居場所をつくっていました。

「図工は正直得意じゃない。でも、図工の時間が好き」高学年になるとこういう子もいました。他者の“すごい!”が見えてくる分、自分と比較してしまい、苦手と感じてしまう。
なるべくそうなって欲しくないのですが、これは、成長過程において避けようのない感覚だとも思っています。苦手だとしても、自分がそこにいる価値や意味を知って欲しいのです。

話し合う子どもたちの写真

「俺はアイデアを出すのは好きなんだけど、その先が飽きちゃうんだよねー」
「私は、そのアイデアを膨らませる方が好き。そうやって違いがあるから、誰かと一緒にやることに意味がある!」
冒頭に紹介した、この会話にこそ、僕の実現したい学びの世界が表れています。

つくるのが好き。描くのが好き。アイデアを出すのが好き。そんなやりとりを眺めているのが好き。少しずつでも影響し合い、どんな表現も否定されず、どんな自分でもここに居ていい。そういう雰囲気づくり、環境づくりが、学びの場を「自由」にする最後のステップです。
これは一朝一夕でできるわけではありません。相手にする子ども次第でその方法も変わってくるでしょう。これには正解も、必勝の方程式もないのです。だから、そういう環境を目指して、常にアップデートを繰り返していくのです。

未来を創る力、切り拓いていく力を考える時 その元になるのは「機械にはできない、人間にしかやれないこと」でした。
そしてそれは一人の力ではなく、子どもたちそれぞれの個性が組み合って、創造されていく。
そのことを、授業を通して子どもたちから教えてもらったのだと思います。

次回は6/21(火)配信。これまで書いてきた、先生も子どもも、「自分がやりたくてやっている状態」をつくりだし、自分自身で「自分にとっての答え」を追い求めるための3ステップ。それを使った具体的な授業実践についてお伝えします。

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執筆者紹介

山内佑輔

新渡戸文化学園 VIVISTOP NITOBEチーフクルー/プロジェクトデザイナー/東京造形大学非常勤講師/SOZO.Ed副代表。

ワークショップの手法をもちいて、子供たちのクリエイティビティを育む環境をつくりだす。 学校内では様々なアーティストや専門家、企業と連携した授業を実践。大学職員、東京都公立小図工専科教員を経て、2020年4月から新渡戸文化学園へ移り、VIVITA株式会社と連携しVIVISTOP NITOBEを開設。2021年「VIVISTOP NITOBE FURNITURE DESIGN PROJECT」がキッズデザイン賞最優秀賞内閣総理大臣賞受賞。その他、キッズワークショップアワード優秀賞、出張図工室プロジェクト「山と水の図工室」の活動では東京新聞教育賞を受賞。2021年3月からPodcast「山あり谷あり放送室」を配信し、第3回 日本Podcast Awards ベストウィルビーイング賞ノミネート。二児の父。

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