学びの必要感をもち、「言葉による見方・考え方」を働かせる授業づくり

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学びの必要感をもち、「言葉による見方・考え方」を働かせる授業づくり

単元名:「『大好き』をはっけん☆ ~たぬきの糸車~」 教材:「たぬきの糸車」(光村図書/1年生)
「たぬきの糸車」の授業づくりを紹介します。 本教材は、物語の場面の様子から行動を想像しやすいという特性があり、入門期の子どもにとっても楽しく読めるお話です。今回は、長屋樹廣先生(北海道教育大学附属釧路義務教育学校前期課程)に、子どもたちの「大好き」な場面を視点に読むことで、子どもの興味・関心を引き出す授業づくりについて、ご提案いただきました。

単元導入時には、指導者の押しつけにならないよう、学習者の課題意識と指導のねらいを一致させながら対話的・相談的に学習計画を立て、日常生活や社会生活と結び付け、「やりたい」「解決したい」「現段階では不十分だ」といった学びの必要性が生まれる課題を設定していく。また、各一単位時間の学習課題についても、単元課題との有機的な結び付きを明確にしながら設定することにより、児童・生徒が学びの必要性を維持し、学習の見通しをもつことができる。

単元を通じた課題や一単位時間における課題に対し、個々の児童・生徒が「自己の認識や判断」、あるいは小集団学習における立場を決めた後に、集団思考(小集団活動の場面を含む)を通して自他や他者同士の意見を比較したり、組み合わせたりしようとすることを促す発問・問い返し等を行う。発表や話し合いの意味付けや条件付けをその都度明確にする働きかけを行うことで、能動的な関わり合いが生まれるであろう。
また、課題に対する「立場」やその「根拠」を、児童・生徒の発言によって共通点や相違点等を整理し、解決に向かわせるような発問・問い返しを吟味し、適宜講じる。これにより、「思いや考えを他者と共有」しながら、本時あるいは単元の目標に近づいていくことになると考える。

本教材は、おかみさんといしたずらたぬきの心の交流があるお話である。だからこそ、場面の様子から行動を想像しやすいという特性がある。本単元では、「たぬきの糸車」を中心教材として、学習指導要領C「読むこと」のイ「場面の様子や登場人物の行動など、内容の大体を捉えること」、エ「場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像すること」をねらいとする。

〔知識及び技能〕

身近なことを表す語句の量を増し、話や文章の中で使うとともに、言葉には意味による語句のまとまりがあることに気付き、語彙を豊かにすることができる。(1)オ

〔思考力、判断力、表現力等〕

内容の大体を捉え、場面の様子に着目して、たぬきやおかみさんなどの登場人物の行動を具体的に想像することができる。C(1)ア・エ

〔学びに向かう力、人間性等〕

進んで、学習の見通しをもって内容や感想を「たぬきの糸車大好きカード」にまとめようとする。

  学習活動 ・学習内容
第一次
  • これまで読書してきた昔話を想起し、自分の大好きとその理由を交流する。
  • 教師の「たぬきの糸車大好きカード」のモデルを見ることを通して、単元の見通しをもち、学びの必要感をもつ。
第二次
  • 「たぬきの糸車」を通読し、内容の大体を捉える。
  • きこりが住んでいる山奥の様子と、たぬきがいたずらをしている様子について着目することで、 物語の設定(時・場所・人物等)について考える。
  • おかみさんを見ながら、糸車を回すまねをするたぬきの様子に着目することで、おかみさんとたぬきの関係性について考える。
  • 罠にかかり、おかみさんに助けてもらったたぬきの様子について考える。
  • たぬきが糸車を回し、踊りながら帰っていく様子について考える。【本時】
第三次
  • たぬきの糸車の大好きな場面とその理由を、「たぬきの糸車大好きカード」にまとめ、附小ギャラリーに展示することを見通す。
  • たぬきの糸車の大好きな場面とその理由を記述した「たぬきの糸車大好きカード」を交流する。

たぬきが糸を紡いだ理由を話し合う活動を通して、「糸を紡ぐ」たぬきの行動の変化に着目し、場面の様子について想像を広げながら読むことができる。

本時の段階になると、子どもたちは、自分の「大好き」を中心にお話を読み、様々な創造を広げている。「この挿絵の中で、自分が大好きな場面は、どこですか? それはどうしてか、理由を話し合ってみましょう」と問う。「私は、たぬきがわなにかかって、それをおかみさんが助けたところが好きだよ。なぜかというと、いたずらばかりしていたたぬきなのに、助けたおかみさんは優しいなと思ったからだよ」「ぼくは、たぬきがわなにかかって怖い思いをしたにもかかわらず、糸を山のように紡いだところが好きかな。もし、自分がたぬきだったら、わなにかかって怖い思いをした場所にはなかなか近づけないからだよ」「わたしは、最後のたぬきがぴょんぴょこ踊りながら帰った場面が好きだな。理由は、ぴょんぴょこ踊りながら帰ったところが、自分の中では不思議だったからだよ」など、子どもたちが自分の大好きな場面とその理由を語り合う。

その中で、前時までに、みんなで話し合いたいと言っていた児童の発言に関するところをいくつかピックアップする。「○○さんが言ったように、怖い思いをしたにもかかわらず、たぬきはどうして、また山小屋に来て、糸を紡いだのでしょうか」と発問する。「おかみさんに助けてもらった恩返しをしたかったと思う。前の場面では、わなにかかったたぬきを、おかみさんが助けてくれたよね」「きっと、おかみさん、喜んでくれるかなと思いながら、糸を紡いだと思うな」「だから、山のように糸を紡いだと思うな」「おかみさんが糸をつむぐ様子を見て、真似をしていたから、おかみさんのように上手な手つきで紡ぐことができたよね」「そして、たぬきはうれしくてたまらなかったんだよね。ぴょんぴょこ踊りながら・・・・・・とつながるね」と発言が続く。

ここで、「今の『うれしくて、ぴょんぴょこ踊りながら帰った』という発言と、先程○○さんが言っていたように、『ぴょんぴょこ踊りながら帰ったところが不思議だった』という発言があったので、『どうして、たぬきはぴょんぴょこ踊りながら帰って行ったのか』を話し合っていきましょう」と話題を焦点化する。 子どもたちは、「おかみさんに恩返しできてうれしかったという気持ちがあったと思うよ」「おかみさんに、恩返ししたことを気付いてもらえたからだよね」「確かに、役に立ちたい気持ちや恩返しをしたい気持ちがあるんだろうね」「ぼくはよいことをして褒められたときに、うれしくてたまらないという気持ちになるよ。たぬきにも、そんな気持ちがあったのだと思う」「うれしいは、相手がいるときに使う言葉だね。おかみさんにたぬきが恩返しをしたことに気付いてもらえたから、たぬきはうれしくて、ぴょんぴょこ踊りながら帰っていったね」などの発言が続く。

このように、「大好き」という視点でお話を読むと、様々な叙述を基に想像を膨らませ、物語文の変容を捉えたり、低学年なりの作品に対する自分の考えをもったりすることができる基礎的な力の育成につながっていくと考える。

第6時 板書

児童Aは「恩返し」という言葉を選択するなど、今まで学級全体で話し合ってきたことや自分なりに理解したことを「大好きカード」にまとめることができた。単元を通して、これまで子どもたちが、読んできた自分の考えやその根拠となる情報を書き溜めた「大好きカード」を交流することによって、お互いのよさを認め合ったり、自分の学びの成果を実感したりすることができた。「大好きな場面は似ているけど、理由は少し違ったな」「大好きな場面の理由がなるほどと思ったよ」などと、友達の意見を聞き取りながら、自分にはない新たな視点を得ている姿が見られた。今後も「大好き」を視点に読みながら、子どもの興味・関心を引き出し、学びを深化させることができる入門期の国語授業づくりの在り方を追究していく。

また同時に、子どもたちが「読む力」を確実に身に付けることができるようにし、学びの充実感・達成感を味わうことができるようにしていく。

長屋 樹廣(ながや・たつひろ)

北海道教育大学附属釧路義務教育学校前期課程

全国国語授業研究会理事/日本国語教育学会会員/全国大学国語教育学会会員/北海道教育大学釧路校国語科教育研究会常任理事/国語探究研究会理事/釧路国語教育研究会研究副部長

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