教師が教えたいことを、子どもが学びたいことへ

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教師が教えたいことを、子どもが学びたいことへ

単元名:読んで、かんじたことをつたえ合おう 教材:「スーホの白い馬」(光村図書/2年)
「スーホの白い馬」の授業づくりを紹介します。既習のハッピーエンド型のお話とは違う結末であることや、中心人物の心情が表れる複合語・繰り返し・比喩などの表現の工夫があるという点が本教材の特徴です。今回は、髙橋達哉先生(東京学芸大学附属世田谷小学校)に、子どもの「学びたい」「考えてみたい」「話し合ってみたい」という思いを引き出す、効果的な発問を取り入れた授業づくりについてご提案いただきました。

国語授業において、指導内容を明確に設定することが重要であることは、阿部昇(2004)をはじめ、さまざまな論者によって、これまでにも繰り返し指摘されてきていることである。

「指導内容」というのは、1単位時間の授業や単元全体を通して、「何を教えるか」ということである。他教科と比べ、国語科の指導内容は、今ひとつ分かりづらいと言われる。確かに、学習指導要領解説を読んでも、国語科において指導すべき事項として書かれていることは、抽象度が高いと感じる。

そのため、私たちが国語科の指導内容を理解するためには、学習指導要領解説を丁寧に読み解く必要があり、さらに学習指導要領解説に書かれていることを、実際の教科書教材と照らし合わせていく作業も極めて重要になる。そうして、国語科の指導内容を把握した上で、教科書会社発行の指導書や、教科書の「学習の手引き」などを参照しながら、当該教材における「指導内容」を設定するのである。

「指導内容」を明確にしたうえで、私たち教師に求められるのは、子どもたちが意欲的に学習に取り組むことができるような手だてを考えることである。

「発問の役割は、教師が教えたいことを、子どもが学びたいことに転化することである。」

これは、吉本均(1979)の言葉である。私は、この発想こそが、授業改善の大きなポイントだと考えている。「指導内容」というのは、いわば、教師が「教えたいこと」である。吉本が示唆するのは、目指すべきは、教師が「教えたいこと」を「そのまま教える授業」ではなく、教師が「教えたいこと」を子どもが「学びたいと感じるような授業」だということである。そして、元来、その役割を果たすのが「発問」だということである。

しかしながら、国語授業における一般的な発問が、必ずしも、「教師が教えたいことを、子どもが学びたいことに転化する」という役割を果たしているとは言えない(そうした発問の例としてしばしば取り上げられるのが、「このときの○○(中心人物)は、どんな気持ちですか」という発問である)。

そこで本稿では、子どもたちの「学びたい」「考えてみたい」「話し合ってみたい」という思いを引き出すような発問の工夫として、以下の2つを提案する。

お手紙(1・2年)

「がまくんが一番うれしかったのは、どの場面だと思いますか」

大造じいさんとガン(5年)

「2場面の中で、大造じいさんのやる気や自信が最も伝わってくるのはどの一文ですか」

このように、いくつかの選択肢(場面、文など)の中から、自分なりに判断して考えをもたせるような発問が、「判断を促す発問」である。

「私は、2の場面だと思います。理由は……」のように、選択肢の中から自分の考えを決め、自分なりにその理由付けをすることで自分の考えの形成と表現ができることから、子どもたちにとって比較的考え易い発問形式であると言えるだろう。「誰がどの選択肢を選んだか」を、挙手や、ネームマグネットなどで「見える化」することで、自分とは異なる立場の友達の存在を知り、「意見を聞いてみたい」「自分の考えを伝えたい」という、話し合いへの意欲を引き出すことができると考えている。

ごんぎつね(4年)

「もしも、最後の一文が『白いけむりが、まだつつ口から細く出ていました』だったら……?」

教材の「内容」や「表現」の一部を取り上げ、実際の文章とは異なる場合を仮定する発問が、「もしも発問」である。

「もしも発問」には、以下の5つの方法があると考えている。

  1. 「ある」ものを「ない」と仮定する方法(もしも、○○がなかったとしたら?)
  2. 「ない」ものを「ある」と仮定する方法(もしも、○○があったとしたら?)
  3. 別のものを仮定する方法(もしも、○○が◇◇だったとしたら?)
  4. 入れ替えを仮定する方法(もしも、○○と◇◇が入れ替わっていたとしたら?)
  5. 解釈を仮定する方法(もしも、○○と考えたとしたら?)

同じ教材文を繰り返し読んでいる子どもたちにとって、「もしも、○○だったら……?」と別の場合を仮定する行為は、非常に新鮮で、刺激的な行為に感じられるようである。それゆえ、「もしも発問」は、活発な思考を促し、「発言したい」という思いを引き出すことができる発問方法であると考えている。

既習の文学教材は、その多くがハッピーエンド型である。しかし、本教材の場合、最終場面における中心人物からは前向きな思いを感じるものの、結末は決してハッピーエンドとは言えない。その教材の特性を生かし、お話の終わりにおける中心人物の心情(結末部の心情)の解釈を交流したいと考えている。解釈を交流した上で、文学作品には、ハッピーエンドとは言えない終わり方の作品もあることを確認したい(アンハッピーエンド型・バッドエンド型)。なお、その際には、「ずうっと、ずっと、大すきだよ」(光村1年)の学習の想起も促すようにしたい。

また、本教材には、「はねおきて」「走って、走って、走り続けて」「あせが、たきのようにながれおちています」など、白馬やスーホの心情や様子が感じ取れる様々な描写がある。子どもたちの気づきを生かしながら、複合語、繰り返し、比喩などの表現の工夫には、人物の心情や様子を一層効果的に伝えるよさがあることについて整理するようにしたい。

〔知識及び技能〕

身近なことを表す語句の量を増し、話や文章の中で使うことで、語彙を豊かにすることができる。(1)オ

共通、相違、事柄の順序など情報と情報との関係について理解することができる。(2)ア

〔思考力、判断力、表現力等〕

「読むこと」において、場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像することができる。 C(1)エ

「読むこと」において、文章を読んで感じたことや分かったことを共有することができる。C(1)カ

〔学びに向かう力、人間性等〕

文章を読んで感じたことや分かったことを進んで共有し、学習課題に沿って、最も心を動かされたことを伝え合おうとすることができる。


一次
学習の見通しをもつ
  • 作品を読み、初めて読んだ感想や疑問に思ったことなどを書く。
  • 感想を交流し、「いちばん心を動かされた場面を家族に紹介しよう」という言語活動を設定する。

二次
登場人物の行動の様子や心情を想像する
  • 「この話は本当の話なのか?」について話し合うことを通して、作者や作品の設定(いつ・どこの話か)、登場人物、「前書き」の役割について確認する。
  • それぞれの場面を読み、特に心を動かされたところについて話し合う。
  • 話し合いを振り返り、それぞれの場面における心を動かされたところについて、考えを書きためる。

三次
作品を読んで感じたことを書き、共有する
  • それぞれの場面における心を動かされたところを振り返り、作品を通して、「いちばん心を動かされた場面」を決める。
  • 「いちばん心を動かされた場面」の紹介文を作成し、交流する。

第7場面における「スーホ」の心情について、叙述に基づいて解釈を話し合うとともに、ハッピーエンド型ではない作品の構造を捉えることができる。

各場面の出来事を端的に表現するキーセンテンスを提示し、それぞれの場面がプラスの場面だったか、マイナスの場面だったかの確認を行った。キーセンテンスは、挿絵と貼り合わせておき、裏面の挿絵は色分けをして提示した。それによって、第6場面までの話の流れと中心人物の心情の変化を振り返ることができるようにした。

第6場面までを振り返ったところで、本時で扱う第7場面については、「白馬が死んでしまったから、最後の場面はマイナスだよね」とあえて教師から一方的に投げかけた。すると、少し間を置いて、「え、そうかな」「プラスもあると思う」「赤と青の両方だから、紫じゃないかな」などのつぶやきが聞こえ始めた。

第7場面からは、プラスの気持ちも読み取れそうだという考えを受けて、学習課題「スーホのプラスのきもちが分かるところは?」を設定した。自分の考えを選択したり、判断したりすることを促す学習課題である。
★5つの段落から選ぶことが難しい場合には、文レベルで探すように助言した。

第7場面におけるプラスの叙述について話し合ったことを受け、「第7場面には、スーホのプラスがたくさんあるね」と確認した。その上で、既習の物語教材も振り返りつつ、「この作品も、今までの作品と同じく、ハッピーエンド型だね?」とゆさぶり発問(解釈を仮定する発問:「もしも、〇〇と考えたとしたら?」)を投げかけた。
子どもたちからは、「命は戻らない」「(プラスに感じることが書かれていても)心の中は、傷ついている」「殺された悔しさが残っている」などの理由から、「ハッピーエンドはおかしい」という意見が出された。そして、この作品は、「ハッピーエンドとは言えない」「プラスを赤色、マイナスを青色とすると、紫の終わり方になっている」という結論を導き出していった。
★第7場面から解釈できるマイナスの心情を理解できない子がいる場合には、教師が分からないふりをして、他の子に具体的に説明するように促した。

学習のまとめとして、既習の物語教材とは異なる作品構造になっていることを整理した。
本時で学習した第七場面における「最も心に残った一文」をノートに書き抜き、その一文を選んだ理由を書くように伝えた。
★考えをノートに書くことが難しい子がいる場合には、教科書にサイドラインを引くように伝えたり、教師に口頭で伝えたりするように助言した。

第7時の板書

授業においては、掲示された教材文を指差しながら、その部分からどんな心情が読み取れるかを話す子どもたちの姿が見られた。また、選択肢があることから、それぞれの選択肢を比較検討しながら悩む姿や、自分とは異なる選択をした他の子どもの考えに関心を向ける姿が見られた。
こうしたことから、最終場面における中心人物「スーホ」の心情について、叙述をもとにしながら解釈を話し合う上で、教材文を印刷して掲示したこと及び、判断を促す発問が有効に機能したと考える。さらに、教師からのゆさぶりを受けて、この場面には直接的に書かれていない「スーホ」の心情にも思いを馳せる姿が見られ、ハッピーエンドとは言えないことを指摘する姿が見られたことから、仮定的な発問を取り入れたことにも、一定の成果があったと考えられる。


なお、授業の計画時には、本作品の終わり方を「バッドエンド」や「アンハッピーエンド」という言葉で確認しようと考えていたが、子どもたちからは、それらの言葉も、本作品には相応しくないという意見が寄せられた。確かに、前向きに生きようとする「スーホ」の姿があることから、「バッドエンド」や「アンハッピーエンド」とは言い難い。「ハッピーエンド」と、「バッドエンド」や「アンハッピーエンド」が混ざり合った感じの終わり方であるというある子の発言を受けて、すっきりした表情の子どもが数多く見られた。


〔引用・参考文献〕

阿部昇(2004)「国語科の教科内容解明という課題」『全国大学国語教育学会発表要旨集106』全国大学国語教育学会)

吉本均(1979)『学級で教えるということ』明治図書出版

髙橋達哉(2020)『一瞬で読みが深まる!「もしも発問」の国語授業』東洋館出版社

髙橋 達哉(たかはし・たつや)

東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

全国国語授業研究会理事/国語教育探究の会(山梨支部代表)/日本授業UD学会(常任理事・山梨支部代表)/全国大学国語教育学会会員/日本読書学会会員

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