個別最適な学びに生きる フレームリーディングの国語授業

    個別最適な学びに生きる フレームリーディングの国語授業

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      Barcode: 9784491045221

      青木 伸生/編著、「ことば」の教育研究会/著

      $13.00

      著者紹介

      青木伸生(あおき・のぶお)

      1965年、千葉県船橋市生まれ。東京学芸大学を卒業後、東京都公立小学校教諭を経て、現在、筑波大学附属小学校教諭。全国国語授業研究会会長、日本国語教育学会常任理事、教育出版小学校国語教科書編集委員なども務める。著書に『フレームリーディングでつくる国語の授業』(2013年・東洋館出版社)、『教科書新教材「フレームリーディング」でつくる国語の授業』(2015年・東洋館出版社)、『小学校国語 説明文/物語文の授業技術大全』(2019年・明治図書)『10分で読める物語』(2020年・学研プラス)他、多数。【2021年9月現在】

      目次

      はじめに

      Ⅰ 理論編ーなぜ、フレームリーディングなのか
       1.フレームリーディングが目指す学びの姿
       (1)フレームリーディングとは
       (2)個別最適な学びをつくる
       (3)読むことの学習過程に沿う
       (4)読むことの面白さを実感させる
       2.身につけさせたい12のフレーム
       (1)物語における12のフレーム
       (2)物語を読むための基本フレーム
       (3)物語を読むための発達段階に応じたフレームリーディング
       (4)説明文における12のフレーム
       (5)説明文を読むための発達段階に応じたフレームリーディング
       3.子どもが学びを創る
       (1)子どもの中にあるフレームが学びを創る
       (2)個別最適な学びに向けて
       (3)考えの形成のためのアウトプット
       (4)子どもが自分の学びをふり返る

      Ⅱ 実践編ーフレームリーディングでつくる新教材の国語授業
       1.まいごのかぎ(3年)
       2.思いやりのデザイン(4年)
       3.世界にほこる和紙(4年)
       4.やなせたかしーアンパンマンの勇気(5年)
       5.言葉の意味が分かること(5年)
       6.固有種が教えてくれること(5年)
       7.たずねびと(5年)
       8.帰り道(6年)
       9.メディア・大切な人

      Ⅲ 実践ー青木伸生のフレームリーディングの国語授業

      Ⅳ 座談会ーフレームリーディングの課題と可能性

      おわりに

          Description

          個別最適な学びに生きるフレームリーディングの国語授業

          筑波大学附属小学校の青木伸生先生が提唱し、文章を「丸ごと読む」ことで子どもの読む力や学びの姿、そして教師の授業づくりも大きく変えた「フレームリーディング」から8年。実践と研究は進み、新学習指導要領の趣旨も踏まえて、バージョンアップしました。

          1. なぜ、フレームリーディングなのか

          青木先生はフレームリーディングを以下のように定義しています。

          自分のもっているフレーム(目のつけどころ)を生かしつつ、そのフレームを更新したり、新たなフレームを獲得したりしながら文章のつながりをとらえる読みの手法

          この定義は、最初に提案されたものから、実践と研究を重ねることで少しずつ更新されてきました。その際大切にしたのが、「子どもが、自分の力で文章を読み解くことができるように、目のつけどころをもたせていく」という発想です。
          まずは文章を丸ごととらえ、自分のフレームを生かして読むことで、言葉のつながりに気付き、その文章のもつ特徴や筆者の伝え方を大枠でとらえ、新たな「問い」をもちます。そして段落、場面ごとに詳細に読むことも取り入れて、フレームを更新・獲得し、主題や筆者の主張に、その子どもなりにせまったとき、初めて「読めた」「分かった」という実感をもつのです。フレームリーディングが目指すのは、このような子どもの学びの姿です。

          ではなぜ、今、フレームリーディングなのか。それには、大きく三つの理由があります。

          1. 子どもを起点とし、個別最適な学びをつくるためには、フレームリーディングの発想が不可欠であること。
          2. 新しい学習指導要領で示されている読むことの学習過程は、フレームリーディングの読みの過程とほぼ一致すること。
          3. 子どもの学びに向かう力を育むためには、読むことの面白さを実感させるフレームリーディングが適していること。

          すなわち、これから求められる国語授業を考える上で、フレームリーディングは一つの大きな手がかりになるのです。


          (1)個別最適な学びをつくる

          当然のことながら、子どもに備わっている資質・能力は、一律ではありません。読むことに長けている子どももいれば、音読さえたどたどしい子どももいます。様々な力をもった子どもが、一緒にいるのが教室です。

          様々な子どもにそれぞれの資質・能力を育もうと考えたとき、では教師は、個々の子どもに応じて、30人いれば30通りの発問を考え、30通りのワークシートを用意しなければいけないのでしょうか。
          もちろんそれは非現実的であり、そもそも、多様な子どもが一つの教室で学び合うことのよさが生かせなくなります。一つの文章を読んでも、とらえ方や感じ方が異なる子どもがいて、それらをお互いに出し合うことで、今までにない理解や新たな発見につながるのです。

          つまり、個別最適な学びとは、今までの一斉授業の発想を転換しつつも、かといって、子どもをバラバラにして個別に学ばせることでもないのです。

          そこで個別最適な学びの一つの手法が、フレームリーディングなのです。
          それは、子どもに、フレーム(目のつけどころ)をもたせるという発想で授業をすることです。人は、文章を理解する上で、自分のもっている様々なフレームを駆使していると言われますが、国語授業において、そのフレームを子どもたちに身につけさせていくことができます。文章を読むとき、自分の身につけているフレームのどれを使うかは、それぞれの子どもの選択になります。「自分はこのフレームを使って文章を読んでみよう」という子どもの意識が、文章を読む上での、学びの出発点になるのです。
          この発想が、「子ども起点」です。その子どもなりの文章の見え方、とらえ方を学びの出発点にするのです。教師の発問や課題設定から始まる授業とは、大きな方向転換です。

          授業において、様々なフレームを身につけることができれば、次の文章を読むときも、子どもの選択肢が増えます。しかも、授業という場で、読みのフレームを系統的に積み上げることで、より効果的・効率的に、子どもが自分のフレームを駆使して読むことができるようになると考えます。さらに、子ども同士の学び合いによって、自分の中に新たなフレームを獲得したり、それまでもっていたフレームを更新したりすることができます。

          子どもの中に学びのフレームができていくと、その子どもの資質・能力がより個性的に発揮できることでしょう。フレームリーディングによって、個別最適の学びをつくることができるのです。


          (2)読むことの学習過程に沿う

          フレームリーディングにおける学習過程は、次のような流れで示すことができます。

          俯瞰―分析(焦点化)―統合

          これは、学習指導要領の「読むこと」における学習過程とほぼ同じ流れになっています。

          構造と内容の把握―精査・解釈―考えの形成―共有

          構造と内容の把握とは、目の前の文章が、およそどのようなことが書かれているのか、どのような構造で書かれているのかとらえることです。つまり、文章全体を大まかにとらえる読みの段階です。フレームリーディングでは、「俯瞰」にあたります。ここを丁寧に行うことで、どこに焦点を当てて詳しく読んだらよいかが見えてきます。

          従来の読むことの授業では、この全体を俯瞰する段階にあまり時間をかけることなく、すぐに場面ごと・段落ごとの詳細な読解に入っていたところがあります。子どもたちは、全体の流れが十分につかめていない中で、詳細に読み込むことをしていたので、結果として全体のつながりがぼやけてしまったのです。文章を理解するとは、「つながり」を見いだすことです。叙述と叙述、場面と場面、出来事と出来事がつながって見えたときに、「分かった」となるのです。

          大まかにとらえ、その文章を読むための勘所をつかんだ後、構造と内容の把握と精査・解釈を行き来することによって、読み手の中に考えが形成されます。それを表現し合うことで、仲間との共有が可能になります。

          こうした読むことのプロセスを、具体的な授業レベル、発問レベルで具現化したものがフレームリーディングであるということもできます。


          (3)読むことの面白さを実感させる

          「スイミー」という教材は、楽しく暮らしていたスイミーが、きょうだいたちを失って悲しみの中で一人海を泳いでいるなかで、さまざまなものに出会い、やがて新たな仲間に巡り会い、新たな居場所を見つけ成長する物語です。クライマックスでスイミーは、今までに出会ったたくさんの海の生き物のことを思いだし、一つのアイデアを提案します。スイミーは、自分の過去の経験を参考にして、新たなアイデアを生み出したのです。これが、スイミーという物語におけるつながりの一つです。

          物語はすべてがつながっています。このつながりを見つけ出すことが読むことです。子どもは、つながりを発見したときに、「面白い」と感じます。読むことの面白さを実感させることができるのがフレームリーディングなのです。


          2. 身につけさせたい12のフレーム

          青木先生は、小学校段階で身につけさせたい12のフレームとして、物語、説明文、それぞれを提案しています。
          ここでは、物語の12のフレームを紹介します。

          図1 物語のフレーム

          物語を読む最終の目的は、「自分はこの作品をこのように受け止めた」と、作品のテーマや主題を自分の言葉で表現できることです。主題とは、作品から読み手が受け止めたメッセージであると定義しています。内容を深く読めば、その分受け止める主題も深くなっていくはずです。主題をとらえるために、子ども一人ひとりがもっている目のつけどころを駆使するのです。

          12のフレームには順序性はありませんが、授業化に向けて、発達段階に応じた「身につけるのに適した時期」というものはあると考えています。

          次に示す表は、物語の12のフレームを再構成し、フレームリーディングのプロセスに合わせて並べたものです(一部抜粋)。このプロセスは、学習指導要領の「読むこと」の学習過程ともほぼ一致するため、その過程も示しています。また、それぞれの目のつけどころを学ぶのに、最も適していると思われる教科書教材も示しています。

          表1 物語のフレーム もちろん、個々に示したもの以外の学習材でも目のつけどころを身につけさせることはできます。この表を基に、それぞれの教室で、子どもの実態に応じて目のつけどころを身につけていくために実践されていくとよいでしょう。 なお、フレームが11になっているのは、「読者自身のフレーム」を外したためです。

          3. 実践

          本書では、先述の図表に基づいて、主に令和2年度から採用された新教材で実践を紹介しています。

          実践は、学習材の特性をおさえる教材研究のポイントや、フレームリーディングにつなぐ教師の発問を中心に整理した単元構想、中心的な1時間、また考えを形成するためのアウトプットを紹介する流れで構成しています。

          表1 物語のフレーム 表1 物語のフレーム 表1 物語のフレーム 表1 物語のフレーム

          【実践編に掲載される学習材】

          1. まいごのかぎ(3年)
          2. 思いやりのデザイン(4年)
          3. 世界にほこる和紙(4年)
          4. やなせたかし―アンパンマンの勇気(5年)
          5. 言葉の意味が分かること(5年)
          6. 固有種が教えてくれること(5年)
          7. たずねびと(5年)
          8. 帰り道(6年)
          9. メディア・大切な人(6年)

          本書では、このほかにも、青木伸生先生の実践や、フレームリーディングを実践されている先生方による座談会も収録しています。
          座談会では、フレームリーディングの効果を子どもたちの具体の姿から語り、同時に、実践を進めていく上での難しさも共有、検討しています。

          どんな文章に出合っても、読む構えがあり、読み解く術を知っている。そして、読む楽しさを知っている。教師が育てたいのは、そのような子どもの姿ではないでしょうか。
          フレームリーディングは、そのための実に有効な手法の一つです。

          Specifications

          • 読者対象: 小学校教員
          • 出版年月: 2021年10月13日
          • ページ数: 136

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