徳の教育と哲学ー理論から実践、そして応用までー

    徳の教育と哲学ー理論から実践、そして応用までー

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      Barcode: 9784491053783

      立花 幸司/編著

      $16.00

      著者紹介

      立花 幸司(たちばなこうじ)/編著
      千葉大学 大学院人文科学研究院 助教/ジョージタウン大学メディカルセンター 国際連携研究員

      目次

      「徳の教育と哲学」もくじ
      まえがき  1
      第1部
      理論編
      第1章 徳倫理学(西洋)10
      1.徳倫理学の復興とその基本主張  10
      2.アリストテレスに基づく徳の諸相  12
      3.徳倫理学に関する教育学研究の動向  15
      4.徳倫理学と教育学の重なりと展望  18
      第2章 徳認識論(西洋)20
      1.徳認識論の登場と発展  20
      2.社会認識論との接続  23
      3.認識的自律性と依存性  24
      4.悪徳認識論と教育  26
      第3章 認識的不正義(西洋)30
      1.認識実践における不正義  30
      2.証言的不正義と解釈的不正義  31
      3.認識的不正義の是正  34
      4.教育の役割  37
      第4章 徳理論と教育40
      1.徳理論の展開と教育:概論  40
      2.徳理論の展開と教育:現実  42
      3.教育哲学における徳理論の受容と展開  44
      4.批判と展望  48

      第5章 東洋における徳の思想50
      1.徳の誕生  50
      2.様々な徳目  53
      3.徳の批判者たち  56
      4.徳と修養  58
      第2部
      実践・応用編
      第6章 道徳教育における徳62
      1.日本の道徳教育の概史  62
      2.道徳教育の目標と内容項目  63
      3.道徳性の涵養と人格の完成  66
      4.アリストテレス主義的徳倫理学に基づく道徳教育の検討  68
      第7章 部活動と徳72
      1.部活動という教育活動  72
      2.部活動と徳の涵養  74
      3.部活動の課題  76
      4.部活動への徳倫理学的アプローチ  79
      第8章 教師の/と徳82
      1.教師に求められるもの  82
      2.教師の徳と資質能力  84
      3.教師の徳と教員評価  86
      4.教師と徳  88
      第9章 学校保健と徳92
      1.現代における健康と幸福:SDGsとケイパビリティ  92
      2.養護教諭の活動とケアという徳  94
      3.ケアの場/「居場所」としての保健室  98
      4.これからの学校保健・養護・ケア  100
      第10章 学習支援と徳102
      1.一斉教授という方法:出自と背景  102
      2.一斉教授の問題点:倫理的観点から  104
      3.学習支援の必要性:アカデミック・アドバイジングを例として  106
      4.学習支援者の徳  107
      第11章 情報教育と徳112
      1.情報教育の課題  112
      2.どのようなネットリテラシー教育が必要か  114
      3.ネットリテラシー教育と知的徳  117
      4.最終目標としての真理の探究  120
      第12章 シティズンシップ教育と徳122
      1.シティズンシップの思想  122
      2.シティズンシップ教育とクリック・レポート  124
      3.日本におけるシティズンシップ教育  125
      4.シティズンシップ教育と徳を繋ぐ  129
      第13章 クリティカル・シンキング教育と徳132
      1.クリティカル・シンキング教育の歴史的背景  132
      2.クリティカル・シンキング能力と徳  135
      3.クリティカル・シンキング能力に関わる知的徳の育成  137
      4.共同探究としてのクリティカル・シンキング  139
      第14章 哲学対話と徳142
      1.哲学対話とは何か  142
      2.哲学対話と道徳教育  144
      3.哲学対話と知的徳の涵養  146
      4.徳の教育の手段としての哲学対話と、哲学の「道具化」の危険性  148
      文献一覧  152
      索引  166
      あとがき  170

          Description

          徳を理論と実践の両面から捉えた書である。

          学校教育では、人としての「生き方」に自覚的になることの重要性が唱えられている。
          自らの生き方を自覚し生きる力を養うために、「知・徳・体」の育成が掲げられている。
          これら3つのうち、「徳」とは何だろうか。「徳」の育成が生きる力を養うことになるとはどういうことだろうか。
          そして、学校という場で営まれる様々な教育活動は、具体的なところ、徳を育むことにどのように関わるのだろうか。
          本書は、徳を理論と実践の両面から多角的に捉えることでこうした問いに応えようと編まれた一冊である。

          第1部では、徳に関する様々な理論や思想が登場する。
          徳とは、洋の東西を問わず歴史的に古くからある概念である。
          読者は、この第一部に登場する様々な理論の学びをつうじて、徳について全般的な理解を得ることができる。
          第1章では、西洋のアリストテレス的な徳の考え方を下敷きに、現代の徳の議論の起爆剤となった徳倫理学を概観する。
          つづく第2章では、徳倫理学を元に1980年代以降展開し始めた知識に関する徳を論じる徳認識論の概要を説明し、さらに第3章では、その知識のあり方を裏面から問い直す認識的不正義という領域が紹介される。
          これらをうけて、第4章では、徳倫理学や徳認識論の教育学、特に教育哲学での論じられ方が説明される。
          さいごに、第5章では、そうした西洋の流れとは異なりつつも、日本における影響の点では小さくない、東洋における徳の考え方が紹介される。

          第2部は「実践編」である。
          第1部で得た徳の見取り図をもとに、学校という場での様々な教育活動がどのような点で徳を育む活動となっているのか、また、徳の育成という観点から捉え直してみた場合、その教育活動にはどういった特徴や課題があるのかが論じられる。
          第2部を読むことで、読者は日本の学校教育と徳の関係が具体的に見えるようになる。
          第2部の最初となる第6章は、徳の育成ともっとも関係の深い、道徳教育について徳の育成が検討される。
          第7章では、徳の育成という観点から部活動のあり方が考察され、第8章では、一般に教師は生徒の徳の育成とどのように関わるのか、また、教師に求められる徳とは何かが考察される。
          第9章では学校保健において、養護教諭の活動や保健室という場がもつ意義が徳の観点から考察され、第10章では、学習支援制度の一つとしてアカデミック・アドバイジングに注目しながら、教室外で指導する担当者に求められる徳が検討される。
          つづいて、より幅広い取り組みとしての教育活動に視点を移し、第11章では情報リテラシー教育が関わる認識的な徳のあり方が、第12章ではシティズンシップ教育が育む徳のあり方が、それぞれ検討される。
          そして、第13章ではクリティカルシンキングとはどのような徳なのかが、第14章では哲学対話は徳の育成のための手段に過ぎないのかが検討される。

          最後に、本書の読み方について述べておこう。
          構成上、第1部の理論編を通して読んでから、第2部のなかで関心のある具体的なトピックを読み進めていくと分かりやすいようになっている。
          第2部の具体的なトピックは相互に繋がっているので、1つを読むとそこから芋づる式に他のトピックへと関心が拡がるのではないだろうか。
          しかし、実際には多くの学びがそうであるように、第2部の気になるトピックから読み始めてもらっても全然構わない。
          そうして、そこで出会った様々な考え方や言葉の背景や文脈を知るために、関連する第1部の章を読んでもらうという読み方もあるだろう。
          そのあたりは、読者の好きなように読み進めてもらえれば幸いである。

          ***執筆者一覧***

          立花幸司(たちばなこうじ) 千葉大学 大学院人文科学研究院 助教/ジョージタウン大学メディカルセンター 国際連携研究員
          川村雄真(かわむらゆうま) 筑波大学大学院・人間総合科学学術院 博士後期課程 院生
          飯塚理恵(いいづかりえ)  関西大学・日本学術振興会特別研究員PD
          佐藤邦政(さとうくにまさ) 茨城大学大学院教育学研究科、教育学部・助教
          三澤紘一郎(みさわこういちろう) 群馬大学 共同教育学部・准教授
          内山直樹(うちやまなおき) 千葉大学文学部・教授
          中西亮太(なかにしりょうた) 東京大学大学院 教育学研究科・博士課程
          上村崇(うえむらたかし) 福山平成大学福祉健康学部・教授
          村瀬智之(むらせともゆき)東京工業高等専門学校・准教授
          山田圭一(やまだけいいち)千葉大学文学部・教授
          藤井翔太(ふじいしょうた)テンプル大学ジャパンキャンパス アカデミック・アドバイザー/講師
          児島博紀(こじまひろのり)富山大学教育学部・講師
          土屋陽介(つちやようすけ)開智国際大学教育学部・准教授

          Specifications

          • 読者対象: 大学教員
          • 出版年月: 2023年10月13日
          • ページ数: 180
          • 判型: A5判

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