「落ち着きがない」の正体

著者 スチュアート シャンカー 著
小佐田 愛子 訳
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我が子の敏感すぎる反応をやわらげる

《セルフ・レグ(自己調整法)》という提案。

脳科学に基づいた理解と触れ合いが、親子のストレスサイクルを断つ


「頑張れ!」「静かにしなさい!」……子どもに対して、こんなことをいくら言い続けても意味がない。
なぜならそれはセルフ・コントロール(自制心・自己制御)に期待しているから。
すでにストレスに見舞われている子に「頑張れ!」とセルフ・コントロールを強要すればするほど、
人はポジティブな行動変化をなしとげにくくなる。

そこで大切になってくる視点が、
セルフ・レギュレーション(自己調整)だ。

落ち着きがないとき、
脳はどのような指令を出しているのか。
「落ち着きがない」ということの正体を理解することから、
セルフ・レギュレーションは始まる。

ユニセフ「乳幼児期の子どもの発達(ECD)協議会」の委員長も務め、
子どもの発達に関して研究を深めてきた著者が
セルフ・レギュレーションの視点から、
親子(先生・生徒)の触れ合い方を導き出した「セルフ・レグ(自己調整法)」のメソッドを紹介する。


原註

カナダ、アメリカ、そして世界中で、私が仕事を通じて出会った子どもは何人になるのだろう。数千人、いや数万人かもしれない。そのなかに悪い子はひとりもいなかった。

 <中略>

 理解して我慢強く接すれば、すべての子を豊かで実りの多い人生へ導くことができる。だが「問題児」というステレオタイプが、私たちの目にバイアスをかける。親としての期待や夢、失望や恐れが目を曇らせるのと同じだ。誤解しないでほしい。確かにほかの子どもたちよりもずっと手間のかかる子どもたちはいる。だが子ども自体を否定的に判断するのは、えてしておとなの防御メカニズムにすぎず、子どもの「性行」に自分が手を焼いていることを、責任転嫁するものだ。これが子どものさらなる反発を招き、自己防御や攻撃に走らせ、不安にさせ、閉じこもらせてしまう。だがそんな必要はまったくないのだ。

 <中略>

 私はそっと教室のドアを閉め、頭上の照明(まぶしい光を放つだけでなく、たえずジーという音を出しつづけていた)を消し、自分の声量を落とした。その子が急にリラックスしたのを見て、先生は表情を和らげ、つぶやいた。
「あら、なんてこと。気がつかなかったわ」
 すぐに先生の少年に対するふるまいが変わった。以前には取りつく島もないようすだったが、いまは目の端に笑みが見える。声の調子は、早口でとげとげしいものから、柔らかく心地よいものになり、ジェスチャーもぎこちないものから、ゆったりとしたものに変わった。私を見るのではなく、まっすぐ子どもの目を見ている。お互いに気持ちが通じるようになると、少年の姿勢も、表情も、声の調子も、先生の変化に呼応して変化した。
 少年の側でも、自分が音や光に過敏だということに、これまでまったく気づいておらず、そのことが事態に対処するのをむずかしくしていた。少年にとってはそれこそが現実で、「正常な」ことだったからだ。少年は今後、先生の助けを借り、いつ、どうして自分が興奮し、取り乱すのかを突き止め、さらに落ち着いて集中し、意識が冴えた状態で学習に向かうために、なにができるかを学ぶだろう。

 子どもをサポートし、物質的快適さだけでなく、子どもが成功するのに必要なライフスキルも与えようと、親は躍起になる。だがしばしば子どもと気持ちが通じ合わず、その結果、当然いらいらして怒る。
 こうした状況への対処法が、本書で解き明かそうとしている「セルフ・レグ(自己調整法)」だ。

(序章より)

「落ち着きがない」の正体

著者 スチュアート シャンカー 著
小佐田 愛子 訳
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著者 スチュアート シャンカー 著
小佐田 愛子 訳
読者対象 その他
出版年月 2017-10-31
判型 四六
ページ数 368
ISBN 9784491033761

序章

PART1 脳の仕組みを利用する

第1章 なぜ落ち着けないのか

「頑張れ!」と言っても意味がない  
自制心と個人の努力は関係ない  
脳は三層構造――三位一体の脳  
脳は不眠不休でストレス対応に当たっている  
ストレス過多の脳は「戦うか逃げるか」  
脳はどのように覚醒状態を調整しているのか
慢性的な覚醒状態を救う「セルフ・レグ」  
【コラム】親も「頑張らないと」に縛られている《オータム・12歳》  
セルフ・レグ 5つの基本ステップ  
私たちに必要なのは力ではなく安心だ 

第2章 セルフ・レグの視点でマシュマロ・テストを読み解く

自己調整 VS 自己制御  
マシュマロ・テストがセルフ・コントロール信仰を加速させる  
ストレスはセルフ・コントロール能力を奪う  
【コラム】マシュマロ・テストには予測できない未来《スティーヴン・0歳~高校生》  
「どうして、いま?」に答えを出す「リフレーミング」 

第3章 赤ちゃんに「ささいなこと」などない

ストレスへの反応性は1歳までに決まってしまう  
誕生とは、刺激の嵐に見舞われること  
【コラム】眠らない赤ちゃんの本音《メラニー・0歳》#1
赤ちゃんの睡眠と覚醒の関係  
へその緒から間脳への移行  
【コラム】眠らない赤ちゃんの本音《メラニー・0歳》#2
親と子は、間脳でつながる  
なにが間脳の交流の邪魔をするのか
 
第4章 絡み合ったストレスをほどく

ストレスの蜘蛛の巣にとらわれた子どもが増えている  
ストレスは5つの領域に分かれる  
【コラム】家族との食事を嫌がる少年の言い分《ダミアン・15歳》
親子でストレスを高め合わないために  
バオバブの木が教えてくれたこと  

PART2 5つのストレス領域を知る

第5章 生物学的領域――食べる・遊ぶ・寝る

「罰かご褒美か」から脱する  
【コラム】しつけが招いた悪循環《ロージー・10歳》#1
生物学的対応でイライラを断ち切る  
生物学的領域におけるセルフ・レグへの道のり  
【コラム】万人共通のリラックス法はない《ロージー・10歳》#2
  
第6章 情動の領域――泣く・笑う・騒ぐ・怒る

「なぜ興奮してるのか」を聞いても意味がない  
ポジティブな性向が情動を成長させる  
親の反応が、子どもの情動を形づくっていく  
情動を調整する「三つのR」  
【コラム】情動が不安定になるサインは「腕」に《ロージー・10歳》#3
子どもの情動の広がりを恐れない  
不安や恐れにも光を当てよう  
情動調整はふたり一組で  
「怒り」への対処法

第7章 認知的領域――記憶する・注意を払う・集中する

認知的領域の「根っこ」とは  
【コラム】数秒もじっとしていられない男の子《タイラー・5歳~7歳》#1
認知の根っこに働きかけるエクササイズ
パターンの学習で、認知的領域が発達する  
集中力の起点をつくるゲーム  
集中できない子は怠け者なのか  
「育児の常識」という思い込みを手放す  
注意障害における間脳の逆作用  
抽象的な言葉遣いに頼らない  
学習する姿勢を支えるのは安心感  
【コラム】〝13歳らしさ〟はひとつじゃない《タイラー・12歳~13歳》#2
「彼らが見ている世界」に寄り添って  

第8章 社会的領域――友達を作る・学校に通う・グループ活動に参加する

3人の幼稚園生と社会的スキルの観察  
脳のシステムが愛着や友情を育んでいる  
ボディランゲージは社会的脅威になりうる  
人は他人の脳を使って安心感を得る  
怯える子どもを社会参加に導くために  
社会的成長には、OFFの時間が欠かせない  
【コラム】小学5年生からの社会参加訓練《ジェイムズ・9歳~16歳》  
すべての子どもたちは社会的スキルを身につけられる  

第9章 向社会的領域――共感する・思いやる・敬う

向社会性と反社会性  
向社会的性格は植えつけるものではなく、育てるもの  
強制は恐怖しか残さない  
共感の経験が向社会性の基礎を作る  
なぜ我が子を傷つけてしまう親がいるのか  
「他者が抱えるストレス」からの影響  
人間は、歩く前から共感のやりとりをはじめている  
挨拶やスキンシップは人類共通の共感の源  
共感できる環境をつくるのはおとなの役割  
「私」から「私たち」中心の時間へ  
親のストレスが、子どもの向社会的成長を阻む  
親と子はお互いを成長させ合う  
みんなはひとりのために、ひとりはみんなのために  

PART3 思春期と付き合う

第10章 思春期の力と危機

思春期の子どもは「大胆な冒険者」だ  
思春期のストレスが増大している  
思春期の不安定さは、人類進化の代償か 
説明すればわかるはず、は通用しない  
〝ナイーブな思春期〟は医学的に証明されている  
社会的つながりがティーンエイジャーに安心を与える  
「顔を合わせる」時間の大切さ  
食事と運動と睡眠が育むストレス耐性  
ティーンエイジャーと親の距離感  
【コラム】過食の引きこもり少女を変えたもの《二クス・15歳~大学3年》  

第11章 子どもたちを虜にする刺激

退屈は気分ではなく生理現象  
ゲームにハマるのは神経科学の必然  
戦闘ゲームからジャンクフードへ  
刺激なだめるための刺激という連鎖  
【コラム】ポテトチップスを食べつづけても満たされない《ジョナ・9歳》  
自制心との戦いをやめるという合理的な選択  
「都市化」がもたらすストレス因子  

第12章 親にもセルフ・レグが必要だ――5つのストレス

(1)子どもが社会生活になじまない  
(2)子どもの不安の伝染  
(3)親同士の競争  
(4)子どもを虜にする刺激との攻防  
(5)子育てについてのレッテル貼り  

[まとめ] 子どものサインに気づき、セルフ・レグの習慣を育てる12の方法  

おわりに 

スチュアート・シャンカー
ヨーク大学(カナダ)名誉教授
専門は心理学と哲学。セルフ・レグの実践・普及をめざすMEHRITセンターの創設者。ユニセフ「乳幼児期の子どもの発達(ECD)協議会」前委員長。トロント大学にて学士号と修士号を取得。オックスフォード大学で哲学博士号を取得。国際的な実績を積み、カナダ、アメリカ各地のさまざまな政府機関にて乳幼児の発達に関する顧問を務めてきた

[2017年10月現在]

小佐田 愛子
翻訳者
大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)仏語学科卒業。英語科教諭を経て翻訳者に転身。実用、文芸問わず翻訳を手がけている。
[2017年10月現在]

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