パフォーマンス課題により活性化する学び
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執筆者: 流田 賢一
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単元名:和の文化大使になって、調べたことを紹介しよう 教材:「和の文化を受けつぐ」(東京書籍/5年)
「和の文化を受けつぐ」の授業づくりを紹介します。
本教材は、伝統的な文化の中でも子どもたちが想起しやすい「和菓子」を題材としており、今回は、「外国人に日本文化を紹介する」という言語活動に向けて説明文の工夫を学ぶ単元構想です。流田賢一先生(大阪市立堀川小学校)には、「パフォーマンス課題」の設定により、目的意識をもって子どもと共に学習を進めることができる実践を提案していただきました。
読むことと言語活動がうまくつながらない。
読んだことをどう表現させたらいいのか。
言語活動の評価を子どもといつ共有するのか。
国語の授業を考える際、上記のようなことを頭に巡らせていた。国語科で学んだことを実生活でも活用できる学びとしたい。そのためには、パフォーマンス課題を設定することで学びが変わっていくのではないかと実践した。
本単元「和の文化を受けつぐ」では、身に付けたい力を育むために、「和の文化大使になって日本の文化を紹介しよう」というパフォーマンス課題を取り入れる。
まず、本教材を読むことを通して、和の文化を伝えるための筆者の表現の工夫について学習する。叙述と写真や図を関連付けたり、接続語や文末表現の効果について考えたりしながら読み進めていく。また、単元の終末で自身が紹介する和の文化についての理解を深めるために、並行読書をしながら、目的に合った書籍や資料を読む活動を行う。その際、必要な事柄を抜き出し、後に活用することができるようにメモを取っておくようにする。最後に、自身が調べた和の文化についてまとめ、友達と紹介を聞き合い、和の文化についての理解を深められるようにする。
このように、本単元のねらいである「複数の本や資料を、目的を意識して読むことができる」「伝えたい内容や目的に合わせて、資料を活用して説明することができる」の2つを実現するのに適したパフォーマンス課題であると考える。
パフォーマンス課題の設定は以下のシナリオに基づいて考える。
<パフォーマンス課題のシナリオづくり>
上記の内容を全て入れ込む必要はないが、必要な項目を入れたパフォーマンス課題を設定することにより、真正の学びに近づくことができると考える。
<今回の実践:パフォーマンス課題のシナリオづくり>
これらをつなげて、子どもたちに下記のパフォーマンス課題を提示した。
日本には、海外からたくさんの方が来日しています。日本の子どもを代表して、来日した外国の方に日本の文化をビデオレターで紹介することになりました。説明文「和の文化を受けつぐ」で学習した構成を意識し、効果的な資料を活用してプレゼンテーションをしてください。完成したビデオレターは、海外の方に見ていただきます。
本単元は、「読むこと」と「話すこと・聞くこと」の複合領域単元である。言語活動として、興味をもった「和の文化」を1つ選び、「和の文化大使になって、調べたことを紹介しよう」という活動を位置付ける。子どもたちが日本の伝統的な文化を知らせようと意欲をもってこの学習に取り組むためには、伝える相手を明確にすることが必要だと考える。
そこで、訪日外国人の方に、子どもたち自身が「大使」として「和の文化」を伝えるビデオレターを作成するという言語活動を設定する。単元の終末には、観点に沿ったビデオレターの相互評価をする。その後、区役所の方にビデオレターを見せて意見をいただき、区役所で流していただけるよう依頼する。ビデオレター作成に向けて、文章の構成や資料の活用方法を、教材「和の文化を受けつぐ」から学習する。
本単元は、身に付けたい力として、「構成」「資料」「発表」の3つに有効な単元である。
構成
伝統的な文化の中でも子どもたちが想起しやすい「和菓子」を題材とした、序論・本論・結論が明確な説明文である。本論では、和菓子の「歴史」「他の文化との関わり」「文化を支えている人」の3つの視点に沿って論が進められている。結論では、「本論1〜3」を関係付けて「和の文化」を改めて見直し、「和菓子」以外の他の文化についても、大切に受けついでほしいことを読み取ることができる。このように、和菓子が今日まで発展しながら受け継がれてきたことが分かりやすく述べられた文章である。
資料
序論では、4枚の写真を掲載し、「和菓子」が和の文化の一つであることを説明している。「本論1」では、年表が掲載されており、文章と関連付けて資料を見ることで、今日の和菓子になるまでの経過をより分かりやすく読み手に伝えようとしている。「本論2」では、「他の文化」の一つである年中行事で食べられる和菓子の写真を掲載し、文章だけではイメージしづらい部分を補っている。「本論3」では、人の手が写り込んだ写真を用いることで、今日の和菓子を支えているのは、「和菓子を作る職人たち」「和菓子作りに関わる道具や材料を作る人たち」「食べる人」と本文にもあるように、「人」であると主張している。
発表
文章中の表現技法を活用できるようにしたい。読み手として説明文を読んでいるときには見えてこなかった筆者の表現の工夫に、書き手(表現者)となることによって気付くことができる。例えば、「〜でしょうか(問いかけ)」「〜しましょう(語りかけ)」という表現は、聞き手の注意を得ることができる利点がある。その他にも、「本論1」では「〜時代」や「一つ目は」「二つ目」「三つ目」と順序立てて述べられているため、資料の年表と見比べて、時間の移り変わりがより明確になっている。「本論2」では「例えば」と、具体例を挙げて説明する接続詞が使われている。「本論3」では「一方」という対比の接続詞によって、生産者側と消費者側の立場を明確にし、支える人の関わりについても述べられている。これらの表現を第Ⅲ次の言語活動に生かすことができる。
目的をもって「和の文化」に関する本を読み、資料を活用し、調べたことを効果的に伝えることができる。
〔知識及び技能〕
〔思考力、判断力、表現力等〕
〔学び向かう力、人間性等〕
第 一次 |
単元全体の流れを知る(第1・2時) |
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第 二次 |
容姿と表現の工夫について考え、本文と資料の関係について考える(第3~6時) |
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第 三次 |
和の文化について調べ、プレゼンテーションを作成し発表する(第7~14時) |
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要旨を捉えるためには、筆者の主張を読み取ることが必要である。基本文型を確認し、筆者がどのような論の展開によって、伝えているのかを確認することで筆者の伝え方の工夫を学ぶことができる。
要旨をまとめる学習を通して、自分たちが和の文化大使として何を伝えたいのかを考える思考活動を同時に行う。相手に理解してもらうために、筆者はどのような工夫をしているのかを書き手の立場から検討することで、自分たちの構成と主張を見直すことができる。
第三次では、説明文で学んだことを活用して、グループごとに和の文化について調べ、発表するという言語活動に取り組んだ。その中で、情報カード(和の文カード)を活用し、本やインターネットで調べたことを蓄積できるようにした。図書館で団体貸し出しをした本に、付箋を付けて後で見返すときに便利なようにした。多くの子どもが、本を活用して調べていた。
調べたことをもとに、話す内容を考える活動に入った。ここでは、聞き手を意識した話し方ができるように説明文から「語りかけ」「問いかけ」がどのように使われているのかを整理した。また、分かりやすい説明の仕方として、具体と抽象の関係、接続後やナンバリングの確認をし、話すときの参考とした。この話すメモの中には、資料を見せるタイミングや、資料を見せる時間を記入するように助言した。この発表原稿は、各自で担当部分を作成するが、最終的にはグループ全員で読み合わせをし、接続語やナンバリングなどの言葉を含めて推敲する時間を確保した。
ビデオレターは5分以内で設定した。その中で、自分たちが伝えたいことが伝わるために、工夫して話せるようにした。「話すこと・聞くこと」では相手意識として、難しい言葉に説明を入れること、資料に注目できる時間を作ること、そして相手の反応を見ながら話すことを確認した。
説明文からの学習を通して、身に付いた力を活用し、子どもができるようになったことを評価した。「話すこと・聞くこと」の単元では、子どもの発表が残らずに評価しにくいこともあるが、今回はビデオレターの方式をとったため、全班の内容が映像で残っており、後から見返すこともできる点で有効であった。
パフォーマンス課題を子どもたちと共有することで、ゴールイメージをもつことができ、常に目的を意識しながら学習を進めることができた。パフォーマンス課題の内容には、子どもの役割や伝える相手も示されているため、「読むこと」にも「話すこと・聞くこと」にもつながる学びとなった。
課題を共有することで、評価についても子どもと共有しながら進め、ルーブリックを一緒に作成した。このことにより、学びの方向性が揃い、自己評価・相互評価を充実させることができた。
〔引用・参考文献〕
流田賢一(2022/11/7公開)言語活動に取り組む先生のためのサイトTEAChannel「小5・国語 『和の文化を受けつぐ ―和菓子をさぐる』 ICTを活用した授業と家庭学習の接続」日本漢字能力検定協会
奥村好美、西岡加恵編著(2020)『「逆向き設計」実践ガイドブック: 「理解をもたらすカリキュラム設計」を読む・活かす・共有する』流田賢一(p62-71)日本標準
流田 賢一(ながれだ・けんいち)
大阪府・大阪市立堀川小学校
全国国語授業研究会理事/柏葉の会
文学の授業における、初発の感想を書かせるという活動に替わるものとして、「読後感」を書くという実践を以前掲載した。これを基にした授業づくりについてこれから述べていきたい。 文学作品に出合ったときの新鮮な気持ちを大切にしたいと思う。教師主導で学習課題を設定することもあるだろうが、やはり子どもが自ら読んでいくための問いをもてるようにするためにはどうしたらよいかと考えたとき、読後感から問いをつくっていくということは、その1つの方法であると考える。
記事を読む今回は、田中元康先生(高知県・高知大学教職大学院教授/高知大学教育学部附属小学校教諭)に、教材「インターネットは冒険だ」(東京書籍・5年)の授業づくりの工夫について、紹介していただきます。説明文の学習で当たり前のように行われる「要旨をまとめる」とはどういうことなのか。あらためてその意味や方法を確認しながら学ぶことで、汎用的な読みの力が育ちます。
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