よりよい学級経営を目指すために読みたい本

執筆者: 三浦史聖

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四月を迎え、新たな学級について想像を膨らませます。「こんな学級にしたいな」「子供たちがこんな風に成長してくれたらいいな」とよい学級を目指して意気込むでしょう。

前向きな気持ちをもって勢いよくスタートしたい四月ですが、一歩立ち止まって『よい学級』とはなんだろうと抽象的な言葉に目を向けたいと思います。実際には、目指していた学級とは異なった学級になっていくこともあります。想像していた以上に学級が成長を見せていることもあります。年度の途中で「これが自分の目指していた学級なのか」と振り返ることもあります。

目指した学級に近付いていくためには、このぼんやりとした学級像の解像度を上げる必要があるのではないでしょうか。自分が目指す学級はどういうものなのか、どのように作り上げていくのかといった学級の具体像をはっきりさせるためのヒントとなる本を紹介したいと思います。

白松賢先生(2017)は「学級経営の教科書」(東洋館出版社)で、学級経営には三領域が存在し、そのうちの学級にあたたかさをつくる必然的領域が土台となると述べています。ここでは学級経営の土台づくりから、子供同士の関わりや授業へと広げていくことを意識して5冊の教育書を紹介したいと思います。

教師は、どの子にも熱心に学習に取り組み、友達とよい人間関係を築いてほしいと願っているはずです。その願いを実現するために、私たち教師にできることは何でしょうか。それを知るために、そしてできているかを確かめるために、私は繰り返し本を開いて振り返っています。

多様な子供たちが集う教室では、学習に後ろ向きだったり、関係づくりがうまくいかなかったりする子供もいます。その背景には、恥ずかしさや劣等感、不安感と理由も様々です。そのような教室で、私たち教師が発する一言は子供の背景に配慮しているでしょうか。指導は子供にとって認めてもらえたという実感があるでしょうか。私たちの在り方や関わり方、子供同士の関係が絡み合ったものが学級の土台となっていきます。

そういった「人的環境」を見直し、あたたかい教室をつくるための専門的な視点や支援を知ることができるのが、この教育書です。

学級の雰囲気や子供たちの姿に課題が見えたとき、明日からのヒントを授けてくれます。安心して学ぶことができる学級を目指して、手に取って一度読むだけではなく、復読してほしい一冊です。

この書名を見て小学校教員である私は、思わず手に取りました。なぜなら、「言葉を育てる」というフレーズが小学校にも通ずる大きな課題であると実感していたからです。小学校にも言葉の課題が多く存在します。語彙の習得から友達とのトラブル解決まで、様々な場面で言葉を育てる必要性を実感しているのではないでしょうか。言葉が育つことは、学習の幅が広がり、よりよい人間関係を築くことに直結するはずなのです。

「言葉を育てる」ためのQ&Aや言葉あそびなどが紹介されています。

  • 集まった場所で話を聞かないのはなぜ?
  • 文字に興味や関心をもたせる環境構成とは?
  • ほかの子供の言い間違いを指摘する子への対応は?

3つのギモンを取り上げましたが、これだけでも小学校でも実用性が高いことが分かるのではないでしょうか。

保育者の方々は、発達段階や個々の実態を配慮した「子供に合わせた」対応をされています。成果を焦ることなく、子供の今を理解して指導をしていくことが大切なのだと再確認できました。子供にかける言葉や対応から、あたたかさが伝わるのです。どのような子供たちも、よりよい学校生活を送る助けとなるような支援を心がけていきたいものです。

学級を安定させたい、どの子供にも活躍してほしいなどの担任としての願いがあります。それらを実現するためには具体的にどうしたらよいのでしょうか。その解決の一助となるように、本書をおすすめします。

子供との信頼関係づくりはとても大切です。信頼関係があるかどうかで同じ指導でも効果が異なる経験をしたことはありませんか。信頼関係をつくりあげていくことが、朗らかで明るい学級へとつながります。そのための教師の考えや態度、子供への指導の心得が、実体験をもとに語られています。

例えば、「叱る」指導一つをとっても、信頼関係の構築につながります。ただ感情的に叱れば、崩れていくこともあるでしょう。「叱る」ことも教育の手法であると強く認識しておく必要があります。子供たちの成長につながるように、信頼関係がつくられるように、意図をもって指導することを心がけたいと改めて感じました。

この一冊からは、どの項目においても教師と子供が共に学級をつくろうとする雰囲気が伝わります。教師の指導が決して上から目線ではなく、子供に寄り添っているのです。教師も間違えれば謝り、反省して次に生かします。まさに子供と一緒に成長する教師の姿がうかがえます。

「かかわり言葉」は、人と人をつなげ、学級をつくる助けをします。よりよい人間関係を築くために、教師が問いかける言葉や、子供に身に付けてほしい言葉のことです。学校では、あらゆる場面で言葉を使って人と関わります。遊びも、学習も、指導にも言葉が使われます。それらの場面で「かかわり言葉」を与え、学級を育てるのです。

私はここで書かれている指導の一つ一つにあたたかさを感じました。規律ある学級をつくることは時として厳しく指導しなければならないこともあります。優しさと甘さの境目があいまいになり、見逃してしまわないようにきちんとした指導が必要です。

「かかわり言葉」は、子供に寄り添ったり、気持ちを尊重したりしながら指導することができます。そうしてあたたかさと厳しさが両立した教室がつくられていくのです。あたたかく納得感ある指導の大切さを教わります。

また、「かかわり言葉」は学習でも子供同士をつなぎます。その一例である三人指名は、一度に三人を指名して発言していく手法です。三人の関わりを可視化することで、発言していない子供たちを傍観者から参加者と変えていくのです。言葉を通して人と関わり、思考力を鍛え、聞く力を育てます。

人と関わることで成長し合う学級風土を培う術を学ぶことができる一冊です。

学校生活の大半は授業の時間が占めます。だからこそ学校を楽しく、充実した場所にするためには授業を大事にする必要があると誰しもが教わったのではないでしょうか。ここでは、その多大な時間を費やす授業に、学級づくり上のねらいももつべきであると主張されています。「学級づくりと授業づくりは両輪だ」を本当の意味で実現する学級経営について考えさせてくれます。確かにこれまで、学級がうまくいかないとき、授業以外の時間の指導を課題に挙げ、授業がうまくいかないとき、授業中の指導や教材研究を課題に挙げていました。それぞれが別の場面や要因、解決方法が語られることが多いのです。これが無意識に切り離していた表れなのだと思いました。授業を通して子供を育て、学級を育てる考え方や方法について、整理された理論と段階的な手順、そして多方向からの視点を大事にした具体的な指導が書かれています。その丁寧で分かりやすい説明には、大きな納得感があります。そして、私にもできそうだ、こうしてみたらよいかもしれないと前向きな実践意欲を沸々と湧きあがらせるのです。学級経営をする者として、この一冊が教えてくれることは常に心に留めておかなければならないと強く感じます。

三浦史聖(みうら・ふみあき)

1994年生まれ。川崎市立西有馬小学校教諭。