学級開きの総点検!何をどう見とる?

執筆者: 郡司竜平

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『イラストで見る 全活動・全行事の学級経営のすべて 小学校2年』の執筆メンバーによる「学級経営」web連載。5月は日本最北の公立大学で保育を学ぶ学生さんたちと、特別支援教育のあれやこれやを一緒に悩み考えている郡司竜平が担当させていただきます。

 一昨年度までの10数年は主に知的発達に遅れのある児童生徒さんを主な対象とする特別支援学校で教員をしていました。それ以前は特別支援学級、通常級を担当する教員でした。落ち着きがないのか、いろいろなことに興味があるのか、多角的に物事を見たいのか、衝動性が強いのか、私自身のこれまでの職歴一つでもいろいろな表現ができそうですね。これまでの職歴もあってか、このチーム2年生では主に特別支援教育からの視点で「学級」を見たときに必要なこと、大切なことをお伝えするのが私の役割なのかなと勝手に考えているところです。


さて、1年間を通した学級経営の中で5月は渡辺先生曰く「『第2の学級開き』と表現をする人もいる」(「イラストで見る全活動・全行事の学級経営のすべて 小学校2年」p.60より(以下 「小2経営本」と略す))重要な位置づけになります。

新学期がスタートしてはや1ヶ月。皆さんは目の前の子どもたちとどのように関わり、どのような学級経営を展開されているでしょうか。今こちらを読んでくださっている中には1日を過ごす流れがやっと掴めてきた初任の先生から、学校をバリバリ引っ張っている中堅の先生、そして、私などよりもずっと教職経験が豊かな先生までいらっしゃることかと思います。それぞれが日々子どもたちと向き合い生活していく中で課題も見えてきた時期かと思います。私の拙い経験の中からではありますが、何か一つでも日々の課題を解決するきっかけになれば嬉しいかぎりです。

「小2経営本」の新年度チェックリスト例では渡辺先生が「8.クラスの仕組み・ルール」(p.14-15)として25の具体を挙げています。これらのチェックリストのうち現在までに、クラスの仕組み・ルールとしていくつ動き始めているでしょうか。仕組みの基礎をつくるためのポイントもまた渡辺先生が示していますね(p.20-21)。まずはここを参考にクラスの仕組み・ルールづくりをされていることと思います。


ここで一つだけ注意が必要なポイントがあることをお伝えします。それは「前年度からのゆるやかな接続を意識する」ことです。新たに担任した学級で先生たちはご自身の考えた学級経営を可能な限り順調に進めていくためにルールや仕組みを整えたいでしょう。新たに決める仕組みやルールが多くなるかもしれません。でも、クラスの子どもたちにとってはどうでしょう。編成替えをし、担任の先生が新しくなり、友達も新しくなり、仕組みもルールも新しくなる。多くの子たちは順応できるのかもしれません。でもなかにはすべてを理解し、順応するまでに時間がかかる子たちがいるのです。一つひとつの活動に見通しをもち、安心して学級にいられるために、もしかしたら前年度から継続できる仕組みやルールがあるかもしれません。すべてを新しくするのではなくマイナーチェンジぐらいにするぐらいで仕組みとして機能するものがあるかもしれません。先生が全体を見渡して、学級の中心からちょっとだけ距離を置いている子どもたちの様子を気にかけていただけると、気づくものがありそうです。

では、そのような子どもたちに気づくにはどうしたらよいのでしょうか。

仕組みやルールづくりの過程では、話し合い活動が活発に展開されているのではないでしょうか。子どもたちが活動する様子の中で、一つヒントになりそうなのが「挙手」です。湯澤先生たちの研究から「ワーキングメモリの相対的に小さい児童の授業態度は、個人によって違いが見られたが、挙手をほとんどしない児童が含まれ、全般に、課題や教材について教師の説明や、他児の発言を聞くことが容易でないことが示唆された」(湯澤他,2013)ことがわかります。このことを踏まえて「挙手」の様子を見ることで、先生が提示した新たな仕組みやルールを理解するのに苦労している子に気づくことができるかもしれません。

また、仕組みやルールづくりのための話し合い活動で他児の発言を聞くことが追いついていない子に気づくことができるかもしれません。この子たちは決して積極的に自ら先生の仕組みやルールと距離を置いているのではありません。もしかしたら担任している子どもたちの中に、このような子どもたちがいるかもしれないという前提にたっていただければと思います。そして、このような子どもたちを含めて先生が考えている学級経営を進めるためには、「ゆるやかな接続」を意識し、新たな仕組みやルールばかりで学級を溢れさせないことが大切だと私は考えています。

学級経営の核となる仕組みやルールをしっかりと根づかせた上で、枝葉の仕組みやルールづくりをじっくりとみんなが理解できる形で進めていただけるときっと先生たちが考えている学級になっていくのではないでしょうか。

また、ワーキングメモリについてさらに詳しく知りたい方はぜひ参考文献をお読みいただければと思います。

小2経営本では、5月は「ひらがな書けるかな」のテーマで先生たちに学級経営上で着目してほしいポイントを提案させていただきました(p.61)。今回は2年生だけではなく全学年が対象ということで、「挙手」を一つのきっかけにして気づきがあればとの思いでご紹介させていただきました。GW明け、私が住む北海道の多くの学校では体育的な行事に向けての取り組みがスタートします。学級での生活が慌ただしくなる5月だからこそ子どもたちの何気ない日常に丁寧に寄り添いながら学級運営につなげていただければ嬉しいです。


さて、次回は藤原友和先生による夏休みの学びです。2期4ステージ制での取り組み、自己をプロデュースとはどのようなことなのでしょうか。子どもたちの学びをいつも計画的に仕掛ける藤原先生の深くて面白いお話です。