「夏休みは「自立」のチャンス!『自己プロデュース』をプロデュース!」

執筆者: 藤原友和

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みなさんこんにちは。北海道で小学校の教員をしている藤原友和(ふじわら・ともかず)と申します。教職経験は24年目を迎えました。分掌は研修部が多かったです。ただ、赴任先には小さな学校が多かったので、分掌に関わらずいろんな仕事が回ってきます。そう。みなさんと同じように……。


さて、今回は題名の通り、夏休み中の家庭学習についての提案です。「研修部の経験が多い」と申し上げましたように、ここ数年は9割方、研修部でした。その中で取り組んできた「家庭学習の研究」の中で見えてきたことをお伝えしようと思います。どうぞよろしくお願いします。


「え? 校内研究で宿題のことなんて扱うの…?」と思った読者のアナタ!そうなんです。「宿題を校内研究で扱った」のです。では、はじまりはじまり〜。

(1) 明確だった学校課題

みなさんの勤務校でも「学校評価」ってありますよね?いわゆるPDCAサイクルを回して学校改善を進めていくための枠組みです。勤務校では、中間評価アンケートと年度末アンケートを児童・保護者・教職員それぞれを対象に実施します。年度当初に校長から示される学校経営方針に基づいて職員が取り組んできた活動の成果と課題を「見える化」して、改善のためにどんなことにどのような取り組みを進めていくかについて話し合う、という建て付けのアレです。


実は、勤務校の学校課題は明確でした。数年来、「家庭学習の定着が不十分である」ということが、アンケートを集計するたびに見出されていたのです。とはいえ、ねぇ…。学校改善のために学校の仕事を改善するというのなら話はわかります。しかし、「家庭」学習です。どこまで学校の教育活動が影響するだろうか、宿題で追い込んで学ぶのが苦痛になってしまったら本末転倒ではないかなどと、私たちは頭を悩ませていました。

(2) そこで考えたアプローチ

私たちが取ったアプローチは以下の3つでした。

① 家庭学習に繋がる授業のあり方を考えよう。

② ICTを活用して、子ども一人ひとりの興味関心を生かせるようにしよう。

③ 教育課程と連動させ、地域の教育力を生かそう。

まず一つ目の「家庭学習につながる授業のあり方」ですが、たどり着いた方法の一つが「反転学習」の発想を取り入れることでした。

反転学習は、あらかじめ授業の内容を動画で試聴してくることになっています。そして授業では疑問点の解決に時間を使うという方法です。これを応用して、学校ではオリエンテーションとして、学びへの動機づけと進め方を指導します。


そして、二つ目の「ICTの活用」に関わって、家で「1人1台端末」等を活用して調べ学習に取り組んでいきます。各自の学習成果をもち寄って教室で学び深めを行い、さらに詳しく家で調べてくる…。こういったサイクルによる単元デザインに取り組むこととしました。相性がよいのは「総合的な学習の時間」です。


さらに三つ目が「地域の教育力の活用」です。勤務校が位置する函館市は、函館市教育委員会の主導によりすべての小中学校がコミュニティスクールとして地域と共にある学校を目指した取り組みを開始しました。その甲斐があって、ゲストティーチャーの情報は組織的に共有されていますし、各学級ではそれぞれ特色ある教育活動に取り組むことができています。①で示した「動機づけ」がしやすい環境が整っているといえます。


加えて、これらをすべて校内研修に位置づけました。研究主題を「地域教育資源を活用した『個別最適な学び』の工夫〜家庭・地域と連携し、授業と家庭学習の連続性を意識した取り組みを通して〜」として、上記①〜③を構造図に整理しています。

図1 研究構造図を掲載した研修部通信

図1 研究構造図を掲載した研修部通信

 (1) 2期4ステージという考え方〜夏休みは「ワクワクステージ」の継続期間〜

そろそろ「あれ? 校内研究の話? 夏休みの宿題はどこにいった!」と思われる方がいるでしょう!ごめんなさい!まだそこまで辿り着きません。

なぜかというと「夏休みの家庭学習を自己プロデュース」できる子どもにするための枠組みの話をしているからです!ネタやスキルでは「自己プロデュース」の域には辿り着きません。


前項の③、「教育課程との連動」の話をもう少し続けます。勤務校は「2期4ステージ制」を採用しています。その構成は以下のように前後期をそれぞれ二つに分けたものになっており、ステージごとの重点を設定しています。

【前期】

「しっかりステージ」(4〜6月)…「学び方のルール」を定着させる。

「わくわくステージ」(7〜9月)…「体験的な学び」を重視し、様々な対象と関わる。

【後期】

「じっくりステージ」(10〜12月)…前期を受けて、さらに「学習の深化」を目指す。

「しっかりステージ」(1〜3月)…学年のまとめを行い、次学年での目標をもつ。

教育課程はこの考え方によって編成しています。そうすると、夏休みは前期「わくわくステージ」の間に入ります。これが仮に3学期制だと、夏休みは1学期が終わったところで突入します。ふう、やれやれ。一区切りだ。遊ぶぞー、となりますよね。


しかし、夏休みがステージの「間」にあることによって意識が変わります。そう、「夏休みも体験的な学びが継続する期間」となるのです。体験的な学びですよ?ドリルや日記ではないですよ?夏休みにしか味わえない学びにたっぷりと浸ることができるのです。いや、これは裏返せば学びと遊びが一体となるような学び方を夏休み前までにしておこうねって話になりますので、決してレベルは低くない!むしろ難しい!


でも大丈夫。校内研修で扱っていますから。勤務校では初任段階の先生も、同僚や管理職と相談しながらとても素敵な実践をしています。「一人では無理でもみんなならできる!」です。

(2)実践例「道南の魅力見つけ隊」について

では、具体的にはどんな仕掛けになるでしょうか。私の実践を紹介します。以下、図2に示す「総合的な学習の時間」を中心とした教科横断的な単元です。

図2 単元「道南の魅力見つけ隊」単元モデル

本単元では、国語科でレポートや紹介文の書き方、地域のよさを伝えるプレゼンテーションの進め方などのスキルを学びます。そして、道徳科では地域素材を元に開発した教材で授業を行い、対象への興味関心を引き出します。そして総合的な学習の時間及び特別活動で現地を訪れ、実物に触れながら探究的な学びを進めていきます。


ここで問題です。夏休みまでにスキルを身につけた子どもたちは、夏休み後にまとめる探究レポートの執筆材料にするために、夏休み中にはどんな行動をとると思われますか?

 

 そうです。「もう一度現地を訪れる」「図書館に行って追加調査を行う」「探究活動の途中で気になったものを調べてみる」など、学びを継続しますよね!「そんな上手い話はあるかい」と思った人!その気持ちもわかります。しかし、クラスで応募した「第6回 函館市図書館を使った調べる学習コンクール」では、クラス全員が応募し、団体賞をいただくことができました。

「なんで6月に夏休みの学習なの? 早すぎない?」と思われた方は多いと思います。

そして、ここまで読み進めてくださったあなたならその意味はもう伝わっているのではないでしょうか。そうです。「夏休みの直前になってから夏休みの宿題のことを考えだしても遅い」のです。せいぜい、ドリル選びくらいしかできることはありません。


本稿でお伝えしたかったことは、「夏休みまでに学習力をつけ、その学習力が発揮される仕掛けを意図的・計画的につくることが効果的であり、必要」というものでした。題名にある「プロデュース」という語には、そのマネジメント感覚の重要性を込めたつもりです。

そう考えると、夏休みの始まるひと月前のこの時期、そろそろ1学期の評価も気になり出しているとは思いますが、今が仕掛け時ではないでしょうか。子どもが自分の学びをプロデュースできるようにするには、そのための知識と方法とを渡しておくことが大前提であるように思います。