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書かない板書—子どもの思考を引き出す「余白」をつくる - 東洋館出版社
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書かない板書—子どもの思考を引き出す「余白」をつくる

ISBN: 9784491047270

沼田 拓弥/著

セール価格 1,980(税込)
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タイプ: 書籍

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商品説明
あえて「書かない」ことで、子どもの思考を引き出す板書の余白をつくる
  • 授業が終わった時に「書きすぎてしまった」と反省することがある。
  • 授業中、子どもの発言をどこまで書けばよいのか迷ってしまうことがある。
  • 板書をノートに全部写させるべきなのか悩むことがある。
  • 教えたいことを書き残すだけの板書になってしまうことがある。

このようなお悩みを解決するヒントになる考え方があります。
それは、授業のねらいに沿って「あえて書かない」部分を決める「書かない板書」です。

板書は「何を書くか」よりも、「何を書かないか」の方が重要

板書計画をどのように立てていますか?
「ここに『めあて』を書いて、このあたりに『発問』を書いて、そのあとに『子どもの発言』を書いて、最後に『まとめ』を書いて……」
このように「何を書くか」という観点から計画を立てられる方が多いのではないでしょうか。
これは授業の流れをあらかじめ見通せて、学習内容を整理することに長けた板書を計画する際に有効な考え方でしょう。
一方で、「何を書くか」ばかりを考えてしまうと、結果的に教師主導の授業に傾いていってしまったり、単純に「書きすぎてしまう」ことになったりします。

そもそも板書を書きすぎてしまうことの弊害とはなんでしょうか?
例えば、授業のまとめの場面。1時間の授業のまとめを教師が書き、「今日は、〇〇ということがよくわかりましたね」と教師が声をかけます。

この時、本当にわかっているのかは、子どもたちに委ねられている部分です。
しかし、板書で教師がまとめを書き、一様に確認することで、「わかったつもり」を生んでしまうことがあります。
このような「わかったつもり」を生まないためには、教師が本当に教えたいところ、子どもたちに考えさせたいところはあえて「書かない」で、子どもに考えることを促し、最終的には「子どもの言葉」でまとめることが大事です。
教師が教えたいことを子どもに伝えて、「わかった」と感じさせるのではなく、教師がヒントを出して、子どもに「わかった」を体感させることが重要なのです。
教師が書きすぎることで、時に子どもたちの思考の「余地」を奪ってしまうこともあります。
子どもを信じて書かないことで、実は子どもの理解が深まることがあるのです。

「書かない」ことを意識することで、板書は思考ツールとなる

余白をつくることによって、板書は思考ツールとして有効に働きます。
実は先生方の多くも、無意識のうちに「書かない」場所をつくっているはずです。
教師の手で書かず、子どもに託して考えさせる場面は、まさに「書かない板書」の姿そのものです。
では、なぜ、そこを「書かない」で、子どもに委ねようと考えたのでしょうか?
そこを「書かない」ことで、子どもにどのような力を付けられるのでしょうか?

「書かない」部分のねらいや機能について、自覚的になるだけでその効果はぐっと高まります。

この「書かない」部分に焦点を当て、「板書に残された『余白』によって、思考を加速させる板書」としての「書かない板書」を沼田拓弥先生(八王子市立第三小学校教諭)が整理しました。
沼田先生によると、「書かない板書」には子どもの4つの思考を働かせる機能があります。

  • 関連付け
    ――情報を関連付ける視点を得られるように促す
  • 分類
    ――情報の規則性を見つけるように促す
  • 抽象化・具体化
    ――学んだことを活用できるように促す
  • 類推・添加・削除
    ――学習内容を自分に引き付け、創造的な思考を促す

この4つの機能を意識して、「書かない」部分を決めるだけで、板書を通して子どもの論理的思考力を働かせることができるのです。

「書かない板書」で引き出す子どもの学び

「書かない板書」は実際にどのように授業で活用されているのでしょうか。
沼田先生の国語授業をのぞいてみます。

1年生の「くちばし」(光村図書)での一場面です。 きつつき、おうむ、はちどりのくちばしについて、文章に書かれている内容を全体で確認しています。 どんなことが書かれているのかを子どもの発言をもとに整理していきます。

沼田先生は子どもたちの発言を淡々と受け止めつつ、「かたち」「やくめ・やくわり」「たべるもの」の3つの観点にこっそりと分類して板書していきます。 この段階では、まだ子どもたちは分類を意識して発言していないので、このように整理して板書していくと抜ける部分が出てきます。

子どもたちが書かれた部分に注目している中、沼田先生は「はちどり」の空いている部分を指して、このように問います。

「ここには何か言葉が入りそうですか?きつつきやおうむを参考に考えてみましょう」
子どもたちは、きつつきやおうむの枠に書かれている言葉を頼りにしながら、はちどりの枠に入る言葉を考え始めます。自然とほかの情報と比較し、関連付け始めるのです。
中には、「かたち」や「たべるもの」の部分にも目を向け、なんのかたまりになっているのか考えようとする姿も見られます。

そこで、今度は横の関わりを示しながら、このように問います。

「ここを一言でまとめるとどんな言葉になりますか」
ここまで自分たちで考えてきている子どもたちはすぐに「かたち」「やくめ」「たべるもの」といったキーワードを発言しました。

このように「書かれていない」部分に着目するだけで思考が働き、子どもたちは「文章に書かれている内容を知る」だけでなく、「情報を関連付けて、比較し、分類」し、「分かった」を体感できるのです。

「書かない板書」の戦略と戦術

ここまで見てきたように、「書かない板書」は単純に「教えたいところを書かない」「考えさせたいところを書かない」にとどまる手法ではありません。
手法だけをなぞり、「書かない」だけでは成立しません。
「書かない板書」には戦略と戦術が必要です。そして、戦略と戦術は「練られる」ものです。
効果的かつ意識的に「書かない板書」を活用するには、今回紹介したことのほかに考えておきたい、これまでも論じられてきた板書の課題があります。
そういった板書の課題や「書かない板書」の機能をもとに、戦略を練り、戦術としての「しかけ」をちりばめるのです。

このような「書かない板書」について、沼田先生が丁寧に1冊に整理されました。
沼田先生はこれまでに「立体型板書」を提案してきました。一見すると、「立体型板書」は「書かない板書」と相反するものに見えますが、実は「立体型板書」も「書かない板書」なのです。
みなさんも一緒に板書の意味や役割を見つめ直し、「書かない」部分に注目してみませんか?