1人1台端末時代に求められる「10X 授業」を板書シリーズの実践をもとに提案!『小学校・中学校 Google Workspace for Educationで創る10X授業のすべて』
1人1台端末時代に求められる10X授業とは?
GIGAスクール構想によって、全国津々浦々、児童生徒向け1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークの一体的な環境整備が完了しました。令和3 年度からはいよいよ、学校教育がこれまでとは劇的に変わり始めます。すでに最先端のICT を取り入れた授業に対応するため、ICT 機器活用の研修を受講された先生方も多いことでしょう。
この教育の技術革新は、「多様な子どもたちを誰一人取り残すことのない公正に個別最適化された学びや創造性を育む学びにも寄与するもの」であり、「特別な支援が必要な子どもたちの可能性も大きく広げるもの」です。
では、教育・授業はどう変わっていくのでしょうか?
本書では、1人1台端末時代に求められる授業を「10X授業」と名づけました。
「10X 授業」の定義
例えば、Google マップのストリート ビューは「どこでもドア」。瞬時に修学旅行先の様子を3D で疑似体験できます。Google Meet もまた、離れた場所にいる人と顔を見て話すことができる「どこでもドア」です。この「どこでもドア」を使ってどこへ行くのか、何ができるのか? ワクワクしてきませんか? これは、使う人のビジョンによってまったく変わってくるはずです。
学習環境にGoogle Workspace for Education のツールを効果的に取り入れることで、10倍の成果をもたらすイノベーションを起こすことができます。ぜひ、高い理想を掲げて教育に利活用していきましょう。
Google Workspace for Educationとは?
Google Workspace for Education とは、Google が提供する、複数のツールをまとめた学校向けサービスの総称で、時間や場所を問わず、教員だけでなく児童生徒、さらには保護者も共同利用することができます。2021年2月にサービスを一新し、「Google Workspace for Education」という名称になりました。下の図 に示したように、合計14 のアプリがすべてのエディションで利用できるようパッケージされています。
GIGA スクール構想により、Google のChrome OS を搭載した端末、Chromebook の導入が急増しました。これまでに700 以上の教育委員会がChromebook を採用し、併せてChromebook を導入していない自治体も含め、GIGA スクール構想でICT 環境を整備している自治体全体の半数以上がGoogle Workspace for Education を導入しています。
授業を10X するアプリの選び方とは?
Google Workspace for Education のアプリ群にはよく似ている機能を持つものがあります。例えば、本書では小学1 年生の「生活科: 元気にそだてわたしのアサガオ」という単元があります。これまでの「アサガオの成長記録」をまとめようとするとき、どんなアプリを選べばいいでしょうか?
実は、正解は一つではありません。もっと言えば、Jamboard (デジタル ホワイトボード アプリ)でもGoogle スライド(プレゼンテーション アプリ)でも、Google ドキュメント(文書作成 アプリ)でもGoogle Keep (デジタル メモ アプリ)でも、どれを使っても正解です。
「えっ! それは困る……。同じようなアプリが四つもあるんですか?」
そう戸惑われる方も多いかもしれません。しかし、もっとも簡単で、低学年でも直感的に使えるアプリがGoogle Keep です。そこでまずは、Keep を使った授業デザインをご紹介しましょう。「なぜKeep なのか?」と言うと、写真と関連するメモをもっとも簡単に作成できるからです。1枚のメモに複数の写真を紐付けることができます。さらに、スマホ、iPad、Android タブレットでは音声入力が使えますので、低学年でも入力の負荷がかかりません。
「アサガオの成長記録をまとめる」という単元では、アサガオと自分との関わりや、長期間に渡るアサガオと自分の成長を振り返ること、感じたり考えたりしたことを自分の言葉で表現できることが目的となります。
授業の流れの中で、もっとも時間をかけたいのは、どこでしょうか。成果(主体的・対話的で深い学び)を意識すれば、まとめた記録用紙を見返して気が付いたことを班で話し合う場面。そして、班で話した内容を児童がまとめ、最後に全体で振り返りをする場面となるでしょう。この時間を増やすために、ICT ツールを活用します。
まず、従来の「板書シリーズ」ではこれまでの記録を綴じて本にする活動を行っていました。Keep を取り入れると、この活動はどうなるでしょうか? 本時の活動を見越して、用紙に観察記録を記入したときにそれを撮影し、画像として保存するようにしておきます。Keep を立ち上げた後、教室での児童への指示は、次の4 ステップで完了です。
- [メモ]にアサガオの観察記録を取り込む。
- 誰のものか分かるように、[メモ]の[タイトル]に名前を入力する。
- 教師も確認できるように、「共有」を設定する。
- [メモ]にまとめを入力する。
具体的な操作に関しては、次の図をご覧ください。デバイスやアプリの操作に慣れるまでは時間がかかるかもしれませんが、数週間もするとすっかり慣れて、数分で発表の下準備ができてしまうので、節約できた時間を対話にあてることができます。
教師は、大型提示装置で自分のKeep を表示しながら、発表してほしい児童のまとめや画像を投影し「共有」します。
後日、教師は各児童の[メモ]にコメントを入れることができます。さらに、[共同編集者]に保護者を追加することも可能です。すると、保護者にも児童の活動を確認してもらうことができます。共有すると、共有者のアイコンが表示され、すぐにお互いに分かります。保護者から、我が子に向けてのコメントを入れてもらうことで、これまでにはない魅力(ワクワク)が、児童にも保護者にも生まれます。
授業の準備は、Chromebook とこれまでの観察記録のみでOK。板書する時間も半減。その分、対話とそれを受けての追記、そして発表の時間に多くの時間をかけることができます。Keep ではなく、スライドを使えば、プレゼンテーション アプリなので、発表する際にスライドを順序立てて話すことができます。またJamboard はホワイトボードのように付箋や画像、手書きテキストなどを[フレーム]上に追加できます。班のメンバーに気付いた点をどんどん意見してもらうのには最適です。ドキュメントは、中・高学年向けです。レポートとしてまとめる場合に最適です。
つまり、単元の目標を達成し、魅力、成果、効果をそれぞれ10X するために、どのアプリを使ってもいいのです。迷ったら、使いやすいもの、簡単なアプリを選んでください。それでまったく問題ありません。使ううちにどのアプリがどんな活動に適しているのか分かってきます。まずは一つのアプリを授業で使ってみることから始めましょう!
「10X 授業10 の型」とは何か?
一つのアプリには、さまざまな機能が備わっています。Google Meet の「ビデオ会議システム」のように、特定のアプリにしか備わっていない機能もあれば、多くのアプリに共通して搭載されている、リアルタイムで共同編集ができる「共有」などの機能もあります。
そのため、先ほども述べたとおり、どんなアプリを使っても同じような結果を出せる場合もあるわけですが、やはり基本となる活用方法をいくつか押さえておいたほうが、スピーディーに10X 授業をデザインできるはずです。
そこで本書では、Google Workspace for Education のアプリごとに活用方法を解説するのではなく、アプリ群に搭載されている機能そのものに着目しました。そして、授業に活用できる機能から導き出したのが、以下になります。
あくまでこの分類は、ICT ツール、すなわちGoogle Workspace for Education アプリが授業のどの場面で使えそうか、想起しやすくするためのパターン化です。ぜひ柔軟に捉えていただければと思います。
10 の型は、二つに分類することができます。暖色系のアイコンである、授業の魅力(ワクワク)と成果(主体的・対話的で深い学び)を10Xするものが七つ、そして寒色系のアイコンである、準備や評価といった校務も含めて授業の効率化を10X するものが三つです。
授業や授業準備で特によく使われるアプリは、14 になります。なお、アプリは単体で使用することもありますが、基本的には組み合わせてデザインするものだとお考えください。
アプリのそれぞれの特性、共通している機能は、「10X 授業10 の型」を意識して使っているうちに自然と習得できます。的は「アプリを使うこと」ではなく、あくまで「単元のねらいを達成し、児童生徒の学びを深めること」にあります。
このアプリと「10X 授業10 の型」をどのように授業に取り入れるといいのか、そして実際の授業デザインをどう行うかの具体的な解説は本書の第3章、第4章で紹介をしています(小学校55事例・中学校20事例を紹介)。
本書を活用して授業を10Xしよう!
授業のデザインには「一つだけの正解」はありません。大事なことは、ICT ツールを活用することで「授業のめあて」「ねらい」を達成することです。どのアプリを使っても正解ですし、設定や操作はよりよいもの、より効率のよい手順へと使いながら覚え、工夫して改善していってください。
児童生徒はもちろん、先生方自身も、ワクワクが10 倍になる「10X」の授業デザインを、ご自身の手で作り出せるようになるために、ぜひ本書をご活用ください。
これまでの方法にGoogle のアプリを効果的に追加して、ぜひあなたの授業を10X してください。
1人1台端末時代に求められる「10X 授業」を板書シリーズの実践をもとに提案!
- 序章 いよいよ始まったGIGAスクール構想 -教室が変わる!-
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- GIGAスクール構想いよいよ始動。今、求められるものはビジョンと覚悟
- ICT活用の基礎知識〈デジタル化〉とは
- これだけは知っておきたい〈クラウド〉の恩恵とは
- 「10X 授業」とは
- Column1 Google 認定教育者のススメ
- 第1章 なぜ Google Workspace for Educationなら10X 授業を実現できるのか?
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- Google Workspace for Education とは?
- 授業を10X するアプリの選び方とは?
- Google のツールとマインドをかけ合わせると、授業が10X する
- 10X授業とComputational Thinking(計算論的思考)
- Column2 情報× 情操× デジタル・シティズンシップ
- 第2章 10X 授業を成功に導くICT活用10の型
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- 10X 授業10 の型」とは何か
- 授業の魅力と成果を上げるための7 つの型
- 効率を上げる3つの型
- 10X 授業10の型とアプリ
- Column3 全児童39 名小規模校のICTへの挑戦
- 第3章 「10X 授業10 の型」で創る授業デザインの基本
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- Google ティーチャーズ・マップ(GTM)を活用して10X授業を即実践!
- [実践例]小学校5年生 社会科「これからの食料生産とわたしたち
- 第1時 / 第2時 / 第4時2 / 第5時
- Column4 職員室の雑談からICT は広まっていく
- 第4章 実践!「10X 授業10 の型」で創る授業デザイン
- 【小学校:板書シリーズ該当教科】
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- [国語]第1学年:しらせたいな、みせたいな
- [国語]第2学年:お手紙
- [国語]第3学年:わたしたちの学校じまん
- [国語]第4学年:ごんぎつね
- [国語]第5学年:みんなが過ごしやすい町へ
- [国語]第6学年:メディアと人間社会/大切な人と深くつながるために/プログラミングで未来を創る
- [社会]第3学年:高松市のようすやよさが伝わる地図を完成させよう
- [社会]第4学年:各家庭ではどんなごみをどのように出しているのだろう
- [社会]第5学年:生産性を高めるために、どのような工夫があるのか調べよう0
- [社会]第6学年:学習問題に対する自分の答えをまとめよう
- [算数]第1学年:ひきざんカードをならべよう
- [算数]第2学年:5×□のかけ算の答えは?
- [算数]第2学年:サイコロの形をつくろう
- [算数]第3学年:k(キロ)やm(ミリ)ってどんな意味かな?
- [算数]第4学年:正三角形のまわりの長さを求めよう
- [算数]第5学年:目指せ!プロの審判9.15mは何歩?
- [算数]第6学年:自分の考えをまとめよう
- [理科]第3学年:ゴムの伸ばし方を変えたときの車の進む距離の変わり方を比べる
- [理科]第4学年:半月や満月の動き方のきまりを見つける
- [理科]第5学年:さらに食塩やミョウバンを溶かす方法を発想する
- [理科]第6学年:持続可能な社会の構築に向けて人はどうすればよいか理解する
- [生活]第1学年:これまでの活動をまとめよう
- [生活]第1学年:夏の公園で遊ぼう
- [生活]第2学年:図書館で見付けたことを紹介しよう
- [生活]第2学年:生き物からの贈り物 [体育]第4学年:技の習得・習熟を目指そう
- [体育]第6学年:喫煙の害について考えよう
- [外国語活動]第3学年:クイズを作ってリハーサルをしよう
- [外国語]第6学年:行きたい国について話そう
- [道徳]第2学年:るっぺどうしたの
- [道徳]第4学年:絵葉書と切手
- [道徳]第5学年:ブータンに日本の農業を
- 【小学校:板書シリーズ非該当教科】
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- [音楽]第2学年:どんな音がきこえるかな [音楽]第5学年:和音に合わせて旋律をつくろう
- [図工]第3学年:「ちいさな自分」のお気に入り
- [図工]第6学年:わたしの感じる和
- [図工]全学年 :身近な自然でアートしよう(夏休みオンライン宿題)
- [家庭]第5学年:どんな生活をしてるのかな
- [家庭]第6学年:まかせてね 今日の食事
- [家庭]第6学年:上手に暮らそう
- [総合]第3学年:農作物を栽培しよう
- [総合]第4学年:福祉について調べよう
- [総合]第5学年:環境について考えよう
- [総合]第6学年:自分たちの住む地域をよくしよう
- [総合]3年以上:平和について考えよう(夏休みオンライン課題(配信))
- [学級活動]第1学年:2学期の目標をきめよう
- [学校行事]第2学年:学習発表会
- [学校行事]第3学年:秋の遠足を楽しもう
- [学級活動]第4学年:友達を大切にしよう
- [クラブ活動]第5学年:クラブを楽しもう
- [児童会活動]第6学年:委員会・食育集会を行おう
- 【中学校:板書シリーズ該当教科】
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- [理科]第1学年:振幅と振動数
- [理科]第2学年:単体と化合物
- [理科]第3学年:体細胞分裂の観察の考察
- 【中学校:板書シリーズ非該当教科】
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- [国語]第2学年:「走れメロス」の謎を探究する
- [社会]第1学年:ヨーロッパ州 -国同士の統合による変化-
- [数学]第1学年:比例を利用しよう
- [音楽]第2学年:曲にふさわしい発声で歌おう
- [音楽]全学年 :楽器と唱歌によるパッチワーク
- [美術]第1学年:遠近感を出そう -線遠近法-
- [美術]第3学年:今を生きる私へ(自画像)
- [体育]第2学年:創作ダンス
- [保健]第2学年:交通事故と危険予測の回避
- [技術]第1学年:わたしのものづくり
- [技術]第3学年:植物工場を作ろう
- [家庭]第2学年:住まいの安全について考え
- [外国語]第1学年:観光パンフレットを作ろう
- [道徳]第3学年:『二通の手紙』
- [総合]第2学年:スマホ活用について考えよう
- [学級活動]第3学年:先輩に学ぼう -自分のライフプランを考えよう-
- Column5 日常的にICT を使うことの大切さ
- 第5章 アプリの基本機能と設定、操作方法
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- すべてに共通する操作と注意すべき点
Google アプリの3ステップを覚えよう - Google Classroom の基本操作
- 授業で使える便利な機能
- Google Jamboard:[フレーム]に[背景を設定]するには?
- Google フォーム:自動採点のテストを作成するには?
- Google Meetでゲストティーチャーに取材するには?
- Google Keepの[メモ]を共同編集するには?
- Google ドライブ:最低限知っておくべき知識とは?
- 音声入力ってどうやるの?
- 安全かつ効率よく共有設定できるグループメールとは?
- スライドのデザインを、AI にお任せするには?
- すべてに共通する操作と注意すべき点
発売日 : 2021/8/12
判型 : B5変形
ページ数 : 440ページ
税込価格 : 3,080円