段落のまとまりを考えて、文章全体の構成を読む 〜「中」のまとまりを考える ~ 「こまを楽しむ」』(光村3年上)より

執筆者: 白石 範孝

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[まとめ][筆者の主張][要旨]……。説明文の学習の中で、頻繁に登場する言葉です。
しかし、これらの用語の意味や、それらをとらえる具体的な方法を、子どもたちはしっかりと身につけることができているでしょうか。
あるいは、それが可能な国語の学習となっているでしょうか。

【今回の「問い」】

説明文の[まとめ]と[筆者の主張]はどうちがうの?

【習得を目指す力】

筆者の事例のあげ方の工夫から、[筆者の主張]をとらえる。

授業においては、子どもたち自身が【問い】をもち、自発的に解決しようとすることが大切だと言われます。
そのためにも、授業づくりにおいては、教師が【課題】【活動指示】【ズレ】【問い】【技】の関係を理解し組み立てていくことが必要です。
※「【問い】の解決による汎用的な力の習得」の詳細については本連載の第2回を参照

それでは、「こまを楽しむ」の、実際の授業を見ていきましょう。

「こまを楽しむ」には、次のような特徴があります。

→「話題」「課題」「事例」「主張」をとらえることができる。

→事例とまとめや主張を関連付けてとらえることができる。

→[筆者の主張]をとらえることができる。

今回は特徴2として挙げた「〈なか〉の具体例・事例の部分が、さらにいくつかのまとまりに分けられる。」から筆者の工夫に気づき、[筆者の主張]をとらえる授業をめざします。

子どもたちに[まとめ]や[筆者の主張]に関心をもたせるため、次のような【課題】を示しました。


【課題】
この説明文の[筆者の主張]は何だろう。

説明文には[筆者の主張]のほかに、事例の[まとめ]などもあります。
子どもたちにはこれらの区別が明確でない場合も多く、次のようなズレが生じます。

【ズレ】

  • ・こまを楽しもう。
  • ・日本にはどんなこまがあるのか。
  • ・日本にはさまざまな種類のこまがある。
  • ・人々は、回る様子や回し方でさまざまな楽しみ方のできるこまを生み出してきた。
  • ・[筆者の主張]とはどんなことかわからない。

ここから、次のような【問い】が生まれます。

【問い】
説明文の[まとめ]と[筆者の主張]はどうちがうの?

説明文の[まとめ][筆者の主張][要旨]などについては本連載の第10回でも説明しましたが、[まとめ]と[筆者の主張]について確認してみましょう。

まとめ 具体例・事例で説明した内容をまとめている。具体的表現内容となる。(具体的内容)
筆者の主張 筆者がもっとも言いたいこと。具体的なものであれば上記の[まとめ]と同じであり、抽象的なものであれば下記の[要旨]と同じものになる。

1、2年生の説明文では[筆者の主張]がなく、[まとめ]だけのものが多く見られます。

5、6年生では、[まとめ][筆者の主張]のほかに[要旨]がある説明文も学習するようになります。


この教材では、取り上げられている事例から、[まとめ][筆者の主張]をとらえてみましょう。

「こまを楽しむ」では、〈なか〉の部分で6種類のこまが紹介されていますが、〈なか〉をていねいに読むと、次のように〈なか1〉と〈なか2〉に分かれていることがわかります。

〈なか1〉 ②段落 「色がわりごま」回っているときの色を楽しむ 回る様子を楽しむ
③段落 「鳴りごま」回っているときの音を楽しむ
④段落 「さか立ちごま」とちゅうから回り方がかわり、その動きを楽しむ
〈なか2〉 ⑤段落 「たたきごま」たたいて回しつづけることを楽しむ 回し方を楽しむ
⑥段落 「曲ごま」おどろくような所で回して、見る人を楽しませる
⑦段落 「すぐり」雪の上で回して楽しむ

このことから、筆者はこまの楽しみ方として「回る様子を楽しむ」「回し方を楽しむ」という2つをあげていることがわかります。

単に「いろいろなこま」を紹介しているだけでなく、楽しみ方を分類しているところに、筆者なりの考え方が表れているといえるでしょう。

〈おわり〉の8段落の1文目は「このように」という言葉からはじまっており、[まとめ]であることがわかります。

2文目、3文目には、こまの特徴と楽しみ方についての筆者の考え方が述べられていますので、この部分に[筆者の主張]があるとわかります。


以上から、[まとめ]と[筆者の主張]は次のように示すことができます。

「こまを楽しむ」の[まとめ]
日本には、さまざまなしゅるいのこまがあります。

「こまを楽しむ」の[筆者の主張]
人々は、じくを中心にバランスをとりながら回るというつくりにくふうをくわえ、回る様子や回し方でさまざまな楽しみ方のできるこまを生み出してきたのです。

複数の事例があげられている説明文では、そのあげ方にも筆者の工夫があり、筆者の意図が表れます。

したがって、事例のあげ方を手がかりに、筆者の主張をとらえることもできるのです。


この連載で繰り返し申し上げてきましたが、説明文の読みの目的は、筆者の主張を読むことです。

そのためには、文章の各部分をばらばらに読むのではなく、文章全体を俯瞰した読みを行うが必要です。

「話題・課題」をとらえ、そのことをわかりやすく説明するための「具体例・事例」の関係を読み、最終的には、「まとめ・主張・要旨」をとらえた読みをしていくことが説明文の読みの基本となる。

今回はこの考え方を基盤として、本教材の文章構成をとらえた読みを行いました。



「『問い』の解決による、論理的な国語の学習」について取り組んできました。

国語の学習には、まだまだ多くの課題が残されています。

これからも、一緒に学んでいきましょう。