子どもの笑顔が花咲く運動会をプロデュース!
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みなさんこんにちは。神奈川県で小学校の教員をしている山崎克洋(やまざき・かつひろ)と申します。教職経験は15年目を迎えました。正直言うと、運動会の指導は決して好きではありません。どうしても強引に子どもたち全員に、同じことを同じようにさせようとして、苦しませてしまった経験があるからです。だからこそ、今回のテーマである「子どもの笑顔が花咲く運動会をプロデュース!」これを目指すために、これからの時代の運動会のあり方について、自分なりに考えていることをお伝えしたいと思います。
運動会と言えば、徒競走。自分自身が保護者になってみて、徒競走で我が子が走り抜ける姿に何度も嬉しい気持ちになりました。ただ、それは私の息子が運動が比較的できる方だったからです。運動が苦手な子にとって、一律の徒競走は辛いものかもしれません。また、それを応援し続ける保護者からすれば、何とも言えない苦しい時間になっている可能性があります。もちろん、我々教師はそこを考慮して、速さの同じ子が同じレースになるように配慮はしますが、どうしても順位という厳しい現実が待っているものです。しかも、努力だけでは解決できない走力という現実が、徒競走にはあります。
徒競走以外にも運動会の表現種目も一律で同じ動きを求めることが多いです。もちろん集団の美というのは間違いなくあります。でも、それは教師が一方的に押し付けたものになっていないでしょうか。教師の自己満足の指導になっていないでしょうか。
では、そんな徒競走や表現種目の指導をどのように変えていくか。具体的なプランを提案します。
一律の徒競走をやめて、障害物競争を取り入れている学年が勤務校では増えてきました。これは、障害物競争にすることで、単純な走力だけでは決着がつかない競技へと変わるからです。たとえば、テニスボールをラケットで運んだり、縄跳びを飛んだり、網をくぐり抜けたりなど、様々な動きがあって、子どもたち自身が楽しめるとともに、参観に来た人たちも魅了するものへと変わっていくからです。この際、ぜひ取り入れたいのが、障害物競走の種目の中身を決めるプロセスから子どもたちに考えさせることです。多くの場合、教師が、これがよいだろうと、運動会の種目を決めることが多いです。しかし、子ども自身が運動会の競技を考えていくことで、より主体性のある運動会へと変わっていきます。運動会の上位目標は、きっとどの学校の運動会にもあると思います。たとえば、『みんなで絆を深める運動会』だったとします。そうすると、種目の内容も一人でただ走るものから、2人組で走る方がよいのではないか? そのような意見が出るかもしれません。子どもたち自身が、競技の計画段階から関わっていくことで、やらされる運動会から、創り上げていく運動会へと変化していくでしょう。この際、決して忘れてはいけないのが、徒競走を楽しみにしていた子たちのことです。一年に一回の徒競走で活躍することを楽しみにしている子が必ずいます。そのような子のことを考えたとき、徒競走か障害物競走、どちらか選択できる余白を設計してもよいかもしれません。このような、誰一人取り残さない形で、運動会をやっていくにはどうしたらよいのか、子どもたち自身が合意形成しながら、創り上げていきたいです。
これまで、「表現種目=一糸乱れぬ集団の美」この要素が強かったように思います。これからの時代の表現種目は、むしろ子ども自身が多様な表現を考えていくことが求められています。小学校学習指導要領(平成29年告示)解説の体育編には【思考力,判断力,表現力等】について次のように記述されています。
領域 | 小学校 第1学年及び第2学年 |
小学校 第3学年及び第4学年 |
小学校 第5学年及び第6学年 |
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表現運動系 | 身近な題材の特徴を捉えて踊ったり,軽快なリズムに乗って踊ったりする簡単な踊り方を工夫するとともに,考えたことを友達に伝える | 自己の能力に適した課題を見付け,題材やリズムの特徴を捉えた踊り方や交流の 仕方を工夫するとともに,考えたことを友達に伝える | 自己やグループの課題の解決に向けて,表したい内容や踊りの特徴を捉えた練習や発表・交流の仕方を工夫するとともに,自己や仲間の考えたことを他者に伝える |
【小学校学習指導要領解説 体育編p.182より引用】
共通するキーワードの一つが「工夫」です。このことからも、子ども自身が表現種目を工夫していく余白を設計する必要があります。
もちろん、だからといってすべてを子どもたちに任せることは、なかなか簡単なことではないでしょう。一番簡単な方法は、創作ダンスを教師がつくるのであれば、◯拍分の踊りを子どもたちに考えてもらう方法がよいでしょう。きっと中学年くらいの子どもたちは大いに喜んで考えるはずです。低学年であれば、いくつか選択肢を与えて踊れるようにしたり、最後の決めポーズの部分を考えるだけでも、子どもたち自身の表現種目へと変わっていくはずです。一糸乱れぬ表現から万糸乱れて踊る個性豊かな表現へと変わっていく、そのきっかけは、子どもの自己決定から生まれていくのではないでしょうか。
子どもに自己決定の余白をつくることは、子どもたち自身が創り上げる運動会に変わるはじめの一歩です。しかし、ここで注意しなければならないのが、結果的に指導時間が伸びてしまうことです。運動会における長時間の指導は、本来やるべき体育の授業時間を減らすことにもつながります。教師の見栄から、ついつい指導時間が伸びてしまうことが、経験上私も何度かありました。しかし、完璧を求めない、限られた指導時間の中で、子ども自身が自己調整することも学びになるはずです。
また、練習で効果を発揮するのが動画素材です。お手本動画をGoogleクラスルームなどでシェアしておくことで、子どもたち自身が自主的に練習していくようになります。教師がお手本を踊れなくても、素晴らしい動画はYouTubeにもたくさん掲載されています。このような動画を用いることで、子どもたちの練習への意欲も高まっていくはずです。
教師の見栄ではなく、子ども自身が達成感を味わい、笑顔が花開く運動会になるように、運動会のあり方を考えてみる時期がきたのではないでしょうか。
参考文献・URL