担任からの「ラスト・メッセージ」! 子供に贈る絵本10選

執筆者: 戸来 友美

|

みなさん、こんにちは。1年間、『イラストで見る 全活動・全行事の学級経営のすべて』の2年生チームでたすきを繋いできたWEB発信ですが、今回がファイナルです。
さて、私は北海道で小学校教員をしております、戸来(へらい)と申します。
連載のラストは、子どもたちに贈る「絵本の読み聞かせ」のススメです。よろしくお願いします。

修了式の日は、子どもたちにとってどんな日なのかを考えたことがありますか?
教師にとっては、年度の終わり、学年の終わりを意味しています。かつての私は、子どもたちが学年の階段を一つ上がっていく日、と考えていました。
でも、近頃は子どもたちにとって、修了式は学年が上がるのは階段ではなく、真っ直ぐな成長の道を歩いてそこにあるマイルストーンのようなものなのかもしれない、と思うようになりました。
ですから、仰々しく進級について語るより、そっと、絵本で成長を振り返ったり、これからに希望が持てるようなメッセージを届けたいと考えるようになりました。
卒業は、あたらしい世界の扉を開いていくので、少し意味合いが違います。
私は、卒業式に期待と不安を持って卒業する子どもたちへ、明るい未来に一歩踏み出せるようなエールを込めて読み聞かせをしています。
今回は修了式、卒業式におすすめの10冊の絵本を紹介します。大人が読んでも背中を押してもらえる絵本もあります。手にとっていただけることを願っています。

①「たまごにいちゃん」あきやまただし(鈴木出版)

ずーとたまごのままでいたいと思っているたまごにいちゃんは、弟がひよこになり大きくなってもへっちゃらです。ある日、たまごが割れてしまって、がっかりしていたのですが、水に映った自分を見て、悪くないと思うのでした。成長は人それぞれ、そして、水に映ったたまごにいちゃんのようにみんなも自分の成長を見つめてほしいという思いが伝えられます。

②「あさになったのでまどをあけますよ」荒井良二(偕成社)

「あさになったのでまどをあけますよ」が繰り返されて、窓の向こうに住んでいる街の景色が広がります。明日に向かい明るい気持ちになる絵本です。

③「はらすきー」あきやまただし(講談社)

お腹を空かせたハスキー犬のはらすきーは、野良犬の仲間たちの食べ物を食べてしまい、仲間たちから街を出て行けと言われます。その様子を見て、野良犬のケンがはらすきーは悪くないとかばいます。はらすきーはケンが見せてくれた優しさを他の町に行って教えたいと言って街を去っていきました。新しい街で頑張るはらすきーの姿から、新しい場所で頑張ろうとする気持ちを受け取ってほしいと思ってこの絵本を選びました。

④「富士山にのぼる」石川直樹(教育画劇)

誰もが知っている富士山の登山の様子がとても興味深いです。持ち物や見える景色の写真など、子どもたちは興味深く写真を見るでしょう。石川直樹さんが一歩一歩山を登る姿に、次の学年に向けて成長する自分と重なる子がいるのではないかと思います。

⑤「たいせつなこと」マーガレット・ワイズ・ブラウン(作)レナード・ワイスガード(絵)うちだややこ(訳)(フレーベル館)

世界中で読まれているベストセラーです。この本の最後のページにある「でも あなたに とって たいせつなのは あなたが あなたで あること」は、子どもたちに送りたい大切な言葉です。

⑥「もしかしたら」コビ・ヤマダ(作)ガブリエラ・バロウチ(絵)前田まゆみ(訳)(パイ インターナショナル)

人生で起こるかもしれないことが美しい絵でいくつも描かれています。その中で、確かなことは「いま あなたは ここに いる。」「できることが、きっと ある。」ということで、考えるより信じてみようというメッセージを感じます。

⑦「はじまりの日」ボブ・ディラン(作)ポール・ロジャース(絵)アーサー・ビナード(訳)(岩崎書房)

「きみが 手をのばせば しあわせに とどきますように」のように愛のこもった子どもへの願いがたくさん詰まっている絵本です。読み聞かせが終わった後に、「forever young」の曲をかけて聞いてもらいたくなります。

⑧「きみの行く道」ドクター・スース作(絵)いとうひろみ(訳)(河出書房新社)

私が購入した本の帯には「これから新しい人生にふみだそうとするすべての人に、贈る本」とありました。たくさんの可能性が描かれ、自分にもできる!という勇気をくれます。

⑨「たくさんのドア」アリスン・マギー(文)ユ・テウン(絵)なかがわちひろ(訳)(主婦の友社)

見守っているから前を向いてドアを開けて進んでごらん、というメッセージを感じられる絵本です。新しい世界に旅立つ人に、見送る側の人の愛情を伝えられるでしょう。

⑩「ぜつぼうの濁点」原田宗典・作 柚木沙弥郎(教育画劇)

ひらがなの国で「ぜつぼう」についていた濁音の深い悲しみがたくさん描かれています。その悲しみを変えたのが、最後に居場所を見つけた濁点に、大人なら納得できるのではないかと思います。

この企画は、北海道の藤原友和さんがLINEグループに発信したことから始まりました。 編著者の渡辺道治さんと連載メンバーの山崎克洋さんがノリに乗ってアイディアを出し、あれよあれよというまに藤原さんが原案を作り上げました。郡司竜平さんがその流れを苦笑いしながら呆れ、最後に、高橋優さんが決まったことをすべて受け入れてくれ、1年前に連載がスタートしました。連載を始めるにあたり、東洋館出版社の北山さんのご尽力もありました。

1年間、無事に終えることができて、ホッとしています。 「学級経営の傍に絵本を」という私の思いを受け止めてくれたチームのみなさんが、連載の最初と最後に絵本の紹介をさせてくれました。 そんなチームの皆さんや読んでくださった皆さんに感謝しています。ありがとうございました。