田村学先生待望の新刊-学習評価

今回の学習指導要領の改訂において、育成を目指す資質・能力を三つの柱に整理したことは、学習評価にも大きな変化をもたらしました。 これまで四観点を基本としながらも教科等間において違いがあった評価の観点が、全ての教科等で、資質・能力の三つの柱に沿った「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の三観点に整理されました。このことは、どの教科等においても、統一的な考え方で学習評価を適切に行えるようになることを意味します。

また、これまで難しく曖昧であった、評価規準の設定方法なども明確化される契機となります。具体的な学習活動に即した評価規準の設定方法がどの教科でも共通で明確なものになれば、子供の見取りはより豊かなものとなり、同時に、日々の授業もより質の高いものになることが期待できます。

田村学教授(國學院大學)の待望の新刊『学習評価』は、これまで曖昧になりがちであった「評価観」を明らかにし、具体の評価方法を提案しています。全ての先生にとってわかりやすく、評価に取り組む際のガイドとなる画期的な一冊です。

「いつでも、どこでも、だれでもできる」が、キーワード。

学習評価には「四つの機能」があります。

①指導と評価の一体化 ②説明責任の遂行 ③自己評価能力の育成 ④カリキュラムの評価
これまではともすれば、①の「指導と評価の一体化」ばかりに注目が集まってきた向きがありますが、本来、学習評価とは、教育課程にも、子供自身にとっても、地域や保護者にとっても機能すべき重要なものとして存在します。

そうした点から考えるならば、誰もが分かりやすいものであること、複雑ではなく簡便であること、個人や実施者によって違いが生まれるのではなく安定的であることが求められます。
本書では、精度の高い安定した評価こそが、子供を見取る力を高め、明日からの授業を洗練させるということを念頭に、「いつでも、どこでも、だれでもできる」妥当性と信頼性を備えた学習評価の実施方法を考えていきます。

10の切り口から、学習評価の基本的な考え方・具体的な方法を網羅。

序 章 学習評価の改善過程を概観する
今回の改訂における学習評価の改善過程を、四つの段階で時系列順に考察し概観する。

①中央教育審議会「答申」(平成28年)、②文部科学省「学習指導要領」(小・中学校:平成29年/高等学校:平成30年)、③教育課程部会「報告」(平成31年)、④国立教育政策研究所「学習評価の在り方ハンドブック」(令和元年)/「参考資料」(令和2年)

第1章  資質・能力を明確にする知識の構造化

具体的な子供の姿から評価をしていくためには、育成を目指す資質・能力についての理解が欠かせない。前著『深い学び』で考察した「知識の構造化」の考え方をブラッシュアップし、資質・能力の三つの柱それぞれにおいて、知識がどのように駆動している状態のことを指すのかを改めて分析する。

図解①「知識及び技能」における知識の構造化(知識)

図解②「知識及び技能」における知識の構造化(技能)

図解③「思考力、判断力、表現力等」における知識の構造化

図解④「学びに向かう力、人間性等」における知識の構造化

第2章 学習評価の意義と役割


学習評価には四つの機能(①指導と評価の一体化、②説明責任の遂行、③自己評価能力の育成、④カリキュラムの評価)がある。これまでは学習指導の改善としての①に注目がいきがちであったが、学習評価は教育課程にも子供自身にも、地域や保護者にも機能すべき重要な行為である。学習評価、その意義と役割を根本から問い直す。

第3章 授業における見取りと評価


「見取り」とは、子供の学びを捉え、解釈する教師の行為であり、形成的評価を行う中で指導の改善に機能させる教師の行為とも言える。実際の指導の最中に、評価の観点などから一人一人の子供の学びを捉え、即座に判断して指導の改善に反映させていく際に押さえておきたい視点、対応の仕方を整理する。

第4章 学習指導の計画と評価規準


信頼性と妥当性の高い学習評価の肝となるのは、すべての教師が、「具体的な学習活動に即した評価規準を設定できるようになる」ことである。第4章からは、評価規準を設定することの意味や意義について考えていく。まずは、基本となる考え方や全体的な枠組を、小学校の生活科と総合的な学習の時間を参考にして整理していく。

「知識・技能」評価規準の設定フォーマット【知識】

第5章 評価規準の設定方法の明確化

第4章で整理した考え方を各教科へと一般化していく。第1章で整理した「知識の構造化」の考え方を基盤に、評価の三観点(「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」)ごとの表現様式と考え方を示し、評価規準の設定方法を具体的に解説する。章の末尾には、一目で分かる「評価規準の設定フォーマット」付録つき。

第6章 知識の構造化による評価規準と子供の学び


「知識の構造化」を基に評価規準を具体的に設定できるようになると、子供をよりよく見取れるようになるとともに、質の高い学習指導を展開することも可能になる。そのことが顕著に表れている事例を紹介し、5章の「設定フォーマット」を使って評価規準を設定していく様子を詳述する。小学校3事例、中学校3事例の計6事例を収録。

第7章 観点別評価の総括

評価規準による評価結果を集積し、各教科等の評定へとまとめあげていく。そのためには学校内で十分な共通理解が図られ、統一された方法によって実施されることが極めて重要である。第7章では評価を「総括」するということについて、国立教育政策研究所「参考資料」などをもとに検討していく。

 第8章 知識の構造化とカリキュラム・マネジメント
具体的な評価規準によって得られる学習評価の結果は、カリキュラムの評価に結び付けていくことが求められる。また、評価規準によって描いた具体的な子供の姿は、各教科等間の関連を明確にし、教科等間を横断する在り方をより明瞭なものにする。評価と教育課程の関係性、「知識の構造化」の考え方で実施する教科等横断の方法を、事例とともに紹介する。

終 章 知識はさらに駆動する

今まさに変革期にある社会の中で、「活用・発揮」される知識の在り方を目指すことこそが、「未来社会を創造する主体としての自覚」という学校の究極目標を達成する。

学習評価

発売日:2021年5月10日
判型:四六判
ページ数:300ページ
価格:2,200円