教室マルトリートメント

教室マルトリートメント

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川上 康則/著

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amazonランキング第1位 学級運営部門(2022.4.27)  教室マルトリートメント 川上康則 子どもの心を傷つける不適切な指導が生まれる要因を
教育界の構造的な問題から検討し、
教師という職業に漂う「不安」に寄り添う。

子どもについこんな言葉を言ったことがありませんか? 「何回言われたら分かるの?」   … 質問形式での問い詰め
「やる気がないんだったら、もうやらなくていいから」
(→本当は、やりなさい)     … 本来の意図の裏を読ませる
「早くしないと、○○させないから」 … 脅しで動かす
「校長先生に叱ってもらうから」  … 虎の威を借る
「そんなこと1年生でもやりません」   … 下学年との比較
「ダメって言ったよね」      … 指導者に責任が無いことの強調
「じゃあ、もういい」「さよなら」  … 見捨てる
これらはすべて … 毒語
(子どもの発達を阻害するネガティブ要素をもった言葉)

マルトリートメント:不適切なかかわり・養育 “教室”マルトリートメント:教室で行われる子どもの心を傷つけるような不適切な指導を示す造語

「教室マルトリートメント」。

本書のタイトルであるこの言葉は、筆者である川上康則先生(東京都立矢口特別支援学校)の造語です。教室内で行われる指導のうち、体罰やハラスメントのような違法行為として認識されたものではないけれども、日常的によく見かけがちで、子どもたちの心を知らず知らずのうちに傷つけているような「適切でない指導」を取り上げています。

例えば、事情を踏まえない頭ごなしの叱責、子どもたちを萎縮させるほどの威圧的・高圧的な指導などは分かりやすい例です。しかし、本書ではもう少し掘り下げて、褒めるべき時に褒めないとか、「子どもにナメられるから」という理由で笑顔を見せないといったことについても、教室内を重い空気感で包んでしまう指導として取り上げたいと思います。

「マルトリートメント」という概念は、海外ではチャイルド・マルトリートメント( child maltreatment )という表現で広く知られています。
mal(マル=悪い)+treatment(トリートメント=扱い)で、マルトリートメント。「不適切な養育」「避けたい関わり方」「行われるべきでない指導」などの意味で使われます。
日本の児童虐待防止法で定められた内容(身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待)よりも広い概念で語られ、子どもの将来を案じてよかれと思って行う「しつけ」や、大人が過去に受けてきたからという理由で行われる指導であったとしても、子どもの育ちにマイナスであれば許されていません。マルトリートメントは、子どもの心にトラウマ(心的外傷)をつくるとされ、脳の一部の萎縮や肥大などの変形につながることも、小児神経科医の友田明美氏の研究によって報告されています(参照:友田明美『子どもの脳を傷つける親たち』NHK出版新書など)。

マルトリートメントは、基本的に親子関係の養育において扱われる概念です。
しかし、不適切な関わり方や本来であれば行われるべきでない指導といった視点から見てみると、教育関係者こそ、常に気を付けておくべき概念なのではないか――。本書では、そのような問題意識のもと、密室空間である「教室」で、「指導」の名の下に子どもたちを傷つけるような関わりが、知らず知らずのうちに行われていることがないか、検討していきます。

例えば、教室でのこんな指導や、子どもたちの反応を見たことはありませんか。

  • 強い叱責、懲罰、締め付けなどの指導がされている
  • 教室ができていない子を報告し合うような監視社会化している
  • 多くの子どもたちが黙って高圧的な教師に従っている
  • 教師の一方的な語りが多く、子どもたちが発言できない空気感が教室を支配している
  • 先生の顔色を見ながら子どもが動いている(考えて動けない)

本書では、違法行為の一歩手前のレベルの「行き過ぎた指導」から、これまでは当たり前に行われていた指導だけれども、改めて考えると子どもの心を傷つける要素をもつ指導まで、幅広く「教室マルトリートメント」として整理していくことを試みます。
そして、教室マルトリートメントに陥らないための予防としての子どもたちとの信頼関係づくりの方法や子ども理解のために知っておきたい発達に関する知識を押さえていきます。さらに、自分が「教室マルトリートメントをしてしまっているかもしれない」という場合に、今すぐに実践したい立て直しから、常に行いたい教師としての自己検証のやり方まで、その改善方法を具体的に提案していきます。

一方で、このような子どもの心を傷つける毒語、威圧的・支配的態度などの不適切な指導が発生する「要因」は、どこにあるのでしょう。その背景に目を凝らしていくと、職員室での人間関係、教師の労働環境、教育界の抱える構造的な問題が立ち現れてきます。
教師という職業に漂う「不安」。
特別支援学校教諭として、長年、障害のある子に対する教育実践を積み、公認心理士・臨床発達心理士でもある著者が、教師の不適切な指導、そしてその発生要因としての現代の教師が置かれている現実というテーマに真正面から向き合った、今この時代だからこそ届けたい、渾身の1冊です。

ここまで子どもたちを追い込む指導は、もはや教育とは言えないのではないだろうか……。「教育」の名の下に、私たちは子どもの心を壊す行為を半ば平然と受け入れているのではないだろうか……。こうした自戒の下に、あらためて教室での教師のふるまいを「前提から見つめ直す」作業が必要なのではないか。そんな思いから、ここまで述べてきたことについて、包括的に「教室マルトリートメント」という造語をあてました。(中略)今、教室で行われている指導の一つ一つ、あるいは職員室内で繰り広げられている会話の一つ一つが「これはもしかしたら、マルトリートメントにあたるかもしれない」という客観的な視点につながって、子どもたちの前で笑顔と穏やかな気持ちを絶やさない教師を増やすこと、これが本書の目的です。

――序章「『違法ではないが、適切ではない指導』が学校を支配する」より

[目次]

序章 「違法ではないが、適切ではない指導」が学校を支配する
第1章 はりつめる教室
第2章 教師が子どもを傷つける
第3章 圧は連鎖する
第4章 教室マルトリートメントを防ぐ
第5章 教室マルトリートメントを改善する
第6章 安全基地としての学校
巻末対談 教師の傷を癒やし、教室マルトリートメントを断つ 友田明美×川上康則
終章 教室の空気を換えていきたいあなたへ

[著者紹介 ]

川上康則
東京都立矢口特別支援学校主任教諭
公認心理師、臨床発達心理士、特別支援教育士スーパーバイザー。NHK Eテレ『ストレッチマンV』『ストレッチマン・ゴールド』番組委員。立教大学卒業、筑波大学大学院修了。肢体不自由、知的障害、自閉症、ADHDやLDなどの障害のある子に対する教育実践を積むとともに、地域の学校現場や保護者などからの「ちょっと気になる子」への相談支援にも携わる。著書に、『こんなときどうする? ストーリーでわかる特別支援教育の実践』(学研プラス)、『通常の学級の特別支援教育 ライブ講義 発達につまずきがある子どもの輝かせ方』(明治図書出版)、『子どもの心の受け止め方』(光村図書出版)など。 

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