「学びがい」のある学級ー子どもの声を引き出す教師の言葉がけ
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商品説明
教師が子どもに向き合うとき、子どもの「こうありたい、こうしたい」という内なる声に耳をすませる必要があります。その関わりのなかで子どもに安心感が生まれ、安心感のある学級が、創造的・互恵的な学級文化を創り出していきます。そこに、子ども同士が「学びがい」を感じ合える瞬間がいくつも生まれるのです。 本書では、子どもの願いや問いから出発する、白坂流学級経営の極意を紹介します。
子どもの「声」を聞こう
待ちに待った新学期が始まってそろそろ1か月、学級づくりのスタートはいかがでしたでしょうか。
何事にも盛り上がるクラスにしたい
男女仲のよいクラスにしたい
毎日読み聞かせをして、本を読むことが好きなクラスにしたい
先生方の学級づくりへの期待や思いが高まるこの時期、書店ではたくさんの「学級経営本」が出版されます。様々な仕掛けやアクティビティが提案され、目指す学級の姿に向けて、すでに取組を始めている先生もいらっしゃることと思います。
でも、先生方が期待に胸を膨らませているのと同じくらい、子どもたちも、新しい1年間に対する期待や不安をもっています。 学級づくりのスタートは、そのような子どもたちの願いや思いに耳を傾けることから始めてみることが大切なのではないでしょうか。
子どもの中心軸を大切にする
筑波大学附属小学校の白坂洋一先生の学級づくりの肝は、「子ども一人一人のもっている中心軸を大切にする」ということです。
「こうありたい、こうしたい、好きなもの、苦手なこと」そんな一人一人がもっているもの、大切にしていること、そのような子どもの幹となっている中心軸をよく見取り、寄り添うことで、その幹を膨らませ、葉を伸ばし、花を咲かせる手助けをするのです。
その為に、最適なタイミングで子どもの内なる声を引き出し、子ども自らの力で課題を解決できるよう、教師は根気強く言葉がけをします。
子どもと教師の交換日記
子どもの思いや願いを知るために有効な手段として、「日記」があります。
日記指導は家庭学習の代名詞的に全国の学校でも多く取り組まれています。
しかしながら、漢字ドリルや計算練習のように繰り返し課題として出されるなかで、分量を埋めることが目的となったり、「今日は○○と○○をしました。楽しかったです」というような形式的なものになったりしがちです。
また、教師にとっても、いちどに学級全員の日記を読んでコメントすることが負担であったり、心情や思いがつづられた日記に対する書きぶりへの指導の難しさを感じたりしているようです。
白坂先生は、日記指導のねらいを「表現欲求を高める」ことに絞っています。どのような課題で書くのかを教師が具体的に指示し、表現されたものに対してどのようにコメントするかで、子どもたちの「書きたい」という意欲は変わってくるのです。
1)書きたくなるテーマ20
行事のあとなど、子どもたちに書くべき内容があるときなどは別ですが、時には、書きたくなるように、また書き出しに困らないように以下のテーマを課題として出します。
1 なりきり作文
2 オープニング作文
3 エンディング作文
4 きみが作者だ(物語の創作)
5 漢字創作文
6 漢字一文字で表すと?
7 ぼく・わたしのおすすめ(紹介文)
8 じっくり観察(観察文)
9 ぼく・わたしの体験記(生活・体験報告文)
10 ニュースから考えること、思うこと(意見文)
11 この本、いいよ(感想文)
12 やりとり作文(ペア日記)
13 つないで、つないでリレー作文
14 こんなアイディアどうでしょう(提案文)
15 〇〇さん、ありがとう(手紙文)
16 旅日記(道案内作文)
17 自分の思いを(随筆)
18 ぼく・わたしの思いを詩に!歌詞に!(自由詩)
19 〇〇を解説します!(解説文)
20 五・七・五で表そう(短歌・俳句)
これらのテーマを、学年や発達段階など、今子どもたちがもっている書く力に応じて与え、書き出しなども工夫させることで書く意欲を高め、同時に、さまざまな文種を書くことにチャレンジすることができるのです。
なお、曜日を決めて1週間に1度など、日記の提出日を学級の中で分散させることもポイントです。30人学級であれば1日に6人程度の提出となり、子どもにとっては時間をかけて話題と事例を集めて書けますし、教師もコメントを入れる負担が減るのです。
2)教師のコメント
子どもの表現欲求を高め、継続させるには、教師がどのように日記にコメントを入れるかはとても大切です。 白坂先生は、コメントを入れる際の視点として
①表現内容
②表現方法
を分けています。
①表現内容は、書かれた内容そのものです。
本文中の表現に共感や疑問などのコメントを入れて反応し、最後に一人の読者としての感想や、教師の体験も踏まえて総合的にコメントするのです。また、調べたことをまとめてきた子どもの日記の最後には「だったら、○○はどうだろう?」とさらに追究を深める言葉がけをします。
②表現方法は、書き方に対するコメントです。
例えば低学年であれば、「書き出し、比喩、体言止め、倒置法、構成」などのような観点で、表現方法のよかった箇所に波線を引き、花マル等で視覚的に評価するのです。視覚化することで、またその表現方法を使って書きたいという、次への表現欲求につなげることができます。
話しかけることが難しかったり時間がなかったりの毎日の中で、すくいあげることができないような子どもの思いや願い、悩みなどを、教師との一対一の関係のなかで共有することができ、また書く力の指導にもつなげることができる「日記」はとても有効な手段です
学びがいのある学級へ
ありのままを受け止め、寄り添う教師の関わりの中で子どもは安心して育ち、自己肯定感を高めることができます。
そして、その安心感が創造的・互恵的な学級文化を創り出し、一人一人の伸びが相乗効果となって、クラスとしての強さに育っていきます。
安心して話し合える土壌、共に挑戦し支え合える仲間、そんな学び合いの日々のなかで、子ども同士が「学びがい」を感じる学級に育っていくのです。
本書では、動き出しの場面の子どもの動きや表情からの見取り方、共感力や意識的な言葉がけ、教師の立ち位置、日記指導やプロジェクト活動など、日々の取組や年間を通した計画的なカリキュラムまでをご紹介しています。