褒めるは学びの落とし穴 子どもが輝く対話のメカニズム

褒めるは学びの落とし穴 子どもが輝く対話のメカニズム

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久保 賢太郎/著

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先生=Teacher→Designer・Coordinatorへ!
知識を押し付けるような授業からの転換を。
「学び」の理論と子どもが主体的に自立する教室づくりを提案します!

 

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こうやって過去を振り返ることは楽しいし余韻に浸かっていたい気持ちは少なからずある。でも私の成長は小学校だけでは終わらない。少しずつ成長しながら新しい道を創り、自分だけにしか味わえない思い出を創っていきたい。まるでクボケンの座右の銘のように。

「今ここにない未来は自分で創る。」

卒業生より

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■脱・「教える」!

東京学芸大学附属世田谷小学校の教師、通称クボケン。




「当たり前を疑う」「自分の頭で考える」「やる気スイッチくらい自分で押す」そして、「ありたい自分、ありたい未来を自分で描く」

こうした考えを学級づくりのビジョンとして掲げています。

 

例えば、子どもが「教室に卓球台がほしい」といったら、メリットなどを議論させた末に導入させたり、選挙に合わせた模擬投票の授業では、「実際に見てみないと分からない」と言う子どもたちと学校を飛び出し選挙ポスターを見に行ったりなど、子どもたちの意欲・好奇心を尊重し、自分たちでルールを決める、自分で学ぶ目的をつくりだす学級をつくってきました。

教鞭をとりながら、修士課程を修了し、令和3年度からは博士課程に進む勤勉家。本書では第一章で、特に大事にしている「6つの教育理論」を紹介した上で、第二章では4月の学級開きから、3月の卒業式まで、クボケンのクラスで子どもたちが「自分たちで教室を作り上げていく」様子を紹介しています。


■子どもたちが学習をつくりだす

6つの理論としている1つは教育学者の生田久美子氏が提唱する「TaskとAchievement」。

生田氏(2011)は、「『技術』つまり『行為のテクニック』や『手続きの知識』を追うことができても、特定の状況の中で適切な判断に基づいた表出ができなければ、技能が獲得できたとは言えない」と述べています。つまり、何かが「できた」「わかった」というのはあくまで「その行為が再現できる」ことを表しているにすぎない=taskをこなしているにすぎないのであって、理解したり、技能になったりといったような、その子の内面に腑に落ちた状態に「到達する」こと=achievementとは本質的に異なる、ということを主張するのです。

ここでいうtaskの学びが「習得」「獲得」型学習の産物であることは論を待ちません。こうした学習観から脱却し、学び手の主体的参加を通したachievement=腑に落ちた理解へと誘わなければ、「学んだとはいわない」のです。

これまでの多くの学校の授業観は、この「方法の学び」に終始していたように思います。
(生田久美子・北村勝朗編(2011)『わざ言語——感覚の共有を通しての「学び」へ』慶応義塾大学出版会)




もちろん、必要なことですが、それで終わってしまっていては、情報がトレースされたマシンです。それらをどのように活用したり、それらの意味を問い直したり、自分たち自身でまた新たな方法を構築したり。そうした「プロセス」を経ながら、その方法は一層腑に落ちたものとして理解され、その子のachievementとなっていきます。

そのために、活動への意欲と同時に、学習者自身が自分ごととして目標を創出することのできるような学習展開、持っている知識や技能を活用して問題解決に取り組むような学習環境、そして他者との相互作用によって問題解決しながら、一人一人が持っている知識や技能を活用しつつ、それらが更新されていくような設定が必要になってきます。

この考え方に基づくと、体育科「タッチハンドボール」というゴール型ゲームでの子どもの姿は以下のように展開していきます。

……

Task1=タッチハンドボールをやってみる

Achievement1=一人で攻めて楽しかった

Task2=プレイの原則を知る

Achievement2=とりあえず走って、だめだったらキーパーに渡した方が、形をつくり直せるから、いいと思う。そのために、パスする間に相手を入れてはならない。

Task3=攻めなおし

Achievement3=やみくもに投げて取られることが多くて、無理せずキーパーに戻して作り直しができる。

……

 

このように課題の設定→新たな知識を体験的に獲得→課題の設定……という形で授業をつくっていく過程にこそ本当の「学び」があるのです。



タッチハンドボールの具体例は、第二章7月「子どもたちが学習をつくりだす」で詳述しています。こうした理論に基づいて目の前で楽しむ子どもの学びを支えていく「対話のメカニズム」が本書に通底するテーマです。

 

■「前に倣え」文化からの転換へ

執筆のきっかけは、教育実習を担当した新任教師からのクボケンへのメッセージでした。

「学校にいくのが苦痛です。教育実習のときはあんなに楽しかったのに。」

子どもたちから慕われ、彼らの気持ちや変化を感じる「機微」に富んだ、素敵な学生だったのに、なぜなのだろう。聞いてみると、赴任した学校が旧態依然のままで、面白い授業を提案しようとしても、「別の担任と同じように動け」といった指示があって、何もチャレンジができない様子でした。

「これからの学校」「これからの教師」はどうあるべきなのか。どんな学びが求められていくのだろうか。

子どもの未来の創造につながる「学び」を、心から楽しめる「教師の生き方」を生み出していく手助けになれば幸いです。



●お詫びと訂正
初版第1刷に誤りがございました。謹んでお詫びし、訂正いたします。
P72 
誤:マットを引きずらずに、協力して運んでいる子を見かけたら、丁寧に運んでくれてありがとう」
正:マットを引きずらずに、協力して運んでいる子を見かけたら、「丁寧に運んでくれてありがとう」
編集者の確認不足で、括弧開きが脱落しています。読みづらい思いをさせてしまい申し訳ございません。


「学校にいくのが苦痛です。教育実習のときはあんなに楽しかったのに。」

 数年前、担当していたかつての教育実習生から届いた、一通のメッセージ。子どもたちから慕われ、彼らの気持ちや変化を感じる「機微」に富んだ、素敵な学生でした。もともと教員志望ではなかったこの学生。この教育実習を機に、心境に変化が生じたようで、現在は小学校教員として務めています。思えば実習中「楽しい、楽しい」とよく言っていました。「自分が成長すること、ワクワクする授業を考えることが楽しいんです」。

 大きな希望と学び続ける意思をもって教員になったにもかかわらず、「苦痛でしかたがない」。一体、学校に、教師に、何が起きているんだろう。このままでいいのだろうか。この学生だけではなく、毎年たくさんの「元実習生」から、同様の連絡が届くたび、虚しさと憤りが込み上げてきます。

 社会は、大きく変わろうとしています。いや、すでに変わっていると言ってもいいかもしれません。いつでも、どこでも情報が得られる時代になり、テーンエイジャーが描くキャリアプランは、わずか十年前のそれと大違いです。学校制度が生まれた頃に求められた社会とは、何もかもが異なっています。それなのに、学校はと言えば、旧態依然のまま。前倣え、右倣え。言うことを聞け、同じように動け。学校が「よし」としてきた生き方、考え方、未来の描き方は、とっくに通用しない時代になっているのに。

 「これからの学校」「これからの教師」はどうあるべきなのか。どんな学びが求められていくのだろうか。冒頭の元教育実習生の嘆きをきっかけに、自分の十年間の実践・研究を振り返りながらながら考え、まとめたのがこの本です。学校の「当たり前」を疑い、「学び」とはなんのか、変容とはなんなのか、子どもたちが学習や活動に意味を見出したり、未来を描いたりするためにどうしたらいいのか。自分なりに書籍に学び、授業研究に学び、そして実践をしてきました。もちろん、その全てがうまくいったわけではありませんが、それも含めてセキララに書きました。

 基礎的な理論、実際のエピソード。本編にはいろいろ書いていますが、ボクは決して「真似をしてほしい」「ボクのようにやればうまくいきますよ」ということを言いたいわけではありません。書かれていることは、一つのエッセンス、考える材料です。世の中、数多くのhow-to本が出回っていますが、「手法」だけを真似をしたところで、そこにビジョンがなければ、思いがなければ、残念ながら血肉にはならないのです。

 むしろ、読者の方、一人一人が「こんなふうにしたい」「こんな集団にしたい」「こんな未来にしたい」と願い、描き、それに向かって「必要な情報を得て」「自分の頭で考え」「試行錯誤」しながら、あなたと子どもたちの「世界」を作り上げていくことができるんだ、先生って、そういう風にしてもいいんだ、と感じてもらう一つのきっかけになったらいいな。そんな風に思っています。「教育実習が楽しい」と言っていた、あの頃のように。そうして、全国各地に色とりどりの、オンリーワンの実践・クラスがたくさんたくさん生まれていくことが、ボクの願いです。この本でお示ししているのは、そのためのモデル、考える際の材料に過ぎません。

 ボクは、「当たり前を疑う」「自分の頭で考える」「やる気スイッチくらい自分で押す」そして、「ありたい自分、ありたい未来を自分で描く」。こうしたことを学級作りのビジョンとして掲げてきました。この本を執筆するにあたって、そうやって一緒に過ごし、卒業していった子どもたちが、今、どんな未来を生きているのか知りたくなり、寄稿してもらいました。担任であったボク自身、彼らの本音に驚かされました。本書の中で、ところどころ登場するので、ぜひ、読んでみてください。

 ボクの十二ヶ月を一緒に過ごした後、皆さんの中にどんなビジョンが描かれるのか。「自分もそんな風にしていいんだ」と勇気をもってくれるといいな。そんな皆さんの姿を、誰よりも楽しみにしています。

 令和三年三月吉日 久保賢太郎

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