小中社会科の授業づくり?社会科教師はどう学ぶか

小中社会科の授業づくり?社会科教師はどう学ぶか

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澤井 陽介・唐木 清志/編著

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小学校教師と中学校教師のコラボレーション
義務教育段階7年間を未来志向で俯瞰する
授業改善の基礎・基本

小学校の先生は全科担当で中学校の先生とは立場が異なります。しかし、いったん社会科の授業づくりや教材研究の話になると、小学校の先生と中学校の先生が同じように熱い議論を交わす場面を幾度となく見てきました。
本書は、こうした場面に触発され、校種が異なっても同じ「社会科」の魅力に引き寄せられた先生方が、力を合わせて社会科を活性化させたり発展させたりすること、そのきっかけの一つとなってくれることを願って上梓しました。

一方で、小学校社会科と中学校社会科について全く同じ土俵で語ることには困難な面があります。それが、小・中学校の心理的な距離となっていることも事実です。

そこで本書では、まずは小学校社会科と中学校社会科のそれぞれの特質を踏まえ、違いを確認したうえで、共存・共栄する方向を模索しています。小学校の先生方は小学校だけでなく中学校の先生方の原稿部分を読んでみてください。中学校の先生方も小学校の先生方の原稿部分を読んでみてください。そのうえで、互いの経験を基に「もっとこうしたらどうか」などと改善案を考えてみてください。

ここでは、本書の中からその一端を紹介したいと思います。

指導方法の工夫・改善

学習指導要領は、法令上「教育課程の目標と内容の基準」に位置付けられ、具体的な指導方法には触れず、各学校、各教員が工夫すべきこととしてきました。
その動きに大きな変化が見られたのは、まず平成20年告示の学習指導要領です。このときの改訂では「言語活動の充実」というテーマが盛り込まれました。そしてさらに、平成29年告示の学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」というテーマが盛り込まれ、それを単元のまとまりを通して実現することが求められました。「単元の授業づくり」というスパンで指導方法の工夫・改善が規定されたわけです。

したがって、小・中学校の社会科が共に授業改善を目指す方向は、「単元を通した」「主体的・対話的で深い学び」の実現ということになります。こうしたメッセージは、校種を越え、教科の枠組みをも越えて、共に授業改善を目指す指標として効果的なものであると受け止めます。

また、令和3年1月に中央教育審議会から答申された「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」では、「個別最適な学び」という文言で「指導の個別化」と「学習の個性化」が求められています。そのための具体策として、「ICT環境の活用」や「一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会の提供」が示されました。

答申では、「子供が自らの学習の状況を把握し、主体的に学習を調整することができるよう促して」「粘り強く学習に取り組む態度等を育成すること」などが強く求められています。学習評価の観点の一つである「主体的に学習に取り組む態度」と同様の趣旨であると受け止めることができます。

こうした動きを見ていると、これからの指導方法の工夫・改善の方向の一つは、「ICTを効果的に活用」しながら、「子供一人一人に最適な学び」を「子供が自ら調整しながら」進めることができるよう「学習課題や学習活動を工夫」することではないかと考えることができそうです。

さて、小学校社会科、中学校社会科のそれぞれで、こうした方向をどの程度受け止め、授業改善につなげていけるでしょうか。
少なくとも教師による一斉型の指導のみで授業を進めることでは、改善の方向につながりづらいことは容易に想像できます。GIGAスクール構想を視野に入れると、もはや子供一人一人のタブレット端末やデジタル教科書などを前提に考えることが必要になるでしょう。

また、「学習問題や本時のめあて」(小学校)や「単元や本時の学習課題」(中学校)の内容や設定の仕方、学習活動のあり方についても、これまで以上の工夫が求められることになりそうです。
さらに、同答申のもう一つのメッセージとして「協働的な学び」にも着目することが必要です。具体的には、「子供同士で、あるいは多様な他者と協働しながら、他者を価値ある存在として尊重し、様々な社会的な変化を乗り越え、持続可能な社会の創り手となることができるよう」にし、「地域の構成員の一人や主権者としての意識を育成」することを求めています。

こちらは、従来から社会科が目指している方向と重なります。ただし、小・中学校社会科における具体策としてはどうでしょう。「多様な他者と協働」して学ぶ活動や、そのための内容・課題、教材の「持続可能性」への着目、そして何よりも社会科らしい学習活動である討論や議論の充実などが、今後の小・中学校双方の社会科の発展につながるのではないでしょうか。
(澤井 陽介)

私の勤務する筑波大学は伝統的に、高等学校教員の養成を主としています。そこで、長期研修生や現職教員大学院生として、これまでに多くの高等学校教員を受け入れ、指導してきました。そのような高等学校教員にお薦めするのが、小学校の授業を参観し、授業研究会に参加することです。小学校教員の手によって編まれた図書を読むことも薦めています。

なぜか。
そこで話されたこと、書かれたことが、同じ社会科(地理歴史科・公民科)であっても、小高の間でずいぶんと異なることを感じてほしいからです。そして、高等学校の社会系教科に足りないものを、小学校の社会科に見いだしてほしいからです。
小学校と高等学校ほどでないにせよ、小学校と中学校の間にも、同じ社会科でありながらいくつかの違いがあります。授業研究会での協議を取り上げ、その違いを説明してみましょう。

小学校の教員は、社会科授業を「子供の姿」から検討することを望まれるようです。授業研究会に参加すると、授業中の子供の発言や、ノートやワークシートに書かれたことが検討の材料になっています。
一方で、中学校の教員は、社会科授業で取り上げた「教材の本質」にこだわる傾向にあります。もちろん、「子供の姿」を無視するわけではないのですが、教材解釈が正しいのかどうかという点は、中学校の教員にとってはなくてはならない観点なのだろうと感じています。

「子供の姿」に関心を寄せる小学校教員と「教材の本質」の関心を寄せる中学校教員、この構図は「主体的・対話的で深い学び」や「社会的な見方・考え方」を重視する昨今の教育改革のなかで、よい意味で崩れつつあります。
「子供の姿」と「教材の本質」は、社会科の授業づくりを考えるうえではどちらも大切にすべきことです。両者が統合されることではじめて、社会科の授業はつくられ、評価されるのです。

しかし、まだまだ真の意味での「一貫性」は図られていません。その実現のためには何よりも、教員の意識改革が必要です。さらには、学習指導要領の示し方にも不十分な点がいくつか見られますので、この改革もいずれは必要になってくるのでしょう。

本書のタイトルには「小中社会科」という言葉があります。実はこの言葉を付した図書は、これまであまり出版されてきませんでした。「小学校社会科」と「中学校社会科」は別物に取り扱われ、一部の理論書を除けば、先生方に読まれる一般図書としてはニーズがなかったことが原因です。そのような意味で、本書は「改革の書」です。
社会科の在り方を未来志向で考える際に、多くの先生に読まれることを期待しています。
(唐木 清志)

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