コロナ禍に世界の学校はどう向き合ったのか —子ども・保護者・学校・教育行政に迫る—
コロナ禍に世界の学校はどう向き合ったのか —子ども・保護者・学校・教育行政に迫る—

コロナ禍に世界の学校はどう向き合ったのか —子ども・保護者・学校・教育行政に迫る—

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園山 大祐・辻野 けん/編著

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「先生のがんばり」に依存する日本 次なる危機に備えるために 世界の教育行政のコロナ対策を分析

今もなお続くコロナ禍は、人間の生命を脅かすリスクであると同時に、教育においては非常時に子どもの成長をいかに支えるかについて各国に難題を突き付けています。教育関係者のみなさまの日々のご尽力に感謝申し上げます。
他国の教育行政におけるコロナ対策を検証する中で、日本の政策は「現場任せ」だったことが見えてきました。ワクチン接種の優先もなく、遠隔教育の体制が整っていなかったことも初動の遅れにつながりました。
本書では、24か国の教育現場のコロナ対策を教育学者らが収集し、分析しました。
そこから分かったのは「平時の教育の取組と国における教育の優先順位が、危機への対処につながる」ことです。ここではフランスと日本について対応の違いを記し、上意下達ではなく、平時から地方・学校の裁量を高めることの重要性を訴えます。

1. 備えが生きたフランス

① 教職員へのフォロー
パンデミック宣言後、教師の給与の見直しやデジタル対応として2021年1月より毎年150ユーロの手当が支給されることになりました(2020年12月5日付デクレ(日本における「政令」)2020-1524号)。加えて、ワクチン優先と、接種への抵抗や基礎疾患のある教職員への配慮など論争も早くから起きていました。加えて、学校では対策に人手が必要だということで、即座に非常勤講師が加配されるなど大胆な予算措置が行われました。

② 遠隔教育の整備
フランスでは教育法典において、「学校に就学することができない子どもの教育を主として保障するために、遠隔教育に係る公共サービスを組織する」(教育法典第3章第1節L131-2条第2項)とされています。この法典を根拠として設置されている「国立遠隔教育センター(CNED)」を中心に、遠隔教育のための教材が用意されました。コロナ禍以前では主に、不登校や院内学級などで主に使われていました。
コロナ禍では、さらに「自宅学級(Ma classe à la maison)」というサイトの充実強化がとられ、3分の2に相当する50万人の教師が、遠隔教育で活用しました。さらに、国営テレビ局(France4)とも提携し、既存の子ども向けの教育番組「Lumni家(la maison Lumni)」の普及拡大を実施しました。具体的には、計700以上の授業番組を国民教育省の正規教師によって制作・配信しました。

③ 通学継続と格差是正策
フランスでは感染者数の波が日本よりも激しいですが、初期の休校を除いては、通学継続を基本に考えられてきています。ユネスコによると、2020年3月からの1年間で、フランスは10週間で、日本の11週間、ドイツの28週間と比べて休校日数が最も少なかったのでした。
2020年3月16日より、急激な感染拡大から、全国的な休校に追い込まれましたが、すぐに遠隔授業の対応及びコロナ禍に応じたオンライン教育や教室環境の体制づくりと臨時職員の加配などが行われました。5月11日より段階的な登校が実施され、6月22日からの2週間は全学年の登校へと拡大されました。7月には、首相府直属の疫学の専門家による高等保健委員会によって、教育機関に子どもを受入れるための規則が決められました。

また、格差是正策として、休校中において、生活困窮家庭への給食や朝食の整備、自宅にデジタル環境がない場合の対応(紙媒体の郵送や携帯による通信等)などの対策がなされました。

④ フランスのまとめ
コロナ禍は、より公正な社会を実現するために、有事の際に何ができるか各国で試されたとも言えます。フランスの施策から共通して感じられるのは、アナログとデジタル、学校と家庭、教科間、教科教育と生徒指導、など別々に存在していたものを協働、連携、横断、協力、連帯などでつながりを模索することにあります。
何よりも多くの国民が、教師は高い専門性を有しているエッセンシャルワーカーであるという社会的地位を再評価していることが印象的です。

2.「教師の頑張り」に依存した日本

① 教職員へのフォロー
教職員について、ワクチンの優先接種は一部自治体を除いてありませんでした。
休校中は学校が、子どもたちに多くの課題を出し、地域によっては学習用動画の配信などを行いましたが、「その学習時間を授業時数に含めて扱うものではありません」(文部科学省「指導要録・学習評価等に関することQ&A」)とされ、多くの学校では休校期間中に失われた授業時数の確保に奔走することとなりました。例えば文部科学省の令和2年6月の調査では95%の小学校が長期休業期間を短縮するとしています。このような長期休業期間の短縮の動きは他国ではほとんど見られず、日本の特徴と言えるでしょう。
休校中でも基本的には勤務することとされたにもかかわらず、学校再開後の土曜日や長期休業期間も授業実施のために出勤せざるを得なくなったことで、教師の負担が増大したと考えられます。

② 遠隔教育の整備
一斉休校が始まった当初は、学校教育におけるICTの活用状況が芳しくないこともあり、学習動画の活用や同時双方向型オンライン指導は過半数以上の学校では行われませんでした(文部科学省「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた公立学校における学習指導等に関する状況について」)。
文科省は休校中の学習をサポートするために、3月2日に「子供の学び応援サイト」を公開しました。印刷して使用できる学習用ドリルのほか、学習の補助となる動画などがあり、基本的に無料でアクセスできます。しかし、休校を受けて積極的に作成に乗り出した教育委員会による動画が少しずつアップされていったほかは、NHK for Schoolや民間企業、教員養成大学によって作成されたコンテンツがほとんどで統一感がなく、教師と子どもにとって活用しやすいサイトになっているかには疑問符が付きました。

③ 通学継続・格差是正
コロナ対策の休校措置について、文科省は2つの通知を出しました。その2つ目として2020年2月25日に「児童生徒等に新型コロナウイルス感染症が発生した場合の対応について(第二報)」が通知されました。臨時休業については主として学校設置者が判断するという原則が確認されており、その上で、判断を行う際には必要に応じて都道府県等の衛生部局や首長部局との相談が必要であるとされていました。
しかしながら、この通知が出された3日後、新型コロナウイルス感染症対策本部において安倍晋三首相(当時)より3月2日から春休みまで小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校における全国一斉の臨時休業を要請する方針が示されました。先の通知や、法律に基づく出席停止及び学校の臨時休業の措置に関する方針を無視した、全国一斉休校の要請だったという意見もあります。
この首相による一斉休校要請は、感染症対策の専門家会議への打診がなかったとされ、専門家のエビデンスに基づいた施策決定ではない政治的判断によって、学校現場へ大きな混乱をもたらすことになったとも言えるでしょう。その要請に約99%の自治体が従い、地方の裁量権があるとされながらも、実際には中央集権的な性質が日本の教育行政に見られることが顕在化しました。
また、日中の子どもの居場所としての学校が休業になったことで、保護者が日中不在になる子どもの昼食などを、どのように確保・提供するかも問題でした。文科省は休校中の学校給食費の保護者への返還等を行なって保護者の負担にならないように求めたものの、補助金給付の形で、各自治体に一任しました。

④ 日本のまとめ
このように不十分な環境の中で、重要な機能を果たしてきた教師にも関わらず、日本ではエッセンシャルワーカーとしての認識が薄く、他国に比べてもワクチンの優先接種や積極的なPCR検査の実施を求める声が上がりづらい状況となっていました。
「現場の先生の頑張り」に依存して切り抜けましたが、教員数不足などの問題が取りざたされて久しいです。子どもを育てる保護者や教職員の自助や共助での対応には限界があります。中央や地方の教育行政が公助への責任を果たし、上意下達ではなく、現場の裁量を拡充した上で、各機関の役割分担とさらなる連携が必要とされているでしょう。

本書では、日本とフランスを含む24か国について、全35章で取り上げています。

教育現場への支援は国ごとに驚くほど違う
危機対応で見えた、世界24か国における教育の特質

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