転移する学力
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商品説明
学びを自在に使いこなす「学習の転移」とは?
本書の概要
文部科学省の研究開発指定を受け実践を積み重ねてきた、山口大学教育学部附属山口小学校の取組をもとに「学習の転移」とは何かを紐解く。各教科等の見方・考え方を中心にした“明示的な指導”と汎用的認知スキルと非認知スキルの往還を重視する新教科“創る科”で、少なく教えて豊かに学ぶ!
著者紹介
編著者
奈須正裕
上智大学総合人間科学部教育学科教授。第12期中央教育審議会委員。主著に『「資質・能力」と学びのメカニズム』『個別最適な学びと協働的な学び』(ともに東洋館出版社)など。
岡村吉永
山口大学教育学部大学院担当教授。2011~2013年度および2017~2019年度に山口大学教育学部附属小学校長を務め、新教科「創る科」を創設する。
著者
山口大学教育学部附属山口小学校
子どもの意識を大切にした授業をもとに、平成30年度から文部科学省の研究開発指定を受け、「創出と受容、転移をコアにした教科融合カリキュラムに関する研究開発~『創る科』の創設を通して~」をテーマに、学びの自覚化と学習の転移に関する研究に取り組んでいる。
本書からわかること
“転移”する学力
転移(transfer)とは、先行する学習が後続の学習や問題解決に何らかの影響を及ぼす現象のこと。所有する知識や技能が、当初学んだのとは異なる対象や文脈の問題場面に活用され、質の高い問題解決を成し遂げるといったことが、その典型です。このような転移の働きを期待するからこそ、学校はこれまで、多くの知識(コンテンツ)を教えてきました。
しかし、1970 年代までに心理学者たちは、転移はそう簡単には起きないし、その範囲も限定的であると結論付けます。
各教科等の見方・考え方を中心にした明示的な指導
では、そのためには、どのような授業が求められるのでしょう。従来、なされてきたのは、見方・考え方を踏まえた質の高い学びを繰り返し経験させるアプローチでした。しかし、単に数多く経験しただけでは不十分です。本質的には同じ原理の異なる現れに過ぎない複数の学習経験を俯瞰的に整理・比較・統合することで、明晰な自覚を伴い、自在に転移のきく見方・考え方にまで高めていく必要があります。
山口大学教育学部附属山口小学校の〈創出〉〈受容〉〈転移〉
附属山口小学校では、いわゆる「明示的な指導」に学びながらも、さらに日々の授業づくりの中で着実に子どもたちの学びの自覚化を促すべく、〈創出〉〈受容〉〈転移〉という三つの過程をキーワードとして位置付けて実践を深めてきました。
授業において丁寧に明示性を担保することによって、子どもたちは、自覚化した価値を、はじめて出合う場面に自発的に転移させていきます。
なぜ、「創る科」なのか?
同時に、附属山口小学校では、2017年、「創る科」という新教科を創設しました。創る科は、最終的に子どもが優秀な学び手になることを目指し、「学び方」を学んで、使いこなせる道具としていくことが特徴です。この学習で扱う価値(汎用的認知スキル)として、(1)具体化・抽象化する力、(2)比較する力、(3)他者に伝える力、(4)問題を見出す力、(5)情報を収集・処理する力、(6)関連付ける力、(7)批判的思考力、(8)先を見通す力という8項目を整理し、独自の実践を重ねています。
「学習の転移」を実践したい先生へ
本書では、同校の各教科等の見方・考え方を中心にした“明示的な指導”と汎用的認知スキルと非認知スキルの往還を重視する新教科“創る科”の実践を計19本掲載するとともに、授業づくりの考え方とプロセスを詳述。
編著者である奈須正裕教授(上智大学)による転移概念の整理と「創る科」を創設した岡村吉永教授(山口大学)による汎用的認知スキルと非認知スキルの往還に関する整理で、理論部をカバー。1冊を通して「転移」を十分に検討できる内容を目指しました。
こんな先生におすすめ
・教育心理学で言われる「学習の転移Transfer of Learning」が、各教科の具体の実践のなかでどのように働くものなのか知りたい先生
・教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成について、最新の実践を読みたい先生