月刊 理科の教育2024年1月号
レビューを書くと100ポイントプレゼント
商品説明
理科教育の最新動向をタイムリーにとらえた特集テーマ、バラエティ豊かな連載によって、研究や授業実践に役立つ情報を紹介する雑誌です。「理科教育の本質を追究する」をモットーに、昭和27年の創刊から現在まで、日本の理科教育の進歩と発展に貢献してきました。
特集:「自分って意外とすごい」と思える理科授業
自己肯定感を育むあの手この手
理科の授業で、児童生徒が「自分って意外とすごい」と思える瞬間とはどんなときでし
ょうか。テストの点数がよかったとき、授業中に先生に褒められたとき、友達の質問に答
えられたとき、グループワークで誰も考えられなかったアイデアを出したとき、ワークシ
ートのコメントに納得したとき、難しい実験がうまくいったとき、継続的に観察を終えた
とき、答えのない問いに自分なりの納得解を得たときなどに、 自己肯定感が高まるのでは
ないでしょうか。学びの土台となるようなザックリとした自己肯定の気持ちを、児童生徒
も先生方も無意識のうちに授業の中で育んでいるのでしょう。
自己肯定感の定義は曖昧ですが、「成否にかかわらず自分には価値観があると思える感
情」「ありのままの自分を受け入れる感情」などと言われています。2017年に独立行政法
人国立青年教育振興機構が高校を対象に実施した調査では、日本はアメリカ、中国、韓国
に比べて自己肯定感が低い傾向にあると分析しています。また、 2019年の「子ども・若
者白書」の結果を受けて、内閣府では「日本の若者の自己肯定感の低さには自分が役に立
たないと感じる自己有用感の低さが関わっている」とコメントしました。
自己肯定感を含めた「非認知能力」 * が注目されたきっかけは、米国のジェームス・ヘッ
クマン(ノーベル経済学賞)の研究における「幼児教育において非認知能力はその後の人
生に大きな影響を与える」という主張です。もちろん、幼児教育に限らず、非認知能力は
何事にも前向きに取り組む原動力となり得ることは容易に理解できます。
それでは、具体的にどのような考え方や方法で自己肯定感を高めることができるのでし
ょうか。また、自己肯定感が高まると授業はどうなるのか、先生方はそれをどのように見
取って授業に生かしているのかなど、本特集では、児童生徒の「自分って意外とすごいじ
ゃん」を引き出すあの手この手のエピソードを寄せていただきました。また、「ヨッシャ
ー!今日はいい授業だった!」というように、先生自身が自己肯定感の高まりを感じたエ
ピソードも寄せていただきました。読者の皆さんにとって、あたたかな心で読むことがで
きる特集になれば幸いです。
また、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して(答申)」では、個別最適な学びと 協働的な学びの一体的な実現が求められています。特に「協働的な学び」では、多様な人 同士の関わり合いや、地域社会での体験活動など、様々な場面でリアルな体験を通じて学 ぶことの重要性が指摘されています。また、「個別最適な学び」において児童生徒が自ら の学習の状況を把握し、主体的に学習を調整することができるように促していくことも求 められています。これらは、主体的・対話的で深い学びを具現化していくキーワードでも あり、協働的な「振り返り」や「対話」の重要性にもつながると考えます。
そこで本特集では、「『やってみよう! やってみたい!』を引き出すキャリア発達支援 ~地域が教室、地域が学校~」と題して、特別支援教育における、学びと生活や学びと学 びをつなげてきた地域協働活動について再考します。児童生徒のキャリア発達を促してき た地域協働活動の意義や教育的効果、学校での学びと将来の「はたらく」へのつながりに ついて、有識者から示唆をいただきます。また、知的障害のある児童生徒にとっての地域 や生活とのつながりを意識した実践を紹介し、今の学びが明日の生活、そして将来につな がり、豊かな社会生活を送るために必要な豊かな学校生活に向けた教育実践について、今 一度、確認する機会とします。
*非認知能力は数値化できない能力のことで、自己肯定感、自己制御、粘り強さなどを指す
。非認知能力の高い人は,学ぶ土台がしっかりできていると言われている。
(『理科の教育』編集委員会)