白石範孝の国語授業の教養 -活動の「目的・方法・つながり」を考えるー
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商品説明
国語授業であたりまえに行われている「定番活動」を、何のために(目的)、どのように教えるのか(方法)、そしてどのような言葉の力の獲得に導くのか(つながり)から問い直し、活動の本質を解説します。
国語授業の定番活動
物語文の授業では、初発の感想を書かせたり、登場人物の気持ちを考えさせたり、クライマックスを探したり、また説明文の授業では、文章構成図にまとめたり、主張や要旨を捉えたり、他にも「まとめとふりかえり」を書かせたり、音読をさせたり。
国語授業には、そのような「定番活動」ともいうべき授業スタイルがあります。
しかしながら、その活動の目的を明確に理解して、授業に取り入れている先生はどれくらいいるのでしょうか。毎日のように行われる国語授業で、その活動が、どのような「言葉の力」に結びついていくのか、どれくらい意識できているでしょうか。
本書では、国語授業で行われてきたそのような「あたりまえ」の活動を、「目的・方法・つながり」から問い直すことで、汎用的な言葉の力を獲得する授業づくりを提案しています。
「話し合い」の目的・方法・つながり
本書から一例を挙げましょう。
◆「話し合い」活動の課題
国語授業における「話し合い」で子どもたちの様子を観察してみると、次のような姿が見えてきます。
- ・課題に対して「自分の考え」をもつことができていない。
- ・自分の考えをもつ段階で、「どうして?」「なぜ?」という疑問が発生し、それが解消できていない。
- ・課題で、何を求められているのかがわからない。
- ・「~について足します」「~に反対です」というような形式的な話型を使うことになっているが、うまく使えない。
- ・「発言」や「話し合い」が苦手で、つい聞き手側に回ってしまう。
- ・「正解」や「まとめ」を求めることにこだわりすぎる。
- ・相手を言い負かそうとする。
これらのことは、
――などの課題を浮き彫りにしています。
では、これらの課題を解決する、「話し合い」における目的・方法・つながりはどのように考えたらよいのでしょうか。
話し合いの「目的」:全員一致の「答え」「結論」を出すことではない。「自分の考え」をもつため。
国語の授業における「話し合い」の目的は次の3つです。
授業における「話し合い」の目的
- ①「話し合い」の中で発言するために、自分の考えを整理する。
- ②自分とは異なる考えに触れる。
- ③自分とは異なる考えに触れたことにより、自分の考えを深めたり、変えたりする。
課題に対して「自分の考えをもつ」のは、そう簡単なことではありません。多くの子どもの中に「迷い」や「疑問」があります。それを「自分なりの明確な『考え』をもてている/もつことができていない」という二つに乱暴に分けてしまうことは危険です。
「学び」は、わからなかったものがわかるようになる過程の中で生まれるからです。そこで大切なことは「考えの整理」です。単に「わからない」「こたえられない」で終わらせてしまうのではなく、「どうわからないのか」「なぜ答えられないのか」を明らかにすることによって初めて学びが生まれるのです。
授業における「話し合い」の目的は、子どもたち一人ひとりが「学び」を得ることです。そのことを見失わないことが大切です。
話し合いの「方法」:「わからない」「疑問がある」子ども→自分の考えをもっている子ども、の順に発言し、交流させる。ただし結論を求めない。
① 課題に対し疑問、悩みをもっている子どもから話をさせる
「できない!」「わからない!」「どうして?」という子どもの「困った」を、話し合いの課題として共有します。このような子どもたちを話し合いのスタートにすることで、全員参加の話し合いを目指すことができます。また、「自分の考え」をもつことができたと思っていた子どもの中にも、これらの疑問・迷いの視点を聞くことによって、自分の考えが不十分であったことに気づく場合もあります。何を話し合う必要があるのかを初めに提起、整理するためにも、疑問や迷いをもっている子どもから発言させる意味があります。
② 課題に対して「自分の考え」をもつことができた子どもが発言する
①の子どもたちが発言した後なので、「自分の考え」をもつことができた子どもも発言の際には①で示された疑問・迷いを踏まえたものとなり、説明も深まることが期待できます。このとき、「自分の考えをもつことができたと思っていたけれど、①の子どもたちの発言を聞いて自分も迷いが生じた」といったケースも許容することが大切です。
③ ①②を踏まえて話し合いをする
①②の過程を経ているので論点が明らかとなり、何を話し合えばよいのかが自然と明らかになっています。このとき、①の子どもたちから②の子どもたちに対してさらに説明を求めるといった形にすると、疑問点の解消や、見逃されていた疑問のあぶり出しにもつながります。
また、②の子ども同士では、同じところと違うところを整理し、違うところについては、なぜ違っているのかを話し合わせます。
④ 結論を出すことを求めない!
話し合いでは、グループとしての「結論」を求めません。仮に全員が同じ考えになってしまっているグループがあったら、「もっと他の考え方はできないかな」などと投げかけ、多面的に検討することを促す。
⑤ ④までの内容について、クラス全体で共有する
各グループでの話し合いの結果を発表しますが、このとき、「私たちの班では〇〇だと考えました」と断定的に発表させるのではなく、「疑問や迷いなども含めどんな考えが出たのか、話し合いではどんなことが話題になったのか、どんな意見が出たのか、最後まで疑問や迷いとして残っているのかはどんなことなのか」を発表させます。
これによって、各グループで話し合いの内容がクラス全体での共有につながります。これも一つの「共通の土俵」だといえるでしょう。その後の授業も、この共通の土俵を前提として進めることができます。
話し合いの「つながり」:「わからない、できない」という素直な思いを表現できることで、対話的で主体的な学びにつながる。さらに、互いを認め合い、「わからない・できない」も尊重できる学級づくりにもつながる
授業における「話し合い」は、学級会になどにおける話し合いとは異なります。しかし、「わからない」を素直に表現できる環境があってこそ、学級会などでの話し合いの場を含め、一人ひとりがさまざまな場面に主体的に取り組むことができる学級づくりに結びついていくのです。
以上のように、結論に向かって集約していくための話し合いから、それぞれに「自分の考え」をもたせ、深めるための、いわば問題意識を共有し、学びのスタート地点とするための話し合いへとシフトチェンジをする必要があるのです。
汎用的な言葉の力の獲得に向けて
本書で提案する「目的・方法・つながり」は、すべてその教材・活動「で」教えるべき内容を明確にするために必要な視点です。それは、教材「を」教えることに終始してきた国語授業からの脱却です。「ごんぎつね」で学んだことが「大造じいさんとガン」で生かされるように、自らの学びを自覚化し、新たに出合うテキストに意欲的に向かえる子どもを育てる力こそが、国語を教える教師として必要な教養といえるでしょう。
こんな人におすすめ
国語授業で何を教えたらよいかわからない先生、自分の国語授業に自信がない先生、そして今あらためて、自分の国語授業を見直したい先生におすすめの1冊です。