第1回 生徒指導提要を現場の目線で読む

第1回 生徒指導提要を現場の目線で読む - 東洋館出版社

漫画制作:ヤッシー(@84yame1000

私の「現場目線」からみた重要ポイント

学校から社会へ。児童生徒が自己指導能力の育成が重要だと考えるワケ

第1章で私が特に重要だと感じたポイントは2つあります。
1つ目は、1節にある「自己指導能力の育成」です。自己指導能力という言葉は改訂前の生徒指導提要と同様に1節で登場しています。さらに、p.13に『生徒指導の目的を達成するには、児童生徒一人一人が自己指導能力を身に付けることが重要です。』と述べられており、生徒指導の目的を果たす根幹となっていることが読み取れます。自己指導能力そのものの定義は、p.13に『児童生徒が、深い自己理解に基づき、「何をしたいのか」、「何をするべきか」、主体的に問題や課題を発見し、自己の目標を選択・設定して、この目標の達成のため、自発的、自律的、かつ、他者の主体性を尊重しながら、自らの行動を決断し、実行する力』とあります。

(…私、自己指導能力獲得できているかな。書いていて不安になってきた。でも、この能力は生きていくうえで必要不可欠だと思う。果たして私は「主体的に問題や課題を発見」できているのだろうか。まずは深い自己理解をするところから始めます…)

「自己指導能力の育成」について言及されている中で、特に私が注目したのは、p.14上部の『学校から学校への移行、学校から社会への移行においても、主体的な選択・決定を促す自己指導能力が重要です。』という一文です。振り返ると、どうしても、私は児童に対して、「クラスの中で困っている人を助けてあげよう」とか、「今、クラスのためにできることは?」等の声かけをよくしていて、「今このクラスの中」だけで考えているなと感じます。しかし、実際私たちはこれまで、小学校→中学校→高校や、大学→就職のように、現在所属している集団から別の集団への移行を繰り返してきています。そう考えたときに、目の前の児童生徒が今後を生き抜くために、今このクラスの中でどう自己指導能力を獲得させるかを考える必要があるのだなと思いました。

(…さて、何に気をつけたらいいのだろう。果たして、4月から今日この日までの中で、少しでも児童が自己指導能力を獲得できているだろうか、心配だ。「自己の目標を選択・設定できるような場づくり」はできていたのだろうか。でも、クラスの子のために動く姿や助けを求める姿は、潜在的にこの能力を働かせているのかもしれないな…)

生徒指導の本質は「悪い部分を直す」ではなく、「児童生徒の発達を教職員が支える」こと

2つ目は、2節にある2軸3類4層構造(生徒指導提要p.19 図2)です。後に語られる第4,5,8,9,10章では、この図が用いられています。また、この図は、生徒指導を「時間・課題性・対象」という観点から類別し、構造化されています。この部分を特に理解することによって、日常で意識すべき点や学校で行われている取組の意図がより明確になり、指導に生かしていけるのではないかと考えたためです。

特に注目したのは、2軸のうち「常態的・先行的生徒指導」、3類及び4層のうち「発達支持的生徒指導」の部分です。生徒指導というと、私は未だに「何か悪い部分を直す」というイメージがありますが、p.20には『教職員は、児童生徒の「個性の発見とよさの可能性の伸長と社会的資質・能力の発達を支える」ように働きかけます。』とあります。つまり、発達支持的生徒指導は、児童生徒の発達を教職員が支える形であり、上記のイメージとは全く異なるものとわかりました。例として『挨拶、声かけ、励まし、賞賛、対話、及び、授業や行事等を通した個と集団への働きかけ』が挙げられています。人権教育や道徳教育、情報モラル教育など、いじめや暴力行為等の未然防止教育はもちろん大切だと思いますが、それを行う土壌ともいうべき、日々の教職員と児童生徒の関係性がないと効果が薄くなってしまう気がします。そのため、特定の課題未然防止教育よりも、日常的な発達支持的生徒指導が重要だなと考えました。

「私の現場」で生かすとしたら

児童生徒の自己指導能力育成のために教師側が今授業を通じてできることとは

「自己指導力の育成」の視点を私の現場に生かすとしたら、結局、授業改善の一言に尽きると思います。(そもそも、「主体的・対話的で深い学び」を実現できていないので、話のレベルが低くなってしまいますが…)。自己指導能力の獲得・育成のために、まずは「児童自身が自己の目標を選択して、実行できる」ような授業の場面をつくる必要があると思います。例えば、算数の教科書には、授業の後半に練習問題が設定されていますが、その部分を「全て解く/一部を解く/複数の方法で解く/そのほかの問題を解く/一人でやる/協力して解く」のように、問題を解く量や質の部分・どうやって解くか方法の部分を提示して選択できるようするなど…さまざまな方向性があると考えますが、これまでは私(教師側)から一方的に「これをやろう、これを考えて」と伝えて、児童もそれのみをやる、の構図だったので、裁量権を児童へ渡し、そこでの児童の様子を価値づけしていくことで、自己指導能力を育んでいきたいと思います。同時に、「間違えるの嫌だから発表したくない」と話す児童を生んでしまったので、大反省です。改善策は今すぐには思いつきませんが、何とかしなければいけない。模索中です。

発達支持的生徒指導において、現場で意識しておくべき3つめの重要なポイント「チーム支援」

発達支持的生徒指導については、先ほどの授業の部分に加えて、日常的なやり取りの意識をより向上させること、そして「私の「現場目線」からみた重要ポイント」では述べませんでしたが、職場内外を問わないチーム支援の3つが意識したい部分です。よく、大学時代に「変化を見逃すな」と言われましたが、果たして私はどれだけ児童の変化に気づくことができたのか。気づいたとしたらどんな声かけをしていたのか。振り返ると、児童から「〇〇ということがあった」といった第三者からの報告が多いように思います。私のほうから「表情少し暗い気がするけど何かあった?」というような声かけはできていなかったです。受け身ではなくもっと自分から日常的なやり取りをしていかなければいけないなと感じます。教師ー児童、児童ー児童の関係性を軸に、教師ー教職員の関係もつくっていくことが大切だと思います。チーム支援について、不安な点や問題の解消は、若手一人にできることなんて限られますし、だからこそ関係者での情報共有を大切にしたいです。今現場にいる先輩方やSC(スクールカウンセラー)をはじめとする関係者との共有にかかるコストと、共有しなかったことによるデメリットを天秤にかけると、前者をとったほうが視野が広がるし、とても価値を感じるので、自分から働きかけて情報を共有して、助言をいただきながら行動することを意識したいです。

生徒指導提要第1章を読み終えて

正直、教員採用試験が終わってから開くことがなかった生徒指導提要。当時、面接で答えた「共感的な人間関係の育成をする/自己存在感を感受できる学級経営」の難しさを痛感する日々でした。しかし、難しい/技量がないから諦めるのではなく、何かしら手立てを考え、実践し、分析し…自分の中でサイクルを回し、また先輩や目の前の児童から学びながら新しいサイクルをつくり、児童の自己指導能力を少しでも育むことが、長期的な視点に立つと一層重要なのだなと第1章を読んで感じました。
総論を読んだからこそ、仕事に落とす方法を見つめ直す必要があり、一方で、各論ではないからこそ柔軟に考えることができそうな、そんな感覚をもっています。現場での経験というカードが少ないからこそ、生徒指導提要の総論を読み込んで少しでもそのカードが増やせたような気がします。「若いからタブレットの質問をしよう」を先輩との繋がりのきっかけと捉え、「若いから元気」を情報共有の足と捉え、教職員の同僚性を高める1ピースとしてできることを探したいと思います。

次回2/15(水)公開では、渡邊雄大先生の第2章「生徒指導と教育課程」についてお伝えします。