第2回 生徒指導提要を現場の目線で読む

第2回 生徒指導提要を現場の目線で読む - 東洋館出版社

漫画制作:ヤッシー(@84yame1000

私の「現場目線」からみた重要ポイント

重要ポイントその1:自己存在感を感受する授業に

私がまず注目したのは、「授業は学習指導の場というイメージが強く、生徒指導との関係が十分に踏まえられていない」という生徒指導提要での指摘です。

生徒指導提要では、教育課程の編成や実施にあたってのポイントは教科の指導と生徒指導を分けて考えるのではなく、それらを相互に関連付けることと書かれてあり、その際、「発達支持的生徒指導」の観点が重要とされています。

では、教科の指導と生徒指導の両者をどうすれば充実できるのでしょうか。生徒指導提要には、教科の指導と生徒指導を一体化させた授業として、4つの観点が紹介されています。

それは、

(1)自己存在感の感受を促進する授業づくり
(2)共感的な人間関係を育成する授業
(3)自己決定の場を提供する授業づくり
(4)安心・安全な「居場所づくり」

に配慮した授業です。

私は(1)自己存在感を感受する授業づくりが特に重要だと感じました。この自己存在感を感受する授業づくりについての理解が私からみた第一の重要ポイントです。
生徒指導提要では、自己存在感を感受する授業の工夫として、「個別最適な学び」を実現させることが大切と書かれています。

「個別最適な学び」を軸に展開されている授業を想像したとき、児童生徒が、自分たちの世界に入って黙々と作業する姿を思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。これが生徒指導にどう結びつくのかわかりにくい面があると思います。このわかりにくさを解決する鍵は、子どもたちの目線にあると思います。

自分ができる・わかる問題を自分のペースで解く個別化は、人と比べることがなく、焦りや不安が軽減され、教室にいる安心感や達成感に繋がります。

また、多様な課題を設定し、自分の持ち味を生かしながら学習することを保障する個性化は、自分の得意なことを生かせた、自分の興味のあることを認めてくれた、という自己有用感につながります。

生徒指導の目的の一つは、児童生徒一人一人の個性の発見とよさや可能性の伸長を支えることにあります。ですから、教員が子どもたちの立場に立って、安心する・わかる・楽しい授業を行うことが発達支持的生徒指導であり、その工夫によって、「教科の指導と生徒指導の両方が充実した授業」ができると言えます。

重要ポイントその2:特別活動は、目的を明確に

私から見た重要ポイントの2点目は、特別活動における生徒指導の捉え方です。
先に上げた(1)~(4)までの、4つの授業を読み返してみると、4つの観点と特別活動の目標が極めて近いことがわかります。
生徒指導提要では、特別活動は「生徒指導の目的に直接迫る」とも書かれています。つまり、特別活動の目的を明確にして充実した取り組みを行えば、自然と生徒指導も充実するということです。このようなことから、生徒指導提要p.59には、特別活動の全体目標がカラーで載せられています。

昔から特別活動は「為すことによって学ぶ」教科と言われてきました。しかし、学校では行事や学級での係活動などを繰り返していく中で、そもそもの目的を忘れ、活動だけが淡々と引き継がれていく場合もあると思います。
「活動あって学びなし」にならないために、まずは特別活動の目標を確認することが大切です。特別活動では、「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」という3つの視点を設定しています。このキーワードを意識しながら、行事や学級活動がどの力を伸ばすことになっているのかを見直すことが、特別活動と生徒指導の充実につながります。

図1教科指導と生徒指導の充実のポイントについて
(「生徒指導提要」p.39~p.66を参考に筆者作成)

「私の現場」で生かすとしたら

「個別最適な学び」についてはICTを取り入れる

私の現場で学びを生かすとしたら、全学級で、授業中の一人ひとりの成長を支える取り組みをすることを目指します。協働的な学びは、子どもたち同士が話し合い、共感的に授業が進んでいくイメージが強く、生徒指導との関連もわかりやすいと思います。

一方で、個別最適な学びは、生徒指導との関連がイメージしにくい面があるので、まずは個別最適な学びの充実が、発達支持的生徒指導につながり、子どもたちの自己存在感の感受を促すことができるというイメージを校内で共通理解していきたいと思います。
そのために、まず「個別最適な学び」と「協働的な学び」の授業を行い、生徒指導の観点も交えながら校内の先生方と意見交流します。
特に個別化については、先生方で捉え方に差があると思います。そこで、個別化の共通理解のためにICT担当の立場から2つの取り組みを行いたいと思います。

1つは、個別化に対応するICTツールを紹介するだけではなく、ミニ研修等でそのツールを実際に使用し、感想を交流するという取り組みです。
こうすることで、個別化された授業を子ども目線で追体験することができます。

学習内容の理解が難しい児童や発展的な内容を学習したい児童など様々な立場でフィードバックをすると、より効果的だと思います。

また、個別化に対応した授業の公開も考えられます。授業公開では、全員が活発に会話する場面を公開することが多いように思いますが、一人ひとりがツールを使いながら、自分たちのペースで学習を進める場面を公開することで、校内の先生方の授業観を広げていくことができると思います。その際、児童の振り返りに、個別に学習した場面の感想を書く活動を設定することで児童の感じ方を見取ることができると思います。

特別活動は集団だけに注目しない

次に、特別活動の充実のためには、集団だけに注目しないことを全校的に意識できるような取り組みを行いたいと思います。行事を行う際に出来映えが気になったり、学級のまとまりが気になったりすることがあると思います。
しかし、その集団を構成している一人ひとりに目を向け、子ども目線に立つことが必要です。もし、行事の練習時期に職員室で出来映えが気になっている先生がいたら、個人の成長に目を向けるような声かけができるのかもしれません。先に上げた3つの視点で、現状を捉え直し、一人ひとりが安心する・わかる・楽しいと思えるような指導の工夫を繰り返すことで発達支持的生徒指導が全校に浸透していくと思います。

生徒指導提要第2章を読み終えて

「教科の指導」と「生徒指導」の両者の充実を図るためには、「協働的な学び」と「個別最適な学び」を軸に、すべての子どもたちが「安心する・わかる・楽しい」授業に近づけること、また、特別活動においては「人間関係形成」「自己実現」「社会参画」の3つの視点で行事や学活を見直し、改善していくことが必要だと思います。

次回2/17(金)は、小林雅哉先生の第3章「チーム学校による生徒指導体制」についてお伝えします。

図2 生徒指導提要第2章の重要ポイント(作成:わかめ先生@senseiwakame