学級担任として心掛けたいこと

執筆者: 長田柊香

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新年度がやってきました。新しい学年、新しい学級を持つという先生も多いのではないでしょうか。どの学級においても、子どもたちが「このクラスが楽しい」「このクラスで頑張りたい」と思えるようにすることは非常に大切です。1年間や2年間、学校によってはそれ以上の時間を共に過ごす学級は、子どもにとっても教師にとっても、居心地のよい場所でありたいものです。


今回は「学級担任として心掛けたいこと」というテーマで5冊選びました。選んだ本は、いわゆるハウツー本ではありません。著者である先生たちが、様々な失敗や苦労を通して得られたことが書かれています。学級経営(そもそも教育全般)には答えがありません。答えのないものだからこそ、自分の思いと様々な実践からもらったヒントをすり合わせて、考えていくことが大切なのではないでしょうか。

子どもも大人も、誰しも夢中になるものが1つや2つあると思います。私はコロナ禍に久しぶりにジグソーパズルをやりましたが、時間を忘れて没頭してしまいました。また、教材研究をする時も一度ゾーンに入ると何時間でもしてしまうことがあります。このような“夢中な状態”が授業でも作れたら、なんと素晴らしいことでしょう。

そのヒントが書かれているのが本書です。筆者の吉田雄一先生は、公立や国立小学校での経験を踏まえて、夢中な状態とは、トライアルアンドエラーが繰り返されている状態だということに気づきました。確かに、ジグゾーパズルをしていると、うまくはまらない時こそ燃える感覚があります。この時に大切なのは、エラー、つまり失敗した時に、それを失敗のままにしないことだと筆者は述べています。子どもが失敗したときに、大人が「だからしなきゃよかったのに…」と責める言葉をかけるか、「その方法だとうまくいかないっていうことが発見できたね」と前向きな言葉をかけるかで、子どもの捉え方は大きく変わるでしょう。このような教師の接し方を基盤として、夢中になる授業づくりの手立てが本書には書かれています。子どもたちが生き生きと授業に向かう学級を目指したいという方にオススメです。

この本にまず書かれていることは“教師”として教えることの意義です。小学校程度の学習事項であれば、たいていの大人が教えることができます。とりわけ、学習塾や学習コンテンツの方が効率よく教えることができるでしょう。しかし、私たち教師が学校で教えることについて、筆者は『「子どもの内面」を把握し、「子どもの学び」に合った授業改善に取り組む努力を日々重ねることが、教師の使命』だと述べています。つまり、子どもの内面を理解し、それを授業に生かすことが大切だということです。

子どもの内面を理解するための方法として、筆者が考案した「再生刺激法」(授業の録画を子どもたちに見せて、そのときどんなことを考えていたのかをマークシートで答える分析方法)を挙げています。しかし、それ以外にも、協議会で子どもの姿を中心に話し合って、教師と子どもにズレがないか確かめることや、子どもたちの理解度を把握するための「評価」を用意すること、子どもたちがすでに持っている知識を把握したり、どんなことに興味を抱いているのかを知ったりすることなども挙げています。

子どもたちが、学校生活の中で一番多くの時間を過ごすのが授業です。授業をさらに磨きたい、子どもの思いに沿った授業をつくりたい、という方にオススメです。

何度言っても授業に遅刻してくる子、授業中におしゃべりをしたり、立ち歩いたりする子…そんな子どもがクラスにいた時、皆さんはどのように感じるでしょうか。私は正直、「嫌だなあ。困るなあ。」と思ってしまいます。それはその子を思ってというよりかは、「授業を円滑に進めたい」という思いや、「周りからよく見られたい」といった思いから来ていることが多いです。その結果、その子を叱ってしまいます。

この本には、知らず知らずのうちに大人は子どもに「観念」を与えているということが書かれています。問題行動を指摘するだけでなく、よい行いに対して褒めることも、実は子どもを苦しめる原因になってしまう恐れがあるのです。では、どうしたらいいのでしょうか。著者である金大竜先生は、まず、人は簡単には変われないことを自覚すること、そしてありのままの子どもの姿や自分の感情を受け止めることが大切なのだと述べています。一番理解しているはずの自分でさえ、コントロールできないことは多々あります。子どもたちに対しても、短所ばかり指摘するのではなく、変わることの難しさを共有するだけで自分も子どもも楽になれるのではないでしょうか。教師としての在り方について考えたい方にオススメです。

クラスをもつ上で、「こんなクラスにしたい」という教師の願いを持つことは大切です。方向性がなければ、子どもたちへの声がけや働きかけもぶれてしまうからです。反対に言えば、方向性が定まることで、そこに向かうための方法や教師の構え方も決まってきます。

この本の著者である盛山隆雄先生は、「自然体なクラス」「明るく朗らかなクラス」を目指しています。そのようなクラスに近づくために、言葉を大切にすることや、男女の交流の場を増やすこと、教師はいちいち注意せずに流すこと、自分が間違った時は素直に反省して謝ることなど、様々なことを心がけています。

私たちも理想のクラス像に近づくために、様々な働きかけをしていると思います。しかし、それらは無意識に行われていることが多いため、一つひとつを言語化することは難しいのではないでしょうか。この本では、盛山先生の実践が丁寧に書かれているため、「この実践は自分もしているな。」「これは自分の考えとは少し違うな。」と、自分と比べながら読むだけでも、日々の実践を振り返ることにつながると思います。初めて学級を持つ方や、学級づくりを見直したいという方にオススメです。

“学級”とひとことで言っても、その実際は様々です。明るく活発なクラスもあれば、落ち着いた雰囲気のクラスもあります。冒頭で述べたように学級経営に正解はありません。しかし、色々な場面で子どもたちが意見を持って相手に伝えることや、それを温かく受け入れることのできる学級は、よい学級のイメージとされることが多いのではないでしょうか。

この本の著者である小川雅裕先生は、「お互いに本音で語り合うことができるクラス」を目指して実践をしています。本音で語ることで追究すべき課題がはっきり具現化され、そしてクラス内の対話によって学びが深まっていくのだと考えられています。さらに、このような思考を広め深めていく対話は、現行の指導要領でも求められている資質でもあると述べられています。

この本では、本音で語り合うクラスを支える鍵が書かれています。子どもの主体性を重視し、学級内の対話をさらに深めたい方にオススメです。

長田柊香(ながた・しゅうか)

勤務校:成城学園初等学校

教師歴:6年目(2022年度時点)