子どもも先生も楽しい授業を創る! ~毎日の国語をパワーアップ!な5冊~

執筆者: 杉本遼

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「楽しくなくては、学びはない!」

いくら教材分析を深く、深くしたとしても、先生が一方的に説明するだけの授業、学習に意味が見いだせなくやらされるだけの授業など、子どもにとって楽しくない授業では、子どもの心に響かず、頭に残りません。


「楽しかった!」「やってよかった!」「自分がしたことで、誰かが喜んでくれた!」など、ポジティブな感情と学習とが結びついたときに「またやってみよう!いつでもやってみよう!誰にでもやってみよう!」と、学びを人生や社会で生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」を育む深い学びになるのです。


このことを、元・文部科学省視学官で現在は國學院大學教授の田村学先生は、以下のように書かれています。

“【目的や価値】と結び付いていくと、知識を人生や社会に生かせる「適切・適正」なものになっていく。【手応え】と結び付いた時、またいつでもそのようにしてみようと、知識が「安定・持続」していく。”

出典:『深い学び』 田村 学/著(東洋館出版社)

子どもたちの「がんばって勉強をしなければならない…」を「学習することは、楽しい!意味がある!」に、「授業を受けないといけない…」を「もっと学習したい!」に、変えていくこと。私は、このことを大事にして授業づくりをしています。

そのためには、子どもだけでなく、先生も楽しんで授業する必要があります。

先生が楽しんでいない授業は、子どもが楽しくなるはずはありません!


「こんな授業はどうだろう!?」

「子どもたちは、楽しんで学ぶかな!?」


そんな、ワクワク感をもって、毎日の授業に新しいチャレンジをもって取り組んでいきたいものです。


授業は「作る」のではなく「創る」!

私は「子どもも先生も楽しい授業を創る!」ということを大事に、研究し実践してきました。

これから、様々な教科の授業を「子どもも先生も楽しい授業」にするための本を紹介していきます。

毎日、ある国語…。


「なかなか楽しい授業にならないな…」

「何を学習しているのか、わからない!」

「どう授業していいかわからない!」

「国語の授業?気持ちを考えればいいのかな?道徳と何がちがうの?」


そんな思いになったこと、ありませんか?

授業時数が一番多く、毎日授業がある国語。

そんな国語で「子どもも先生も楽しい授業を創る」ことができたら、子どもも先生も毎日が充実します!

毎日の国語をパワーアップ!するための本を、「教材分析」「学習用語」「発問」「板書」を視点に紹介していきます。

おすすめポイント:国語も問題解決学習!


国語といえば白石範孝先生です。知らない先生はいないと思います。長年、筑波大附属小学校の教諭をされ、現在は明星大学の教授をされています。


若手のころ『白石範孝の国語授業の教科書

』(東洋館出版社)、『白石範孝の国語授業の技術』(東洋館出版社)を初めて読んだ時の衝撃を忘れることができません。何度も何度も読みました。国語の授業に対する意識が大きく変化しました。


『白石範孝の「教材研究」―教材分析と単元構想―』で、白石先生は国語の問題解決学習を提唱されています。教材から与えられる学習課題に取り組むだけでは、主体的な学習は実現しません。子どもが「問い」をもつことで、子ども自身が「こだわり」をもって学習し、読みの意識を高めていきます。


子どもが問いをもつというと「問いが拡散し、学習に結び付かず、授業の目的が達成できないのではないか」という不安をもつと思います。この本には、国語の問題解決学習を実現するための、教材のもつ特徴や論理を捉える「教材分析」の仕方と、教材の特徴や論理を生かして授業計画を立てる「教材研究」の仕方が書かれています。


・国語教材を分析する「読みの10の観点」知っていますか?

・実際に、白石先生がどのように教材分析・教材研究されているか自筆のノートを見てみたくないですか?


国語授業の基本でありながら、目指すべき高い目標である白石先生の理論と技術。国語を楽しい授業にするために、まずはここから手に取っていただきたい一冊です。

(2)学習用語

おすすめポイント:国語の授業は学習用語で大きく変わる!


T:「このお話の登場人物は、誰でしょう?」

C:「先生~。この教科書で、絵に描かれているぶたさんは登場人物ですか?」

T:「ぶたさんは、人ではないから登場人物ではありません」

C:「え?『3匹のこぶた』のこぶたたちは、登場人物ではないのですか?」

T:「そ、それは…。今回は、文に出てきていないから、ぶたは登場人物ではありません」

C:「じゃあ、文の中にある『石につまずきました』の『石』は登場人物ですか?」

T:「…。さ、余計なことは考えず、登場人物を見つけましょう」


この授業記録は、想像です。

しかし、あり得ないわけではありません。私は小学生の時、このCのような子でした。

私は、先生の中では、「余計なこと」が気になっているうちに、どんどんと授業がすすみ、周りの子は納得しているにもかかわらず、自分は理解できないといったことが多々ありました。

小学生のときの私のように、ここまでひねくれた子に出会い、困った経験をされた先生はいないと思います。

普段、授業で当たり前のように使っているその言葉。疑問に思っている子は少なくないと思います。


その言葉、しっかりと説明できますか?

その言葉、子どもたちはしっかりと理解していますか?

多くの教科では、教材の中に出てくる言葉をしっかりと定義づけられています。社会、算数、理科などではイメージがわくと思います。

では、国語の「学習用語」とは?


実は、現在使われている国語の教科書では、学習用語がしっかりと意識されています。

一つ一つの言葉を大事にしていくことで授業は変わります。

国語でも、どんな学習用語を、どう意味を説明し、どう授業するかを考えていくことが重要です。


小学校・中学校 学習用語で深まる国語の授業』では、国語の学習用語の解説だけでなく、国語のエキスパートな先生方による実際の授業と共に書かれています。

「気持ちを読み取りましょう」(←気持ちとは?心情とは?どう読み取るの?)

「報告文を書きましょう!」(←報告文って、普通の文と何がちがうの?何を、どう書けばいいの?)

「パネルディスカッションをしてみましょう!」(←話し合いと何がちがうの?討論とは違う?)

この本を手に取って、自信をもって、子どもたちに学習用語を伝え、楽しい授業を創りたいです。

(3)発問

おすすめポイント:国語の単元・国語の授業は4つの発問で創る!


「第1時は、初発の感想を問うけれど、どう次の授業に生かしていけばいいかわからない」

「国語の単元をつくるとき、どのように展開していけばいいかイメージがつかない」

「毎時間、場面や段落ごとに読まなければいけばいけないのかな?」

「1時間の国語の授業って、どうすすんでいくの?」


子どもの思考が動き出す 国語授業4つの発問』の著者は、筑波大学附属小学校の白坂洋一先生です。白坂先生は、子どもの思考の文脈に寄り添い、子どもの論理で授業を創ることを大事にされています。

教師が説明し、教えるのではなく、子どもの「?(問い)」や「!(願い)」を授業の中心にするのです。


子どもの論理で授業を創るためには、3つの条件があると書かれています。

①子どもにとって学びの必然性がある「問い」「願望」

②子どもたちの気づきや問いの「連続・発展」

③子どもたちの学びの「自覚化」


この3つの条件を生み出し、子どもを学びの主体者に、教師を学びの伴走者にするために、国語の単元も授業も4つのステップ、4つの発問で創ることを提唱しています。

STEP1 学びを生み出す「きっかけ発問」

STEP2 問いを引き出す「誘発発問」

STEP3 ねらいにせまる「焦点化発問」

STEP4 学びを定着させる「再構成(再考性)発問」


白坂先生の提唱されていることは、決して特別なことではありません。子どもが教材に関心をもつ「きっかけ」をつくること、「?(問い)」や「!(願い)」を「誘発」すること、子どもの願いと教師の願いとを重ね「焦点化」すること、子どもたちの考えを「再構成(再考性)」し自覚させることは、国語の授業だけでなく、全ての教科でとても大事なことだからです。

そのため、国語の教科書の指導書に掲載されているようなオーソドックスな単元の展開を大きく変える必要があるわけではありません。発問を、「4つの発問」を意識して変えるのです。

「4つの発問」で、こんなにも子どもの思考に寄り添った楽しい単元・授業に変わるのかと驚きました。

「きっかけ発問」「誘発発問」「焦点化発問」「再構成(再考性)発問」とは、いったいどのような発問なのでしょうか?

詳しくは、この本をお読みください。

(4)板書

おすすめポイント:板書を変えて、授業観を変える!


「国語の板書って、どうすればいいの?」

「右から左に出された考えを順番に羅列するだけになってしまう。」


いくらICTが普及しても、授業における板書の役割は大きいです。

板書は、教師の「授業観」が強く表れます。板書計画を立て、板書のイメージから授業を創っている先生も少なくないと思います。


この本を読むと、板書の役割は、教師が「どう教えるか」という授業観を実現するツールから、子どもたちが「どう学ぶのか」という授業観を実現するツールだということに気付くことができます。「板書のイメージ」と共に、「授業観」が変わるのです。


「?型板書」で大事にされているのは子どもの「問い」と「気付き」です。

板書を、記録して理解・確認を促すだけでなく、子どもの「?」が生まれそれを解決することで子ども自身が学びに「気付く」ものにできたら、すてきだと思いませんか?


この本では、「?型板書」を作るアイディアとして5つの型が紹介されています。

①あなあき型板書

…板書の中に書かれていない「あな」をつくることで「あなに何が入るのか?」「あなを埋めるにはどうしたらよいか?」という「?」が生む板書

②誤読提示型板書

…誤読を板書し「おかしい!」「その読み方・考え方はよいのだろうか?」という「?」を生む板書

③バラバラ型板書

…バラバラに板書することで「共通点や相違点で整理できないか?」「叙述のつながりはないか?」という「?」を生む板書

④完成目前型板書

…一番大事なことを、未完成に板書することで「この言葉や考えはつながり合うのではないか?」「もう一歩で自分たちの考えをよりよく表せる!」という「?」を生む板書

⑤広がり型板書

…中心に仮説となる子どもたちの納得解を作り、周りのスペースに「この場合だったらこう考えられるのではないか?」という「?」を生み、考えを広げていく板書

では、この5つの「?型板書」とはいったいどのような板書なのでしょうか?

授業中に、どうやって書かれていくのでしょうか?
気になった方は、ぜひこの本を手に取ってみてください。

(5)板書

おすすめポイント:この板書、す…すごい!すごすぎる!!


「な、なんじゃこりゃ!?」

「この板書、す…すごい!すごすぎる!!」

著者の沼田拓也先生がSNSで発信されている板書を見た時、衝撃でした。

言葉で説明するより、見ていただいたほうが早いと思います。

(沼田先生の許可を得て、掲載しています)

沼田先生は、東洋館出版社のWebマガジン「Edupia-エデュピア-」の「一人一台端末時代の『板書』」や「子どもと創る『国語の授業』Web」でも記事を書かれているので、私の文章を読んでいただいている先生方は当然ご存じだと思います。


「かわいい!子どもが書きたくなる板書」


しかし、それだけではないのです。

「立体型板書」は「比較・分類」「関連付け」「類推」の「3つの論理的思考」を育む「論理的思考ツール」なのです。


この本では、沼田先生の理論と共に、立体型板書の10のバリエーションが紹介されています。

①類別型

②対比型

③ベン図型

④構造埋め込み型

⑤問答・変容型

⑥人間相関図型

⑦スケーリング型

⑧移動型

⑨穴埋め型

⑩循環型


しかも、この本にはQRコードが載っており、実際に板書がどのように書かれているか、動画で見ることもできます。

国語で子どもも先生も楽しい授業を創ることに立体型板書の10のバリエーションは必要です!そして、他の教科の板書も変わると思います!

立体型板書の「沼」にはまってしまうこと間違いなしです!

子ども自身で、自分の問いをもち、解決したり、できないことができるようになったり、わからないことがわかるようになったりすることを国語の授業で実現しようとしているのが、今回紹介した5冊に共通することだと思います。


この5冊を読んで、国語の授業をつくる上で大事にしたいことを自分の中で整理することができました。

「授業の手法だけマネをしてもダメ!」

と、よく言われます。しかし、やってみないとわかりません。

よいと思ったことはどんどんチャレンジしてみればよいと私は考えます。マネすることからのスタートでよいのです。

失敗して、うまくいかなかった理由を考えて、もう一度その本を読んだり、他の本を読んだりしていくことで、授業づくりで大事にしたいことが見つかっていくと思います。


そうして、自分と目の前の子どもたちとでしかできない「子どもも先生も楽しい授業」を見つけていきたいです。

同じ教科の他の本、他の教科の本に書かれていることは、もしかしたら同じだったり似ていたり共通することがあるかもしれません!

次は、何の教科の本を読もうかな?楽しみです!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

何かのSNSで私とつながり、ご感想いただけたらうれしいです!

杉本 遼(すぎもと・りょう)

勤務校:足立区立足立小学校

渋谷区立広尾小学校、東京学芸大学附属大泉小学校を経て、現職。教員12年目。

自称、教育書コレクター(本棚に教育書が古いものから新しいものまで1000冊近くあるんじゃないでしょうか!?)

学習会「子どもも先生も楽しい授業を創る」をLINEオープンチャットで運営。