目次
漫画制作:ヤッシー(@84yame1000)
この章のキーワードは、以下5点と考えます。
・4つの定義
・学校や福祉の役割と連携体制
・校内体制づくりと課題予防的生徒指導
・児童虐待を発見するための視点
・通告する際の留意点
児童虐待を受けている児童をいかに早期に発見し、連携して対応するか。そのためにそもそも児童虐待とはどのようなものを指すのか、早期に発見するために日頃から注意すべき視点はどこなのか。いざというときだけではなく、日頃から校内外の連携体制は構築され、周知されているのか。そして何より、未然に防ぐために私たちがすべき・できることはどのようなことなのか。それらを知ること、考えていくことの必要性が訴えられていると感じました。
私の「現場目線」からみた重要ポイント
児童虐待の早期発見が可能に!?押さえておくべき2つのポイント
この章で学校現場に入ってまだ日が浅い私が感じた重要ポイントは2つ、「知ること」と「連携」です。
たとえば、虐待を発見するためには、虐待の定義や発見の視点をまずは「知ること」が重要です。また対応に際しては、いつ、誰が、何を、どのようにすればよいのか。それを共通理解していること。恥ずかしながら自分がそれらをきちんと知らないままであったことに気づかされました。そして、生徒指導提要全体を通じて何度も繰り返し強調されている「連携」の重要性です。
私が教員の道を志し学び始めたときに「チーム学校」という言葉を知り、感動したことをよく覚えています。私自身が医療の世界に触れていたことがあるため「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供する」(厚生労働省,平成22年,「チーム医療の推進について」)という「チーム医療」を思い浮かべながら、これからは学校も、保護者をはじめ校内外の様々な立場や担当・職種の方々と、より一層手を携えていくのだなと感じました。
そのために私自身はまず、教員としての専門性を高めることが重要だと強く思いました。この章でいうと、児童虐待の定義を知ることもその一つです。
「児童虐待の防止等に関する法律」では
児童虐待とは
① 身体的虐待 ② 性的虐待 ③ ネグレクト ④ 心理的虐待
の4種類の行為を指しています。たとえば「① 身体的虐待」はけがの有無とは別に暴行の可能性の有無で判断をすること、「③ ネグレクト」では、兄弟姉妹などの同居人が行う暴力などの虐待行為を保護者が止めないことなどもそれにあたること、「④ 心理的虐待」では直接的な子どもへの拒否的な態度や暴言だけでなく、配偶者(未届も含む)間のDVがある場合など、子どもの心の傷になるものが広く含まれていること。そして保護者として児童の親の交際相手などが含まれる場合がある(「児童虐待対応における保護者の交際相手等への調査及び指導等の徹底について」,令和4年4月18日子家発0418第1号)こと。
このような定義を知り「虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに」「通告しなければならない」(児童虐待防止法第6条)ことを理解し、児童虐待を受けた子どもが示す特徴を把握し日頃からそのような視点をもっていれば、早期発見・対応をすることが可能です。
しかし、自分一人で発見できるものではありません。個人の力には限界がありますし、多面的多角的な視点が必要です。学級担任だけではなく、学年団や他学年教員、養護教諭や特別支援学級担任、SC(スクールカウンセラー)・SSW(スクールソーシャルワーカー)や校医などの専門職を含め、事務職員や学校用務員など多種多様な立場・関わりだからこそわかることもあります。生徒指導提要では、組織的なアセスメントの必要性や校内外の連携体制についても説明されています。そういった連携体制などについても、少しでも多くの方がまずは知ること、それが肝要であると、私は感じました。
「私の現場」で生かすとしたら
一人で抱えず、必ず関係機関と連携して対処しよう
まずは自分自身が、より多くを知ることから始めます。そしてこの生徒指導提要で知った(*)虐待の定義や「子ども虐待対応の手引き(厚生労働省,平成19年)」、その手引きの中のチェックリストや「学校現場における虐待防止に関する研修教材(文部科学省,令和2年)」などを活用して、目の前の子どもたちの様子をよくみて、様々な角度から考えます。また、勤務校での校内外の体制を改めて学び、今回初めて知った市町村等のネットワークを活用した「要保護児童対策地域協議会」(要対協)による多機関連携・チーム支援は、私の自治体では実際にはどのように運用されているのかを知ることです。
(*)生徒指導提要では、PDF上にピンクの字で表記されているものは該当資料にリンクしており、すぐに閲覧が可能。
さらに、知るだけでなく教員としての専門性を高め理解を深めること。自己の専門性を高めるとともに、決して一人で抱え込まず、他者と情報を共有することが必要だと考えます。
たとえば、虐待が疑われたとき、初めの聴取が非常に重要です。そしてそこで教員が内容の詳細を聴くことは次の2点から避けるべきとされています。
① 子どもにつらい記憶を思い出させることが回復に悪影響を与える可能性があること
② 保護者の虐待行為を犯罪として起訴する場合などへの影響
子どもを守るつもりが、かえって子どもを傷つけてしまったり、法的に守れなくしてしまっては意味がありません。生徒指導提要の第6章「少年非行」でも、教員は「誰が、どうしたかという最低限の質問にとどめ、詳細は警察や児童相談所等の関係機関による聴取に委ねることが重要」とされていることを自分が知り、共有すること。知識をもとに虐待を疑い、通告が必要と思ったときに、一人で判断してしまわずに(必要な場面もあるかもしれませんが)確認、相談する。確認をしていく中で、お互い初めて知ることもあるかもしれませんし、自分が思い違いをしていることを知るかもしれません。このように、自分が知ったことを伝えることは、学びの上でも連携の上でも、大切だと考えます。
虐待の未然防止には、今あるもの、これからできるものを知り、最大限活用すること
また、児童生徒がつらいときには相談する窓口があることを知り、児童生徒にそれを伝える。虐待・体罰の具体例や、児童虐待防止法の改正により、親権者等による体罰禁止が法定化されたことを知り、保護者に伝える。さらに、保護者に子育てについての悩みを相談するよう伝えること。未然防止のため、学校として果たすべき役割を知ること。今回の生徒指導提要では様々な場面で「課題予防的生徒指導」という文言が登場します。医療でもそうであるように、治療はもちろん大切ですし必要不可欠なのですが、やはり理想は予防、未然防止です。そのために知ること、その視点をもつことや伝えることが、今の私がまずすることだと感じました。
子育てをする母親の約6割が、近所に子どもを預かってくれる人がいないといった孤立した状況であることが生徒指導提要に書かれているのを読んだとき、「そうなんだよな」ととても共感しました。しかし、そういった状況を踏まえて、子育て支援を包括的に支援するための「こども家庭センター」の設置、訪問による家事支援などのため「児童福祉法等の一部を改正する法律」が令和4年に成立した、というのが、この章の最後に書かれていたことです。今あるものやこれからできるものを知り、知ったことを伝えて、それを最大限活用する。できないことを嘆くより、そこに力を入れたいと私は思います。
(「生徒指導提要」pp.183-188をもとに筆者作成)
生徒指導提要第7章を読み終えて
189(いちはやく)
これは、児童相談所の虐待対応ダイヤルです。
今朝、子どもたちと朝のあいさつをしながら、ふと目に飛び込んできた玄関のポスターに書かれていましたが、これまで気づいていませんでした。知ることで、見える景色が変わるのだなと実感しました。子どもや保護者のSOS にいち早く気づき、寄り添い、つなげる。この機会に学んだことを身の回りで生かしていきたいと、改めて思いました。
この生徒指導提要には、子どもたちのためにすべきこと、あるべき姿など、素敵なことがたくさん書かれています。しかしながら一人でそのすべてを知ること、実行することは難しいです。一人で学ぶことがとても苦手な私にとっては、知ることも専門性を高めることも簡単ではありません。
ですが、ありがたいことにこのように仲間を得て皆さんのお力を借りると、不思議と同じ言葉でもスッと入ってくる感じがして、他の部分も少しずつ読み進めることができました。このような場を思いつき提供してくださった藤原先生、今回一緒に学んでくださった素敵な皆さん、いつも一緒に学んでくれている大切な仲間たち、職場で温かく面白く一緒に働いてくださっている皆さん、そしてこの拙い文章を最後まで読んでくださった方。皆さんに感謝しつつ、これからも学び続け子どもたちとともにありたいと思います。
まさやん@グラレコ喫茶のマスター(@succhang55)
次回3/8(水)公開では、瀬戸山千穂先生の第8章「自殺」についてお伝えします。