自己を見つめ、自分を磨く

執筆者: 中村優輝

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初めまして。奈良県の小学校に勤務しています、中村優輝と申します。今年度、小学校で働き始めて9年目になりました。今回、ご縁がありまして『学級経営』というテーマで、原稿を書く機会をいただきました。どうぞよろしくお願いします。

執筆テーマは『自己を見つめ、自分を磨く』です。特に年度当初は忙しく、バタバタしますよね。そんな時期に、1年間共に過ごす子どもたちと出会います。初めての出会いだからこそ、子どもたちに『何をどのように伝えるか』を吟味し「始業式の日は、子どもたちにどんなことを伝えよう?」と考えられた先生方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。


ちなみに今年の4月は、子どもたちにどんなことを伝えましたか?伝えた内容は、きっとこの4月に思いついたものではなく、これまで働いてきた経験やこんなクラスにしていきたいと思い描かれているものを基に、子どもたちにお話をされたのではないでしょうか?『自己を見つめ、自分を磨く』というテーマで私が学んだことが、先生方のお役に立つことができれば幸いです。

2023年1月現在、Twitterフォロワー数10万人超え、usao先生の著書です。教員の日常が漫画で描かれており、帯に書いてある通り心がふっと軽くなる印象がありました。「もう少し早く、この本と出会いたかった〜」というのが本音です。 

この本は、自分の『気持ちの余裕』によって、読んだときの感じ方が異なると思いました。例えば、「あ〜、仕事がうまくいかない。全部私がだめなんだ…」と自分を責めていたとします。そんなとき、この本に出会うと「仕事がうまくいっていないのは、私だけではないんだ。自分のことばかり責めずに、明日もがんばろう」と勇気をもらえるかもしれません。「(漫画を見ながら)こんなとき、私にもあったあった。特に、1年目はいろいろあったなぁ。そういえば、今はこういう悩みはなくなっている!」と自信をもつことができるかもしれません。「周りの視線ばかり気にするのは、よくないなぁ。私は私。先生にだって苦手なことはあるんだ。強がらずに、自分の気持ちに正直に子どもたちと楽しく過ごしていこう」と決意することができるかもしれないですね。

この感じ方は定期的にこの本を読み返すと、毎回異なるかもしれません。1学期初めの何かと忙しい時期とGW明けの少し事務作業が落ち着いてくる時期とでは、気持ちの余裕が違うのは、私だけでしょうか?きっと共感してくださる方も多いのではないでしょうか?自分で自分の内面を客観的に見ることは難しいかもしれません。でも、自分を見つめるって大切なことですよね。だからこそ、この本を通して、現在の自分を再認識してみませんか?

『心理学』と聞くと、難しそうとか、カタカナが覚えられないといったようなネガティブな印象はありませんか?また、「教員採用試験に出題されそうだから覚えておこう」というように暗記することが目的になっていた方はいませんか?恥ずかしながら、実際私がそうでした。

この本は、①教育心理学を基盤とした学級経営を行いたい方 ②今の自分の実践を見つめ直したい方 ③自分の実践を再確認し、価値付けたい方におすすめしたいです。

私がこの本に出会ったときを振り返ってみると、学級経営に行き詰っていた…という記憶はありません。ちょうど、「道徳科について再度学ぶぞ!」と決意した時期です。それと同時に、「自分はどんな学級にしていきたいと考えているのだろう?」と改めて考え直していた時期でもありました。

そんなとき、この本を読んで、私は自信をもつことができました。というのは、「普段から意識していたこの活動には、こんな効果もあったのか。気付いていなかった」「(本を読みながら)これ、無意識にしているなぁ。まさか心理学と繋がりがあったなんて知らなかった」と自分自身の実践を価値付けることができたからです。それこそ、この本にも記されている『自己肯定感や自己有用感』を高めることができたと思います。

この本には、明日から活用できそうな心理テクニックが分かりやすく記されています。(心理学用語のカタカナは難しいですが…)もちろん、即実践し、うまくいくかはわかりません。それでも、知っているのと知らないのでは大きく異なります。心理テクニックを学び、明日から更なる成長を遂げた自分らしい学級経営を目指していきませんか?

多数の書籍を出版されている、樋口万太郎先生の著書です。学校現場で勤務する前の大学生だけではなく、若手の先生や若手を育てる先生にも読んでほしいという思いで記されたようです。

まず、本を読んで思ったのが、第1章の自己開示がすごい!ということです。「え、教育実習を休もうとしていたの!」「そんな大学生活をおくっていたの!」など驚きの連続でした。きっとこの自己開示が、第2章以降も早く読み進めたいという思いにさせたのでしょう。

本の内容としては、教育『観』に関わることが多いと感じました。例えば、「私は、時間を守ることを大切にしています」と子どもたちに伝えるからには、私たち教師が行動に移さないと、何の説得力もありませんよね。発した言葉に責任をもたなければ、子どもたちから信用してもらえるはずがありません。

先生方、職員室でお隣に座っている先生の顔を思い浮かべてみてください。その先生が教師として大切にしていることは何ですか?指導が得意な教科は何ですか?学級開きで子どもたちに伝えていることは何ですか?

 本来であれば、このような教育観に関わることについては、職員室でゆっくりと話すべきです。それは、先生方の教育観を知ることで、その先生の授業の見え方が変わり、授業実践への理解が深まっていくと考えるからです。(職場だけでなく、たくさんの先生方とSNSを通して、語り合うことができている私は、幸せ者だなぁとつくづく思います)もしかすると、そのような話をする中で、「自分と考えが似ている」「なるほど。子どもたちに、そんな風にアプローチしたらいいのか」といった新たな気付きがあるかもしれません。職場の先生方のそして樋口先生の教育観を知り、自分の教育観をさらに磨いていきませんか。

この本には、52のアイテムが紹介されています。ちょっとしたアイディアで、子どもの学びへの意欲を掻き立てることができますよね。そのような柔軟な発想がなかなか思いつかない私にとって、参考になる1冊です。

よく、知っているか、知らないかについて『引き出し』を使って例えられることがありますよね。引き出しは多く持っていた方がいい。本当にそうでしょうか?引き出しがあっても、中が空だったら意味がないですよね。そして、どの引き出しに何が入っているか把握しておかないと、上手に活用できないですよね。大切なのは、引き出しを多く持ちながらも、自分オリジナルとして活用することではないでしょうか。

 私は、令和2年度より、この本に記されているアイテム8の『テスト予定表』をクラスで取り入れることにしました。実際、子どもたちもその表を確認しながら、テスト当日に向けて、自主学習ノートなどを活用し、勉強する様子が見られています。私は、『テスト予定表』を取り入れましたが、本に記された通り活用しているわけではありません。学期分のテスト予定を私自身が立てることができない、また子どもたちにとって先の予定すぎて実感がわかないのではないかと考え、翌週のテスト予定のみを伝えることにしました。この本にも『自分が使えそうだと思ったものをつまみ食いで活用することの大切さ』が記されていました。この本からアイディアを学びながら、自分オリジナルのアイテムにしていきませんか。

この本には、「これからの学校」「これからの教師」は、どうあるべきか。どんな学びが求められてくるのかについて、多様な視点から記されています。今後の教育について考えていきたいと考える中堅の先生方におすすめしたいです。

近年、ITの普及、AIの発達、グローバル化の加速などが急激に発展し、将来の変化を予測することが困難な時代と言われています。また、コロナ禍で『従来通り』ではなく、『何のために行うのか』『今後の在り方をどうするのか』という点に関して、職員会議などで学校行事や学校教育について再検討した方もいらっしゃるのではないでしょうか?絶対的な正解は無いでしょうが、この本には、たくさんのヒントがありました。

特に私は、第2章の『「教えるプロ」から「誘うプロ」へ「夢中」に誘う授業を』が印象に残りました。子どもたちの「やってみたい!」を引き出す授業展開。もちろん全ての授業をそんな風に展開することは、簡単なことではありません。しかし、夢中になっているときの子どもたちの表情を見ると、私も自然と夢中になりワクワクしてきます。夢中になっている子どもたちは、ある意味無双状態。子どもたちが、自ら考え、たくさんのアイディアを出してきます。「子どもたちのもつ力はすごい!」そのように感じた授業が皆さんにもきっとあるのではないでしょうか。これからの予測困難な時代に適応するためには、子どもが自ら学ぶ力が大切になってきます。では、そのために私たち教師にできることは何でしょう。この本から、たくさんのヒントをもらい、これからの教育について考えていきませんか?

中村優輝(なかむら・ゆうき)

勤務校:奈良県大和郡山市立平和小学校

内容項目から始めよう 直球で問いかける 小学校道徳科授業づくり』東洋館出版社

『リレー連載「一枚画像道徳」のススメ』みんなの教育技術

『生徒指導提要を現場の目線で読む』東洋館出版社

『道徳教育』明治図書出版 2022年1月号、2023年1月号、4月号に寄稿。

『授業力&学級経営力』明治図書出版 2022年4月号に寄稿。


道徳科の授業づくりを中心に学び

『子どもと共に考え、共に本気で迷う授業』を目指し、日々奮闘中。