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月刊 理科の教育2025年9月号

ISBN: 4910093130958

一般社団法人日本理科教育学会/編

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特集:諸感覚を働かせ、豊かな感性を育む理科授業

日常の経験と理科の学びをつなげる授業の工夫

 豊かな感性は、身近な環境と十分に関わる中で美しいもの、すぐれたもの、心を動かす出来事などに出会い、そこから得た感動を他の児童生徒や教師と共有し、様々に表現することなどを通して養われます。児童生徒が感性を働かせながら自然の事物・現象を捉えて いくことは、豊かな人間性、自ら考える力の基盤となるでしょう。中央教育審議会答申(平成28年12月)においても、「予測困難な社会の変化に主体的に関わり、感性を豊かに働かせながら、(中略)よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けられるようにすることが重要である」と示されています。特に、自然の事物・現象に直接関わる理科の授業は、児童生徒に豊かな感性を育む可能性に満ちあふれていると言えます。
 理科の学びの中において、「観る(視覚)」「聴く(聴覚)」「嗅ぐ(嗅覚)」「触れる(触覚)」等の諸感覚を働かせながら自然の事物・現象に触れる体験や経験は、児童生徒の感性を豊かに育むでしょう。しかし一方で、一口に体験や経験と言っても、対象となる事物・ 現象に実際に関わる「直接体験」のほか、動画やインターネット等を介して感覚的に学ぶ「間接体験」、シミュレーション(VR等)や模型等を通じて模擬的に学ぶ「擬似体験」があります。昨今、ICT機器の発達で 「間接体験」や「擬似体験」の実施が容易になってきたため、児童生徒が直接自然の事物・現象に触れ、諸感覚を働かせる機会が少なくなっているのではないでしょうか。
 日常の体験や経験を出発点とし、諸感覚を働かせながら理科に結び付ける指導例として、小学校第5学年の振り子の法則では、ブランコに乗ったときの実体験を想起しながら、学習を始めている実践が多いです。よりイメージを膨らませるために、学習の前に全員が体験することで共通経験(体感)に基づいた学びを促す工夫もあるでしょう。中学校第2学年の「化学変化と熱」では、鉄粉カイロ等の自作実験を通して、化学変化には熱の出入りがあることを実際に肌で感じ取りながら(体感)、カイロの熱がどのような仕組みで発生しているのかについて考察することで、身近な経験と学びをつなげています。高等学校では、身近なしょう油の種類の違いに着目し、濃口、薄口、減塩しょう油に含まれる食塩の量について、生活経験を基に仮説を設定することで、身近な経験と学びをつなげようとしている例もあります。どれも、身近な生活で体験や経験している事物・現象を、諸感覚を働かせながら解き明かす実験となっています。
 さて、先生方はどのような授業の工夫をしているでしょうか。また、その諸感覚を働かせた体験と理科の学びがつながったとき、児童生徒にはどのような変化が起きたでしょうか。
 本特集では、諸感覚を豊かに働かせた授業実践の工夫やその成果と課題を紹介します。小学校の段階で諸感覚をフルに働かせながら自然に親しむ土台を形成する工夫や、中学・高等学校でも諸感覚を働かせた体験を取り入れたことで生徒がこんなに変わったという実践を、その試行錯誤の過程とともに共有することで、多くの先生方にとって児童生徒の感性を豊かに育む授業改善のヒントとなることを願っています。

(『理科の教育』編集委員会)