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月刊 理科の教育2025年11月号

ISBN: 4910093131153

一般社団法人日本理科教育学会/編

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特集:深い意味理解を促す理科授業

子どもたちが納得し、活用したくなる知識の習得とは

 自然の事物・現象について追究することで、未知のものを既知のものとしたときの子どもたちの満足気な姿を見ることは、教師としての醍醐味の一つです。
2024年12月25日に文部科学大臣から中央教育審議会に諮問された「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」には、「習得した知識を現実の事象と関連付けて理解すること、生成AIには扱えない概念としての知識の習得や深い意味理解をすること、自分の考えを持ち、根拠に基づいて他者に明確に説明すること等に依然として課題が見られ、全体としては学習指導要領の理念や趣旨の浸透は道半ば」と示されています。
このように「深い意味理解」「知識を関係付ける」「概念としての知識の習得」といった言葉を用いることで、知識を獲得する際には実感を伴うことや知識のつながりを意識すること、俯瞰的な見方による理解を図ることなどの重要性が議論されています。
指導面から見ると、現行の学習指導要領では、小・ 中・高全ての校種で「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」が重要とされています。特に、解説理科編における「深い学び」についての説明の中には、「様々な知識がつながって、より科学的な概念を形成することに向かっているか」などの授業改善を図ることが例示されています。これらの授業改善によって、子どもたちは先に述べた深い意味理解による知識の獲得を実現できると考えられます。
しかし、実際の授業では、子どもたちの発達の段階や学習内容により、実感を伴った理解が難しい場面もあるでしょう。子どもたちが心から納得してはいない状態にもかかわらず、教師が知識を言葉や公式などで覚えさせることによって定着を図ろうとしてしまう実践も見られます。
例えば、小学校第6学年「水溶液の性質」では、「二酸化炭素は水に溶けるのか」という問題を解決する際、ペットボトルに水と二酸化炭素を半分ずつ入れ、キャップを閉じて振るとペットボトルが変形する実験を行い、「二酸化炭素は水に溶けた」と結論付ける授 業を多く見かけます。しかし、児童はペットボトルが変形した事象には着目できているものの、二酸化炭素が水に溶けたという結論には結び付いていないケースがほとんどです。この実験では、二酸化炭素の体積変化が確認しにくいこと、小学校では大気圧が未習であること、そもそも二酸化炭素を水上置換で集めていることなどから、児童がこの実験だけでもって二酸化炭素が水に溶けることを納得できないのは当然とも言えるでしょう。
中学校においては、合成抵抗を計算することはできている生徒に対して、豆電球を直列つなぎにするとどうなるかと質問すると、「明るくなる」と答えることがあります。 電圧、電流、抵抗の関係についての理解が不十分であることから、自らの計算の矛盾に気付いていないのです。高校においても、分子運動の速さによって、 温度や体積が変化することを概念的に理解できていないにもかかわらず、気体の状態方程式に当てはめて体積変化を算出することができる生徒も一定数おり、公式や知識の暗記に頼っている実態もあります。
本特集では、自然の事物・現象について、納得していない、あるいは腑に落ちていない子どもたちに、わかったふりや丸暗記をさせることがないよう、モデル化や定量化、可視化、比喩、新たな方法での追実験などの様々な工夫を紹介します。子どもから「やっとわかった」「腑に落ちた」「合点がいった」というような言葉が自然に発出されるような、納得感を高める実践事例を通して、多くの先生方にとって役立つ方法を提案する特集です。

(『理科の教育』編集委員会)