「問いの大きさ」に注目して、新たな読みを創る(1年生・『じどう車くらべ』)

「問いの大きさ」に注目して、新たな読みを創る(1年生・『じどう車くらべ』)

低学年の説明文において、事例の情報を整理する際、板書は大きな力を発揮します。「じどう車くらべ」では、2つの問いに沿う形で事例が紹介されます。まず、表を用いて対比的に整理することで情報を比較し、新たな気付きを生み出すことができます。
そして、「問い」に対峙した「答え」を考えることを通して、子どもたちの言葉の力を育てることができる教材です。
「対比型」×「問答型」を用いた板書が引き出す子どもたちの思考の様子をご覧ください。

3種類の自動車の情報を整理することを通して、事例のつながりや問いと答えの関係に気付くことができる。【第2次第6時】

猪岡 養子先生

秋田県・小学校ベテラン教員。立体型板書のよさに魅力を感じ、板書の工夫により子どもの思考力を高める実践を研究中。

西光 拳人先生

大阪府・小学校教員。教員11年目。板書と発問の工夫による深い学びについて、日々勉強中。

A1. 一つは情報の比較です。もう一つは、「問い」と「答え」のつながりを考え、子どもたちの新たな言葉を生み出すことです。

低学年の説明文は、まずは書かれている情報を正確に読み取り、整理することが大切です。板書を用いる際には、上の動画のように表を使って整理することが多いのではないでしょうか。このように、表にすることで、それぞれの事例の特徴を端的に比較することができます。ここで大切なことは、ただ整理して言葉を書き並べるだけでなく、言葉を見ながら共通点や対比関係を発見させることです。そして、板書上の言葉をマーキングして強調します。本教材でも、共通点として「広い」「たくさん」という言葉があり、対比関係として「人」「荷物」があります。この関係に気付くと、事例の順序や選択の意図に言及する子が出てきます。
もう一つは、「問い」と「答え」のつながりです。この説明文では、「どんなしごと」「どんなつくり」という2つの問いによって展開されます。このつながりについては、次の質問で詳しくお伝えします。

A2. この説明文は、3つの事例そのものが問いの答えとして書かれています。しかし、「じどう車のしごととつくり」の関係をまとめた文章はありません。ここに迫るための視点として使用した言葉です。

授業前半は、表を用いて対比的に3種類(4つ)のじどう車の情報を整理しました。第5時までに学んだ情報を思い出しながら、言葉を引き出します。これは、多くの学級で行われている授業スタイルだと思います。
今回の授業では、整理の先にある「問い」と「答え」のつながりにまで踏み込みました。
3種類のじどう車を提示しながら、仕事と造りの関係について紹介しています。この紹介文そのものが、「どんなしごと」「どんなつくり」という「問い」に対する答えです。しかし、この説明文は事例の紹介で終わっており、いわゆる「おわり」にあたる「まとめの文」がありません。ここに注目し、それぞれの事例を「小さな答え」、書かれていない「じどう車」をまとめたものを「大きな答え」として、新たな学びを生み出しました。3種類の事例を統合することで「大きな答え」を「このように」という言葉に続く形で考えます。すると、「仕事に合わせた造り」になっていることが共通点として見えてきます。

A3. ここまで学んだことを自分の言葉で語ることができるような場を設定しました。「自分の言葉」で語らせることが子どもの言葉の力を育てます。

「問いと答え」のつながりを整理したことで、この説明文では「仕事に合わせた造り」になっているじどう車が紹介されていることが明らかになりました。
最後は、子どもたちの言葉でさらに思考を広げる場を作りました。パトカーやゴミ収集車は、子どもたちにとって比較的身近で仕事もわかりやすいのではないかと思いました。この仕事に合わせて、どのような造りになっているのかをつぶやかせます。このつぶやきの中にたくさんの「論理的思考」が生まれます。板書に整理した表のように、「そのために」というつながりを意識した語りに注目してください。これこそ、板書による視覚支援が生み出す言葉ではないでしょうか。

猪岡先生自動車の仕事と造りの関係を問う時、板書の視覚支援の効果によって生じたつぶやきの中に論理的思考が生まれることに気付かされました。また、沼田先生の自分の言葉で語る子どもに育てるという言葉に感銘を受けました。

西光先生表面的な整理だけでなく、共通点や対比関係を見つけることで、本文にはない「大きな答え(まとめ)」が引き出せることに気付かされました。新たな学びや気付きを生む「立体型板書」の真髄を教えていただき、感謝しています。

沼田先生低学年の説明文の授業は、書かれている情報の確認だけで終わってしまいがちです。板書をしかけとして、情報を整理し、問いかけることによって学びは大きく変化します。動画のような授業を行うことによって、子どもたちは情報をまとまりで捉えたり、言葉のつながりに楽しさを感じたりするようになるのではないでしょうか。

〈参考文献〉

沼田拓弥(2020)『「立体型板書」の国語授業』東洋館出版社

沼田拓弥(2021)『「立体型板書」でつくる国語の授業 文学』東洋館出版社

沼田拓弥(2021)『「立体型板書」でつくる国語の授業 説明文』東洋館出版社