登場人物の変容をとらえ、中心人物を特定する ~「お手紙」(光村図書2年下)より~

登場人物の変容をとらえ、中心人物を特定する ~「お手紙」(光村図書2年下)より~

「中心人物」とは何なのかをきちんと押さえることで、論理的に中心人物を特定します。今後、物語の主題をとらえる読みにも関係する大切な力です。

【今回の「問い」】

「中心人物はどっち?」

【習得を目指す力】

変容から中心人物っをとらえる力

授業においては、子どもたち自身が【問い】をもち、自発的に解決しようとすることが大切だと言われます。
そのためにも、授業づくりにおいては、教師が【課題】【活動指示】【ズレ】【問い】【技】の関係を理解し組み立てていくことが必要です。
※「【問い】の解決による汎用的な力の習得」の詳細については本連載の第2回を参照

それでは、「お手紙」の、実際の授業を見ていきましょう。

「お手紙」には、次のような特徴があります。

→中心人物と、その変容をとらえることができる。
「お手紙」は、登場人物である「がまくん」と「かえるくん」のどちらが中心人物なのか、なかなか判断できません。
中心人物の変容は物語の主題と深く結びついているので、中心人物をとらえることができないと、主題に迫ることも難しくなります。

→中心人物の変容をとらえることができる。
→クライマックスをとらえることができる。

→クライマックスをとらえることができる。

今回は特徴1として挙げた「中心人物はだれなのか、とらえにくい」に着目し、子どもたちが次のような【問い】をもつ授業を組み立てたいと思います。

【問い】
どちらが中心人物なのか、どうすればわかるの?

なお、「問いの解決」には、特徴2としてあげた「基本三部構成をとらえやすい」という特徴も活用します。

子どもたち「中心人物」と「中心人物の心の変容」に関心をもたせるため、次のような【課題】を示しました。

【課題】
この物語を、「一文」で書いてみよう。

「一文で書く」とは、物語を次のような形の一文で表すことです。

中心人物変容のきっかけとなった事件・できごと によって 変容後の姿 になる(をする)話。

「お手紙」は中心人物がとらえにくいため、「一文で書く」という課題に対し、子どもたちに次のような【ズレ】が生じます。

【ズレ】

中心人物は「がまくん」

中心人物は「かえるくん」

中心人物は「がまくん」と「かえるくん」の両方

ここから、次のような【問い】が生まれます。

【問い】
どちらが中心人物なのか、どうすればわかるの?

ここで子どもたちと、次のことを確認します。

物語とは、中心人物の変容を描いたもので、登場人物のうち、物語の中で最も変容しているのが中心人物である。

ただ、2年生ですので「変容」については言い換えが必要でしょう。たとえば、

  • 物語の〈はじめ〉と〈おわり〉で、気持ちや、やること、ようすなどが大きく変わった人物。
  • 強い願いがかなったり、大きな心配事や悲しみがなくなったりした人物

などです。

特徴2であげた通り、「お手紙」は基本三部構成がとらえやすいため、〈はじめ〉と〈おわり〉のがまくんとかえるくんの様子に着目してみます。 整理すると次のようになります。

  がまくん かえるくん
〈はじめ〉の様子 いままでいちどもお手紙をもらったことがない。かなしい気分。 がまくんが、いままでいちどもお手紙をもらったことがないと知り、かなしい気分。
〈おわり〉の様子 かえるくんからお手紙をもらって、とてもよろこんだ。 (特に書かれていない。)

これを見ると、がまくんは、いちどもお手紙をもらったことがなくかなしい気持ちだったのに、物語の〈おわり〉では、かえるくんからのお手紙を受け取りとても喜んでいます。 一方、かえるくんはがまくんにお手紙をだしましたが、かえるくん自身はあまり変化していません。 「お手紙」では、「お手紙をもらいたい」という強い思い(こだわり)がかなった、がまくんが中心人物だといえます。

したがって、【課題】に対する答えは、

がまくんかえるくんからお手紙をもらう ことによって とても喜んだ 話。

となります。

今回は「変容」の観点で中心人物を特定しました。 物語の冒頭で中心人物であるがまくんは「ふしあわせな気持ち」でしたが、かえるくんからお手紙の内容を聞いてからは「しあわせな気もち」でお手紙が来るのをまつようになります。
そう考えると、かえるくんからお手紙の内容の話を聞いた直後のがまくんの言葉「ああ。」が、クライマックスの一文だといえます。

この場面を音読するとき、「ああ。」を感動、感嘆の「ああ!」と読んでしまいがちです。
しかし、「ああ」の後に「。」(句点)が付いていますので、しっかりと止めて読むことになります。
これが感嘆の「ああ!」以上に、がまくんの深い喜びを表しています。

中心人物ががまくんであることをおさえた上で、この「ああ。」に着目させると、読みが深まるでしょう。