まとめ・筆者の主張・要旨

執筆者: 白石 範孝

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この連載のvol.2(2024/5/16公開)で、「説明文を構成する5つの要素」について説明した際に、次のことをお伝えしました。

  • ・小学校の国語授業で「説明文」の学習は、「筆者が読者に伝えたいことを正しくとらえる力」を習得するのが目的である。
  • ・ただし、「筆者が読者に伝えたいこと=筆者の主張」とは限らず、「まとめ」や「要旨」の場合もある。

では、「まとめ」「筆者の主張」「要旨」は、どうやってとらえるのでしょうか。 また、それぞれどう違うのでしょうか。 今回は、これらのことを考えてみたいと思います。

まず、「まとめ」「筆者の主張」「要旨」とはそれぞれ何なのかを確認しましょう。

  • ◆まとめ …………具体例・事例から言えること。
  • ◆筆者の主張 ……「まとめ」から、筆者が最も言いたいこと。
  • ◆要旨 ……………「まとめ」「筆者の主張」から、筆者が最も述べたいこと。また、「筆者の主張」を抽象化したもの。

これらを踏まえた上で、基本三部構成と、「まとめ」「筆者の主張」「要旨」の位置について整理すると、次のようになります。

基本三部構成と「まとめ」「筆者の主張」「要旨」の位置

※スマートフォンの場合は左右にスクロールしてご覧ください。

  「まとめ」「筆者の主張」「要旨」がない説明文 「まとめ」がある説明文 「まとめ」と「筆者の主張」がある説明文 「まとめ」「筆者の主張」と「要旨」がある説明文
〈はじめ〉 ・話題・課題の提示
・「問い」の提示
・話題・課題の提示
・「問い」の提示
・話題・課題の提示
・「問い」の提示
・話題・課題の提示
・「問い」の提示
〈なか〉 ・事例と説明 ・事例と説明 ・事例と説明
・まとめ*
・事例と説明
・まとめ*
・筆者の主張*
〈おわり〉
・まとめ ・まとめ*
・筆者の主張
・まとめ*
・筆者の主張*
・要旨

*「まとめ」は、「筆者の主張」や「要旨」がない場合には、〈おわり〉にある。「筆者の主張」や「要旨」がある場合には、〈なか〉にある場合と、〈おわり〉にある場合とがある。
*「筆者の主張」は、「要旨」がない場合には〈おわり〉の位置にある。「要旨」がある場合には、〈なか〉にある場合と、〈おわり〉にある場合とがある。

上の表のように、全体の構成の中での「まとめ」「筆者の主張」「要旨」の位置は把握しやすいと思いますが、それぞれがどこで区切られるかで悩むことが多いかもしれません。

そこで、「すがたを変える大豆」(光村図書3年下)で、具体的に見てみましょう。

「すがたを変える大豆」は、8つの形式段落で構成されています。
前述の基本三部構成で考えると、「筆者の主張」は、最後の段落である⑧段落にあることが予想されます。
しかし、どの部分が「筆者の主張」になるのかで迷ってしまうと思います。
⑧段落は、次のように4つの文でできています。

「すがたを変える大豆」⑧段落

 このように、大豆はいろいろなすがたで食べられています。他の作物にくらべて、こんなに多くの食べ方がくふうされてきたのは、大豆が味もよく、畑の肉といわれるくらいたくさんのえいようをふくんでいるからです。そのうえ、やせた土地にも強く、育てやすいことから、多くのちいきで植えられたためでもあります。大豆のよいところに気づき、食事に取り入れてきた昔の人々のちえにおどろかされます。

この4つの文の役割は、次のようになっています。

※スマートフォンの場合は左右にスクロールしてご覧ください。

  役割
1文目 このように、大豆はいろいろなすがたで食べられています。 「このように」の書き出しから、それまでに述べてきた事例・具体例を整理している。➡「まとめ」
2文目 ほかの作物にくらべて、こんなに多くの食べ方がくふうされてきたのは、大豆が味もよく、畑の肉といわれるくらいたくさんのえいようをふくんでいるからです。 1文目の「まとめ」の内容に加え、「なぜ、そうなったのか」という自分の考えを述べている。➡「筆者の主張」
3文目 そのうえ、やせた土地にも強く、育てやすいことから、多くのちいきで植えられたためでもあります。
4文目 大豆のよいところに気づき、食事に取り入れてきた昔の人々のちえにおどろかされます。 これまでのすべてを受け、大豆の様々な変化は、昔の人々の知恵であり、その知恵におどろかされると述べており、大豆の話から一歩進めた、筆者の思いとなっている。➡「要旨」

私がこれまで提唱してきた国語の読みの方法の一つに、「逆思考の読み」があります。
「逆思考の読み」とは、文章の「結論」を出発点とし、「それはどうして?/それは何?」といった具合に、文章を逆にたどっていく読み方です。
物語を「逆思考の読み」で読んでいくと、例えば中心人物の変容のきっかけが明らかになることがあります。
説明文を「逆思考の読み」で読んでみると、筆者が自分の考えを述べるために、どんなことを事例・具体例としてあげているのかが見えてきます。
「すがたを変える大豆」を、「逆思考の読み」で読んでみましょう。

昔の人々は、様々な知恵を働かせて食生活をしてきた。
 ↓
どんな知恵を働かせてきたのか?
 ↓
たとえば、大豆を様々なすがたに変えて食べてきた。
 ↓
どんなすがたに変えて食べたのか?
 ↓
・こなにひいて食べる
・煎って食べる。
・大切な栄養だけを取りだして、違う食品にする。
・目に見えない小さな生物の力をかりて、別の食品にする。
・取り入れる時期や育て方を工夫する。

このように見ると、「すがたを変える大豆」では「昔の人々は、様々な知恵を働かせて食生活をしてきた。」ということを言うために大豆を例にあげて述べていますが、大豆以外のものを例にあげても文章が成立することがわかります。
つまり、「昔の人々は、様々な知恵を働かせて食生活をしてきた。」は、「すがたを変える大豆」の「筆者の主張」を抽象化した「要旨」であることが確かめられたといえるでしょう。

今月は「説明文の『まとめ』『筆者の主張』『要旨』」についてお話ししました。 次回は、「詩の技法」についてご説明する予定です。

また、一緒に学びましょう。

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