短歌・俳句の仕組み

執筆者: 白石 範孝

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「短歌」「俳句」「詩」「川柳」は、同じような内容をもつものとして、ひとつの領域と考えられます。
これらには、どのような共通点・相違点があるのかを見ながら、短歌・俳句の学習について考えていきたいと思います。

まず、短歌・俳句の基本事項について確認しましょう。
俳句によく似た「川柳」についても記載しています。

歌・俳句・川柳の比較

※スマートフォンの場合は左右にスクロールしてご覧ください。

  短歌 俳句 川柳
表現する内容 五感を通して風景から感じた気持ちや思いを表現する。 五感を通して感じ取った風景を、そのまま表現する。 人間のおもしろさを表現する。
季語 入れなくてもいい(入れる場合は、原則として1つ) 必要 入れなくてもいい
音数 五・七・五・七・七(31音) 五・七・五(17音) 五・七・五(17音)
作者 歌人(かじん) 俳人(はいじん) 柳人(りゅうじん)
作品の数え方 一首(いっしゅ) 一句(いっく) 一句(いっく)
作品を作ること 歌をよむ。
作歌する。
句をよむ。
作句する。
句をよむ。
作句する。
できた時期 奈良時代に「和歌」として生まれた。 江戸時代 江戸時代

表からわかる主な共通点・相違点を整理すると、次のようになります。

【共通点】
・「音数」によって、リズムをつくっている。
・人間の五感(視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚)を通した世界が描写されている。

【相違点】
・季語が必要なのは俳句だけ。
・短歌は五・七・五・七・七の31音、俳句と川柳は五・七・五の17音。
・表現する内容が違う。

これらのことを土台として、短歌・俳句の学習を進めましょう。

奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき

百人一首にもでてくるよく知られた歌で、よんだのは猿丸太夫です。
この歌で作者が表現したかったのは何でしょう。

短歌には、「上の句」と「下の句」があります。

上の句…前半の五・七・五(奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の)
下の句…後半の七・七(声聞く時ぞ 秋は悲しき)

百人一首のかるた遊びで、読み札と言われるのが「上の句」で、取り札となるのが「下の句」です。

「上の句」では、五感を通してとらえた情景を、見たまま、聞いたままに、五・七・五の17音で表現しています。
「下の句」は、「上の句」でとらえた情景に対する心(思い)を、七・七の14音で表現します。

このことから「奥山に……」の歌を見てみましょう。

・上の句…最後の五音が「鳴く鹿の」なので、「鳴く鹿」がテーマ。
・下の句…「(鹿の)声が聞こえてくる秋はもの悲しい。」という気持ち。

鹿は一年中鳴くものですが、秋の山で聞こえてくると、とりわけもの悲しく感じるという気持ちをよんだものであるととらえられます。

目に青葉 山ほととぎす 初がつお

江戸の俳人・山口素堂の有名な句です。

俳句は、五感によってとらえた情景をそのまま表現したものです。
短歌の「上の句」が独立したものということもできます。

さて、この句の音数や五感との関係は、次のようになっています。

※スマートフォンの場合は左右にスクロールしてご覧ください。

  目に青葉 山ほととぎす 初がつお
音数 五音 七音 五音
五感 視覚 聴覚 味覚

この俳句には、様々な五感を通して初夏のさわやかな情景が描かれていることがわかります。
ところで、この句には、季節を表す言葉が三つも登場します。
「青葉」「ほととぎす」「初がつお」です。
一句の中に季語が複数あることを「季重なり(きがさなり)」といい、俳句の世界では、やってはいけないこととされています。
では、この「目に青葉……」の句に登場する季節を表す言葉のうち、季語はどれでしょう?

俳句においては、五・七・五の17音のうち「最後の五音=下五(しもご)」が最も重要です。
最後の五音が、俳人が最も言いたいことであり、その句の「テーマ」を表しています。
よって、この句は、初がつおのおいしさや、初がつおを食べるよろこびを表現しようとしたことがわかります。
単に「かつお」ではなく「初がつお」という言葉を使っていることからもわかりますね。

俳句は、下五にテーマがあり、それが俳人が最も表現したいことです。
俳句の学習では、鑑賞する場合でも、創作する場合でも、このことをおさえておくとよいでしょう。

今月は、短歌・俳句について見てきました。

短歌・俳句の学習は、古い日本の言葉の「解読」に終わってしまうこともあるようです。
しかし、ここまで見てきたように、その「仕組み」を知ることで、現代語の詩と同じように自分なりに解釈して読んだり、創作したりすることができます。

それぞれの仕組みを知ることが、作品を深く味わうことにつながるのですね。

次回は「文学(主題/テーマ)」についてご説明する予定です。

また、一緒に学びましょう。

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