説明文の「基本三部構成」と「基本三文型」

執筆者: 白石 範孝

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「説明文」とひと言で表しますが、これは、様々な文章の総称です。
書く目的や、書かれ方によって、

  • ・筆者が事実を述べることに重点を置いているもの…説明的文章
  • ・事実をもとに主張や要旨などを述べるために書いたもの…論説文
  • ・筆者自身の見聞、体験、感想などを自由な形式で書いたもの…随筆

などに分類されます。

では、小学校の国語授業で「説明文」学習するとき、何を読むこと(どんな読みの力をつけること)が目的なのでしょうか。それは

筆者が読者に伝えたいことを正しくとらえる。

です。

ただし、「筆者が読者に伝えたいこと=筆者の主張」とは限りません。
説明文の中には、「筆者の主張」がないものもあります。
また、「筆者の主張」を踏まえ、さらにその先のことを述べているものもあります。
それぞれの説明文で筆者が読者に伝えたいことは何なのかを見極めるためには、文章全体の構成をとらえ、まるごととらえることが大切です。
この点は、前号の「物語の基本三部構成」についての考え方と共通しています。

今回は、説明文をまるごととらえるために必要な「基本三部構成」と、基本三部構成を形作る「説明文を構成する5つの要素」、さらに、「基本三文型」について考えてみます。

まず、私は、「説明文は5つの要素で組み立てられている」と考えています。

説明文を構成する5つの要素

  • ・話題
  • ・課題(問い)
  • ・事例と説明
  • ・まとめ
  • ・主張、要旨

これらのうち、注意が必要なのは「話題」「課題(問い)」と、「まとめ」「主張、要旨」です。

●「話題」と「課題」を区別する。
「話題」と「課題」は「話題・課題」とひとくくりに示されることが多いのですが、区別してとらえる必要があります。

【話題】

  • ・その説明文で述べられている中心的な事柄。

【課題】

  • ・その説明文で筆者が示している問題や、投げかけている事柄。

この2つは似ていますが、どちらが提示されているかによって「読みの視点」(〈はじめ〉の部分で読み取るべきこと)が違います。

「読みの視点」の違い

【話題】が提示されている場合

  • 「この説明文では、何についてかかれているかな?」など。

【課題】が提示されている場合

  • 「この説明文を読んで、考えることは何かな?」など

また、「話題」と「課題(問い)」の両方が提示されていることもあります。
「課題(問い)」が提示されている場合は、問いに対する答えが、「まとめ」や「主張」に示されることになります。

●「まとめ」「主張」「要旨」
この3つも、ひとくくりにされることが多いのですが、しっかりと違いをとらえることが必要です。

【まとめ】

  • 基本三部構成の〈なか〉で述べられている事例や具体例の内容を、具体的にまとめたもの。具体例・事例の終わりにある。

【主張(筆者の主張)】

  • 基本三部構成の〈なか〉で述べられている事例や具体例と【まとめ】を踏まえ、筆者が最も伝えたいこと。まとめの後にあり、具体例・事例で使われていた具体的な言葉で表現される。

【要旨】

  • 「まとめ」「主張」を一般化、抽象化したもので、筆者が最も伝えたいこと。基本三部構成の〈おわり〉の部分の最後に出てくる。

すべての説明文で「まとめ」「主張」「要旨」が述べられているわけではないということに注意してください。
「要旨」が述べられている説明文は高学年にならないと扱われません。
低学年の説明文では、「まとめ」だけで終わっているものや、「まとめ」すらないものもあります。
「まとめ」「主張」「要旨」には、「課題(問い)」に対する答えが示されることがあります。

物語の教材と同様、説明文でも教材分析の基本は「全体を3つの部分に分ける」です。
筆者の意図は、文章全体のつながり、筆者の書きぶりにあらわれます。
文章を前から順に段落ごとに読んでいるのでは見えない文章全体の構成を、文章をまるごととらえることでつかみます。

●説明文の基本三部構成
説明文も物語と同様〈はじめ〉〈なか〉〈おわり〉の3つの部分に分けますが、それぞれの部分に含まれる要素が文章によってちがうという点が、物語とは異なります。

《「まとめ」がない説明文の構成》
「まとめ」がないため、全体が2つの部分で構成されています。
低学年の教材や、新聞記事などで見られます。

〈はじめ〉
  • ・話題・課題の提示
  • ・「問い」の提示
〈なか〉
  • ・事例と説明

《「まとめ」がある説明文の構成》
全学年の教材文で見られます。

〈はじめ〉
  • ・話題・課題の提示
  • ・「問い」の提示
〈なか〉
  • ・事例と説明
〈おわり〉
  • ・まとめ

《「まとめ」だけでなく「主張」もある説明文の構成》
中学年以上の教材文に見られます。

〈はじめ〉
  • ・話題・課題の提示
  • ・「問い」の提示
〈なか〉
  • ・事例と説明
〈おわり〉
  • ・筆者の主張

《「要旨」もある説明文の構成》
高学年の教材に見られます。

〈はじめ〉
  • ・話題・課題の提示
  • ・「問い」の提示
〈なか〉
  • ・事例と説明
  • ・まとめ
  • ・筆者の主張
〈おわり〉
  • ・要旨

なお、いずれの場合でも〈はじめ〉に示される「問い」のほかに、〈なか〉の「事例と説明」の中に「小さな問い」が示される場合があります。

このように、説明文の基本三部構成は、筆者の主張や要旨が入るのかどうか、入るとすればどこに入っているか、などによって分け方が変わってきます。
「3つに分ける」際に、「どの要素があるから、どこで分けるか(区切る根拠)」を意識して分けることで、全体の構成をとらえることができるようになります。

説明文の構成のとらえ方には、ここまで述べた「基本三部構成」のほかに、その文章の「結論」がどこに書かれているかによって分類する「基本三文型」があります。

「基本三部構成」と「基本三文型」。
名前が似ていますので、混乱しないよう注意してください。

「結論」がどこに書かれているかによって分類する「基本三文型」の表

このように、「結論」がどこに書かれているかを見極めることで、筆者がもっとも伝えたかったことが「まとめ」や「主張」なのか、「要旨」なのかを判断する手がかりにすることができます。
また、文章を書くときに、
「事実をわかりやすく伝えたいから頭括型で書こう」
「読者を説得したいから双括型で書こう」
などと考えることもできます。

くり返しになりますが、説明文を読む目的は、「筆者の主張」をとらえることです。
そのために、基本三部構成を明らかにしたり、基本三文型のどれに当たるかを見極めることが役に立つのです。

今月は「説明文の基本三部構成と基本三文型」をとらえる目的と方法についてお話ししました。
次回は、「詩の音数」についてご説明する予定です。

また、一緒に学びましょう。

(編集協力:装文社 金子聡一)